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赤い星のリンカーネーション  作者: 鳥皿鳥助
6章 アップグレード
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第54話 徐々に進む変化






 カウス2は無事に攻略された。

 管理装置を確保してクァドラン粒子生成装置を破壊したのはESFだが、ランキングトップにはヘリオスの名前がある。


「一人でやったのか?」

「まさか、仲間と一緒に上り詰めたみたいね」

「……マジで!?」

「マジで」


 以前より棘が無くなり関わりやすくなった彼女は今、中級プレイヤーと新人プレイヤーを率いるユニオンの盟主をしている。

 どうやらメンディ鉱山での戦いでルナクスに目をつけられ、ファントム・エクスの抱える中堅と新人を移籍させてくれないかと持ちかけられたらしい。


 先の戦闘ではそうした人員の多さを活かし、カウス周辺の雑魚狩りでポイントを伸ばしたようだ。


「にしても流石に上位プレイヤーは手放さないんだな」

「まぁ……あそこはあそこで戦力が必要だし、やる事もあるのよ」

「そういうモンかねぇ」


 ジンとクレナはコックピットのコンソール越しに雑談を繰り広げる。

 だが現在地はルブルムの戦闘地域であり、油断は出来ない。


「アントクイーン接近、注意して下さい」

「あいよ!」


 現在メビウスでは無料でグレード3までの機体とパーツを入手出来るキャンペーンが開催されている。


 条件は各地でカテゴリー3以下のグルムを一定数討伐する事。

 ユニオン単位でのカウントも可能であり、リアルの用事で来られないユウトとメカニックであるタイトの分もジンとクレナが稼いでいた。


「で、ジンは何を手に入れたいの?」

「そうだなぁ~。機体は十分あるし……やっぱ武器とか内装パーツの辺りじゃないか?」






 ――――――――――――――――――――






 戦闘を終えたジンは最終的にレーザーライフルの買い替えを選択した。

 他に必要な物が無く、アルゴンに使用出来る内装パーツが分からなかったからだ。


「なぁ、光学兵装が少ないのは何でだ?」

「ん? どしたよ突然」

「いや……カタログ見てて不思議だったから、詳しそうな奴に聞きたいなって」


 カウス2攻略戦以降、タイトは時折どこかへ出かけて不在になる事が増えている。

 運良く彼を捕まえたジンは答えを求めた。


「まぁまだ実験段階だからな~……」

「ほーう」


 訓練用のレーザーライフルやジンの使用しているレーザーライフルは低威力だからこそ、ある程度の実用化が行われている

 だがそれ以上の高出力となれば話は変わっているらしい。


「と、言うと?」

「簡単に言うとな、収縮率が足りないから弾丸としての形状を維持出来ないんだ」

「なるほどね。……じゃあルナブレードとアルゴンのビームトンファーは何なんだ?」

「ありゃ試験用の先行配備だ」


 ルナブレードは大量のエネルギーを消費する事で形状を維持させているが、後者はそれが出来ていない垂れ流し状態。

 そしてどちらもエネルギー効率が極めて悪く、量産は到底不可能だろう。


「他所からのデータも活用してるし、こっちからもデータを渡してどうにかしようとしてるんだが……中々上手く行かなくてなぁ」

「もしかしてアレか? それが最近メビウスがコソコソ動いてるらしいって噂の……」

「極秘事項だから大声じゃ言えないがな」


 元々隠す気が無いのか何なのか、そこまで徹底した情報統制はされていないらしくこの程度であれば話しても大丈夫のようだ。

 そうした話が一区切り付いたタイミングでネイトは合流した。


「ふぅー! 可変機は良いね、やっぱり!!」

「「お疲れ~」」

「さんきゅ!」


 彼女曰くブレイズ・Rのメンテナンスは終了したらしい。

 可動部が多くメンテナンスに時間と手間は多いが、当人曰く楽しいから大丈夫との事である。


「ただ問題はアルゴンの方なんだよね~……」


 アルゴンは度重なる戦闘とフェーズシフトによって装甲が削れている。

 ある程度は設計時の想定内であり、装甲剤たるナノマシンも若干の余裕を持たせていた。


 だが現在はナノマシンの貯蔵量が既定値を下回ってしまい、最も余剰の無いディフェンドフェーズでは一部装甲が不完全形成となっている。

 その状態ではいつ機体が機能不全を起こしてもおかしくない。


