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赤い星のリンカーネーション  作者: 鳥皿鳥助
6章 アップグレード
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第53話 大陸制覇に向けて






 リンカー達は迷いの森奥地に存在するカウス3を無事に攻略。

 これまで戦場となっていたプリオーレース大陸の重要拠点はほぼ攻略し、他大陸への進行ルートと安全を確保出来た。


 これによって多くのユニオンでは今後の行動を決める為に話し合いが行われており、ESFの面々もその一つである。


「けどまぁ細々としたグルム生産拠点までは駆逐出来てないから、今後も依頼は絶えないでしょうね」

「なるほどな~……ってかあの大陸は名前付いてたのか」

「マップに書いてあるわよ?」

「あ、本当だ」


 クレナはユニオンルームのモニターを操作し、ジンにルブルムの衛星写真を見せた。


 真っ先に目に入るのは巨大な面積と豊かな気候、そしてCAの製造拠点を各地に持つプリオーレース大陸。

 次に目につくのは広大な砂漠を持つサブルム大陸だろう。


 その次に火山地帯のキニス大陸と真っ白な雪に包まれたニックス大陸と続き、最後は赤い霧に包まれたグルム大陸である。


「グルム大陸は行けないっぽいから別として……もしかしてキニス大陸以外は行ったか?」

「多分そうなるわね」


 サブルム大陸のグロス・プラージュと呼ばれる場所はマーグヌム港近く、以前のワールドミッション後に彼らが遊んだ砂浜である。

 敵味方共に数の少ないニックス大陸はアルゴンを入手する際に立ち寄った場所だ。


「ってか大陸内のカウスほぼ攻略したなら……次からは他大陸のカウス攻略なんじゃないか?」

「いいえ。まだカウス2が残ってるはずだから、そこの攻略が先だと思うわ」


 場所はヴァイト・ヴィーゼの奥地、迷いの森やマーグヌム山と隣接した地点。


 配置された戦力はカテゴリー1~2の動物系機体が多く、クァドラン粒子の生成量も少ない。

 付近で粒子雲を形成している要因の大部分は地形にあると分析されている。


「つまりクソ雑魚拠点って事か?」

「えっと、資料を見る限りだと……ここは低カテゴリーのグルム生産がメインだったみたいですね。場所自体はβテストの時から知られていたそうですが、粒子雲はメビウスの打ち上げ後に滞留し始めたようです」

