第52話 最強無敵のブレイバー
ブレイズ・Rが軽い事もあり、サーフボードにされたレオの損傷は軽微なモノだ。
互いに素早く距離を取り、戦闘態勢へと以降した。
「で……コイツは俺が倒して良いのか?」
「勿論。出来るなら、だけど」
「上等!!」
ジンは意気揚々とフットペダルを踏み込み、レオもそれに反応して動く。
状態としてはほぼ真正面からの殴り合いとなるが、たてがみの炎がある分レオが有利……だと思われていた。
『残念だけどその機体、装甲部分の炎に対する耐性が異常なまでに高いんだよねぇ~』
ヘンリー博士の工房にあるバーナーでは軽い焦げ目を作る事しか出来なかった為に解体を断念し、再活用に機体の活用方針を転換したという事情もある。
更に以前起動された時のデータにより、パイロットの精神状態にジェネレーター出力が左右される事が分かっていた。
『そんなジェネレーターも不思議だけど、一番は追加装甲にまでその性質が広がった事だ。原理が分かってるけど全然仕組みが分からないって不気味だよね~』
「まぁ不気味でも何でも、俺達は使うしか無いんだがな」
真正面からの殴り合いはほぼ互角となっているが、四肢を地に付けられるレオの方が機動性においてやや有利である。
ジンは翻弄されるかのようにしてレオの攻撃を回避し続けた。
『ジン君、武器を使うと良い。サブモニターに表示されているだろう?』
「あーこの剣っぽいやつか?」
ジンはレオの攻撃を逸らしつつ、サブモニターを見る。
そこには二本の剣が表示されているが、それは機体のどこにもそれはマウントされていない物である。
「無いモン使ってもなあ……」
『まぁまぁ良いから、使ってみなって』
「そこまで言うなら……」
ジンはレオを蹴飛ばして時間を作り出す。
そしてサブモニターを操作した。
「何もなんないじゃ……んッ!?」
「ジンさん! 機体が燃えてますよ!!」
『問題無い。そのまま腕を前に突き出し、抜刀するんだ!!』
「なるほどね!!」
突き出された両手は大きな炎となり、ブレイズ・Rの機影を掻き消す。
そこから勢い良く引き抜かれた手には、波打つ刃を持った炎のような双剣が収まっていた。
『名前はブレイズブレード。君とブレイズ・Rだけの剣さ』
「ほぉ、コイツは良いな」
「何それ……まるで魔法じゃない」
『それは言い得て妙だね』
レオは“炎なら自分も持っている”……と言わんばかりにたてがみを大きく揺らし、大きく跳躍した。
ブレイズ・Rは腰を落して双剣を構える。
「行くぜ!!」
レオがそうしたように、ブレイズ・Rも足をバネのように動かす。
それと同地にブースターを起動すれば、、かなりの距離を一気に詰める事が出来る。
勢いは殺されぬままに互いの刃へと流れ込み、大きな火花を作り出す。
それも一度だけならず、複数回だ。
「凄い……」
「やっぱジンには双剣ね」
レオの刃はジンに届かないが、ジンの刃もまたレオに届かない。
武器を失えば弱体化する事を知っているレオは、その強靭な顎でブレイズブレードを噛み捕らえた。
「何だこのッ! 離せ!!」
『ジン君、ブレイズブレードを離してみると良い』
「はぁ!? 博士、アンタそれマジで言ってんのかよ」
『大丈夫だ、僕を信じると良い』
「まぁ他に手も無いし……」
ジンは言われた通りにブレイズブレードを手放す。
すると実体を持っていたはずの存在は蜃気楼のように消え去り、レオの口元に熱だけを残した。
「なるほど……そういう事か!」
状況を理解したジンは再びサブモニターを操作し、今度は腰から抜刀するようにしてブレイズブレードを呼び出す。
レオは状況を理解出来ず、何も無くなった口を開閉させ困惑しているようだ。
「って事はもしかして……」
ジンは再びサブモニターに触れる。
剣の中心部をなぞるようにして指を動かすと、ブレイズブレードはその通りに形を変えた。
「マジかよ! 最高じゃん!!」
『ちょっと前見て前!!!』