「と、言う事で。ジンさんにはちょっとルイーナに行ってきて欲しいんだ」

「機体が不完全なのにか?」

「ブレイズ使えよ」

「あぁそうか……んじゃしゃーないな、ちょっくら行ってくるか」

「「いってら~」」


 ジンは格納庫へ移動し、整備を終えたばかりのブレイズ・Rに乗り込む。

 だが彼がブレイズ・Rのみで出撃するという事は、相棒であるアルは一人残されるという事。


「一人で大丈夫ですか……?」

「問題無いって。行って帰るだけだからよ」

「ですが……」


 アルは随分と心配そうにしている。

 これまで戦闘中に機体を乗り換えはしたが、メビウスで待機した事は無かったからだ。


 更に言うなら自身の存在意義である戦闘支援が行えない事も不安感を増加させている。


「じゃあアレだ……お前は機体の整備を手伝ってくれ。システム面から関与する必要もあるだろ?」

「そう、ですね。分かりました……いってらっしゃい」

「おう。行ってきます!」


 ブレイズ・Rは飛行形態でブースターユニットを取り付けられ、カタパルトへと移送された。

 最終チェックを終えたジンは両手で操縦桿を握り込む。


「ブレイズ・R、発進!!」


 ブースターに火が入り、ブレイズ・Rは天の地と呼ぶべき人工衛星から離れる。

 行き先はアルゴンと出会った場所、ルイーナだ。


「このルートも懐かしいモンだなぁ……」


 白い大地が見えてきた頃にはブースターユニットをパージ、身軽になったブレイズ・Rは更に加速した。

 以前は歩いていた距離を飛行出来る為に目的地への到着は早い。


「っと、確かこの辺に……」


 洞窟の中は暗い。

 ジンはコックピットを操作して暗視カメラを起動した。


 フェンサーでは屈まなければ進めなかった場所も、小柄なブレイズであれば余裕で通る事が出来る。

 以前は司令室から格納庫へ侵入したジンだが、今回は石碑前から格納庫へと直接侵入。

 ブレイズを駐機させてコックピットから降りたジンは隅へ向かう。


「確かこの辺に……っと、あったあった」


 壁に手を当てて探ると取手がある。

 中にナノマシンの詰められた金属製の箱を引き出すと、ジンはコックピットの後ろに積み込んで固定した。


「ついでに石碑も見とくか」


 彼はついでに様子を見てくれとヘンリー博士に頼まれていた。

 言いつけ通りに写真を撮ったが、表側に違和感は無い。


「裏は~……お、確かに削れてんな」


 ライトが一箇所消えている上に、石碑の裏側が円球状に削れている。

 これが博士の言っていたアネモイの影響なのだろう。


「ここにライズリアライザーの強化方法があった、か……」


 それは今のルブルムに必要で活用可能な情報であったはず。

 だが今のルブルムでは入手不可能な情報であった。






 ――――――――――――――――――――






 ブレイズの出撃を確認し、アルゴンの仮整備を終えたタイトはESFのユニオンルームから退出した。

 理由は“とある機体”の製造に関わっている事である。


 その計画自体は随分前から進んでいたようなのだが、製造はグルムの攻撃やメビウスの打ち上げで遅れていた。

 そうした困難を乗り越え、ようやく試験機の開発にまで辿り着いたのが今である。


「シヴァも大分形になって来ましたねぇ……」

「予想よりかなり早い進行らしい。これも全て君達、ESFのおかげだな」

「まぁアイツらには言ってないんッスけどね」


 タイトはレーザー系兵装の運用データを持って格納庫に入った。

 その後ろには独特の黒い服装をした男、ルナクスが立っている。


 いつも突然現れるルナクスには驚かされる人間も少なくないが、タイトは慣れた様子だ。


「それで工程はどこまで?」

「基本動作のテストは概ね問題無し、ジェネレーター周りとエネルギー経路の改善も終了した」


 ルナクスは直前までシヴァに乗り込み、地上テストに出ていたらしい。

 現在はダミー装甲を全て取り外しての全体チェックが行われている。


 タイトからルナソードのデータを受け取ったルナクスは、シヴァの動作テスト結果を渡した。


「清流刀のデータは役立ったようだな」

「そっすね。ウチから出したデータも役立ってるようで何よりです」


 この機体が完成するのもそう遠くない。

 どのような活躍をするのか、今の彼らには知る由もなかった。






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