「ほー、なるほどね」

「まぁ今のメビウスの戦力なら余裕で抑えられるでしょうね」

『油断しなきゃな~』

「お、中継のタイトさんに繋がったか?」

『別に中継してねぇわ!!』


 レジーナが使用するバスターキャノンユニット。そしてジンが新たに入手したブレイズ・Rという機体は非常に多くの部品を使用して完成している。

 ミッションクリアの報酬として大量の資金を手にしたタイトはそれぞれの機体で使用するパーツを注文したのだが、量が多すぎて倉庫がパンク寸前に追い込まれているようだ。


「つまり……後先考えず買い物した結果がそれだと?」

『そうだよ! なんか文句あっかよぉ!!』

「ハハッ! ザマァ!!」

『くっそムカつくなぁぁぁ……ユウトは励ましてくれるよな?』

「えっとー……僕も自業自得だと思うな」

『うぅぅぅぅぅ……可愛い弟が、すっかり薄汚い野郎の毒牙に…………』

「何か語弊があるな、その言い方」

『だってそうだろぉぉ!?!?!?』

「はいはい戯れはその辺にして、今後の方針を決めるわよ」

「「『はーい』」」


 次に発生するであろうワールドミッションの難易度は今までと比べれば低いだろうが、危険性はそれなりにあるはず。

 これまでの経験を踏まえた結果、彼らの行動方針は『準備はしっかりしておきたい』という事で確定した。


 在庫整理に忙しいタイトは通信を切り上げ、残された面々は思い思いの雑談を行う。

 それも終われば残るは解散の準備である。


「あーそうそう」

「何よぉ」

「どうかしましたか?」


 椅子を片付けていたクレナだったが、残りの作業が立ち去るだけという段階で何かを思い出したらしい。

 二人は彼女の声に釣られて行動を止めた。


「最近変な動きをしてるリンカー(プレイヤー)が居るらしいから気を受けて。何も無いとは思うけど、戸締まりは忘れないように。特にジンは気をつけなさいよ?」

「そうなんですね……分かりました、気をつけておきます」

「おいおい俺は名指しかよ」

「だって前科があるじゃない。戸締まり忘れてクラウンハウス乗っ取られたギルマスは誰かしら?」

「……えーっと、その節はさーせんしたー!!」

「分かればよろしい」






 ――――――――――――――――――――






 多くのプレイヤーが予想した通り、カウス3の攻略から日を置かずにカウス2の殲滅戦が始まった。

 ジン達ESFも問題無く準備を終えて当日を迎え、難易度は多少下がりつつも展開は概ね今までと同じように進んでいる。


「四時方向、五機による飛びかかりです」

「りょーかい」


 アルの警告でジンが操縦を行い、細身のアルゴンは腰部スラスターを吹かして急速反転。

 両手に持った黄色い刃を相手へ向けるとすれ違いざまに斬りつけた。


『見事なモンだな~』

「俺の操縦技術が?」

『ちげーよ! ルナブレードの完成度だよ!!』


 ルナブレードは完全なエネルギーブレードとして作られた。

 だがエネルギー効率が悪い上に消耗も極めて激しいという特性を持っており、機体への負荷が高い。


 故に通常の機体では一本持つのが限界だと考えられていた。

 だが三つのジェネレーターを持つアルゴンであれば平然とそれを振り回す事が出来ると分かり、今回のミッションに合わせて急遽追加で一本製造されたのである。


『ちなみに前の戦闘で取得したデータを参考に多少の最適化を施しておいた。まぁ基本機能に変化は無いが、効率は多少良くなってるはずだぜ』

「調整感謝します、バディの命令による刀身の伸縮は良い機能だと思いますよ」

『あーらそうですかー? いやぁ、褒められるとやっぱ嬉しいよなぁ~!』

「はいはい凄い凄い」

『そうだろそうだろ!? 調子は乗れる時に乗っとかないとな! アッハッハッハッハ!!』

「左前方から攻撃です」

「りょーかいりょーかい」


 ジンは浮かれるタイトを無視して戦闘を続ける。

 そんな戦闘がしばらくして一段落し、移動を始めようとしたその時。


 メビウスからの通信が彼らの元へ届いた。


『ESFの諸君聞こえるか? こちらはファントム・エクス盟主のルナクスだ』

「はいはい、こちらESF盟主のジン。ちゃんと聞こえてますよ」

『それは何より。作戦は第一段階が終了し、第二段階へと移行する』


 今回の作戦における第一段階は敵戦力の半数を削ること。

 そして第二段階は敵基地に潜入して内部の敵を可能な限り撃破することである。


 第二段階は特定の一部隊が行うことになっており、その連絡はメビウスから直接入ると告知されていた。


「そんな話が直接来るってことは……」

『相応の戦力で基地に最も近い君達に切り込みを願いたい』

「やっぱりなぁぁぁぁあああ……!!!」

『何だ? 不可能であれば他部隊に任せるが……』

「やりますよ! ええやりますとも!! クレナとユウトもそれで大丈夫だよなぁ!?」

「えぇ、問題ないわ」

「僕も大丈夫ですよ!」

『では君達に切り込みを任せるとしよう。退路は我々が確保しておく』

「サンキュー!」


 ジンは近付いていたグルムを自棄気味に蹴り飛ばし、処理を付近の味方に任せた。

 スラスターも使用する事で大きく飛び上がった彼らは目的地への道中で合流し、森から盆地へと戦場を移す。


「偵察はどうします?」

「そうねぇ……一応全員で遠くから確認、グラファイトが少し近付いてって感じでどうかしら」

「良いんじゃね?」

「僕の方も大丈夫ですよ」

「オッケー、じゃあまたここで」

「「了解!」」


 CAの足であれば盆地を回り切るのに時間はかからない。

 中心部にはプレハブの工場が何箇所か設置されており、アルゴンとレジーナは外周部から見える範囲をスキャンして回った。


 一方のグラファイトは光学迷彩を起動して詳細調査を行っている為、帰還には相応の時間が必要だろう。