「分かってるって」
既にレオが目前に迫りつつある。
攻撃の癖が読まれつつある事と、想像以上に高い俊敏性は大きな脅威である。
だがそれならば、武器の長さを調整し距離を取れば良い。
「俺の機体はそれが出来るらしいからなァ!!」
二振りのブレイズブレードはやや長くなったが、重量とバランスは変わっていない。
レオは変化した武器と戦い方に対応出来ず、被弾は次第に数を増して行った。
「止めだッ!!」
ジンはレオの顔を横から回し蹴りして大きく吹き飛ばす。
そして素早く後を追い、土煙も構わず剣を振り下ろした。
だがブレイズブレードはレオに当たる事は無く宙を斬る。
レオはこれまでのように飛びかからず、四肢を地に付け口を大きく開いていたからだ。
「大技……って事か」
瀕死となった獅子の口腔内に光が集る。
それはまるで最期の輝きのように刺激的で、美しい光景だ。
「……レグルスバーストが来る! 全機、この場から離れて!!」
『『『りょ、了解!!』』』
「ジンも早く!!!」
「悪いがそうも行かねぇんだよ」
ジンの視線はサブモニターに向けられている。
そこには武装一覧が乗せられているのだが、ブレイズブレード以外にも一つの武装が表示されていた。
「ずっとチャージしてたって事は大技なんだろう! 行くぞ、ブレイズ・Rッ!!」
ボタンを押すとコマンドが表示され、ジンはそれに従って操作を行う。
最後に行うのはフットペダルの操作だ。
「全部……吹き飛べぇぇぇえええ!!!!!!!」
レオが放つ最後の咆哮。
それと同地にブレイズ・Rも炎を纏い、辺り一面には大きく美しい爆炎の花が渦巻いた。
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エクリプスの突入部隊がカウスに侵入し制圧、ワールドミッションは無事に終わりを迎えた。
各地では機体の収容とグルムの残骸回収が行われているのだが、ESFは全機がマーグヌム・カストラへと集められた。
『ブラボー! 流石だよジン君!!』
「途中で止めらんないモンだから、流石にヒヤヒヤしたけどな」
ジンは地形を大きく変える爆炎の中から生き残った。
勿論技術による部分も大きいだろうが、ブレイズ・Rのスペックによる部分も少なくない。
実は地形を変えた爆炎の大部分は、ブレイズ・Rが作り出した物なのだから。
「で、何でホロスコープが出てきたんだ? この辺りにマザーベースは無かったはずだろ」
「どうやらルフス・エフェクターの差し金みたいよ」
カウスの最深部に突入したルナクス達がルフス・エフェクターの声を聞いた事が根拠となっている。
ノーブル・ランクスが多かった為に、エクリプスだけで抑え込めなかった事を悔やんでいるとかいないとか。
「これは僕からのプレゼント……か。悪趣味だな」
「そうね」
「で、他には何かあったのか?」
「今回はクァドラン粒子生成装置が見つかったらしいわ」
これにより、マーグヌム・カストラ周辺の粒子雲はただ滞留していた結果だったと確定した。
マーグヌム港も同様であった事等から、近々カウスの条件が改定されるだろう。
「なるほど。だがそうなるならノーブル・ランクスの方はどうなるんだ? カストラにもカウス3にも、奴らは居ただろう」
マーグヌム・カストラにクァドラン粒子生成装置は無いが、かつてはヴァイカウントが居た。
その事は記録に残っている。
「別の地点から流れてきたんじゃって予想もありましたよね」
「そうね。でもそれは無いわ」
カストラに残された記録から、ヴァイカウントは試験運用に出撃していた事が判明している。
更に言えば、それ以前にもノーブル・ランクスが居た記録は残っているのだ。
そしてこれまで攻略したカウスと他の拠点には大きな違いがあった。
「機体開発の場であるか、防衛すべき拠点であるかという所よ」
「なるほど……言われてみれば確かに」
「謎は深まるばかり、だな」