 ミドリは帰還を待つ間に各機とデータを共有し、情報の分析を行う事にした。


「敵機の種類や数は概ね判明しました。読み上げましょうか?」

「大体は見りゃ分かるからいらんだろ」

「そうですか。……ではジンならどのように表現するのですか?」

「色んなヤツがいっぱいだ!!」

「バカみたいな報告ですね」

「分かりやすいけどバカっぽいわね」

「なっ……ユウトは俺の味方だよな!?」

「えっと、その……ジンさんらしくて良いと思いますよ!」

「嘘だろ……」


 中々の精神的ダメージでダウンしたジンが回復する頃にはグラファイトが帰還し、分析も終了している。

 分かる範囲にトラップの類は無く、敵戦力も概ね予想通りに雑魚(低カテゴリー)中心であることが判明した。


「なぁなぁ。雑魚が集まってんならアウルムアルクスで基地ごと吹っ飛ばすのが楽だと思うが……どうする?」

「バカ! 施設は制圧するのよっ!!」

「あーそうだったな、わりぃわりぃ」

「私とジンが前衛でユウトが後衛、後は状況に合わせる。オーケー?」

「「オーケー!!」」

「よし、じゃあ行くわよ!!!」


 アルゴンとレジーナは潜んでいた森から飛び出し、基地の警報装置が鳴り響く。

 グラファイトは引き続き森に潜み支援攻撃の準備を行う。


「こうやって突撃してるとさ、偵察の意味を問いたくなるよな」

「慎重に越したことは無いで……しょっ!」

「まぁな!」


 アルゴンは速度とパワーを生かして次々とグルムを切り裂き、時には絡め取るようにして投げ飛ばす。

 その先に待ち構えるレジーナの切り払いは実に滑らかである。


「ジン!」

「りょーかい、一直線に並べるぞ!!」

「狙撃は任せて下さい!!!」


 だがもう一機を交えた連携も侮れない。

 グラファイトはレジーナのセルペンテスに捕まったグルムとアルゴンに蹴り上げられたグルムを片っ端から狙撃した。


「まとめて吹っ飛ばせたら良いのにな~……」

「だからアウルムアルクスはダメよ」

「わーってるって。でもお前もBCユニットあるじゃん?」

「確かにあるけど……今回はどう転んでも使えないわよ」


 今回の作戦においてBCユニットは過剰火力となる上にコスパが悪い。

 拡張装備を封じられ、他に追加装備を持たないレジーナは相変わらず蛇腹剣(セルペンテス)一本でどうにかしている。


「……クレナも大概脳筋だよな」

「何か言った!?」

「いえ何も!!!」


 アルゴンは慌ててレジーナから距離を取る。

 だが視点を変えたジンはある事に気が付いた。


「なぁアル、この位置ならギリギリ安全にグルムまとめて吹き飛ばせるんじゃね?」

「確かに。シミュレートしてみましょう」


 現在は交差点の中央でレジーナが暴れているため、敵が四方の道路を通って集まっている。

 そして死角から回り込む個体を撃破するのはグラファイトによる狙撃だ。


「施設への被害を極力抑えて行けますね。武装の転送を行いますか?」

「頼んだ」

「了解。レジーナとグラファイトは援護をお願いします」

「「了解!」」


 会話の終了と同時にアルゴンが飛び上がり、メビウスから降り注いだ赤い光に包まれる。

 グルムはそれを妨害する事なくレジーナに集まり、空中でチャージを終えたアルゴンは金色の矢を引き狙いを定めた。


「チャージ完了、いつでの撃てます」

「クレナ!!」

「分かってるわよ!!!」


 レジーナはグルムを踏み台にして跳躍する。

 その下を金色の粒子が駆け巡り、山肌に激突することでようやく停止した。


「敵部隊撃破率30%を突破」

「おー、かなり良い結果なんじゃねぇか?」

「ですね! このまま押し切っちゃいますか?」

「第二陣もそろそろ来るでしょうし……私達は施設の掌握に向かいましょう」

「オーケー」

「了解です!」






 ――――――――――――――――――――






 ESFの各機は無事にクァドラン粒子生成装置を破壊し、施設のコントロール端末も掌握。

 後発隊が一帯のグルムもまとめて掃討する事で戦闘は終結した。


「流石だな」


 戦果は上々、それでいて機体の損傷は軽微。

 マーグヌム・カストラで無茶した時にガツンと言ったのが効いたようだ。


「アルゴンの整備はネイトに任せる、出来ればブレイズ・Rも」

「オッケー。設計図はちゃんと見ておいたよ!」


 今回の戦闘でブレイズ・Rは使用しなかったが、以前の無茶が響いたままの状態となっている。

 何とか動く程度には調整したが、しばらく使わないのであれば今の内に万全にしたい。


 だが製作者たるヘンリー博士は用事があるらしく頼れない。

 そこでネイトの力を借りる事にしたタイトだが、自信満々の様子は少し不安を覚える。


「まぁ……やる気が無いよりは良いか


 残されたレジーナとグラファイトはタイトが整備を行う。

 早速彼は両機の装甲を外し、フレームや関節部の消耗具合を確認した。


「レジーナは関節部の消耗と装甲に多少のダメージって所か。グラファイトは……やっぱ大分ガタが来てんなぁ~」


 オクトライフルも度重なる激戦で銃身が歪んでおり、ソフトウェアによる補正で強引に矯正しているのが現状だ。


 修繕でどうにもならないのであれば新しい機体を作りたい。

 だが資金はレジーナや周辺装備の開発に注ぎ込んだ為に確保出来ていない。

 そうして悩んでいるタイトの元へ、メビウスからとある計画への協力打診メッセージが届けられた。


「……なるほどな。もう少しデータが集まれば、光学兵装も本格的なロールアウトが出来そうだ」


 メビウスがその計画で作ろうとしている機体の名前はシヴァ。

 後の世界を一変させる機体である。






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