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赤い星のリンカーネーション  作者: 鳥皿鳥助
5章 巡る戦場
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第50話 タイトの秘策






 ある意味で因縁の地と言える場所、マーグヌム・カストラ。

 その入口付近には、未だ爆発の形跡が残されていた。


 ジン達はリンカーの拠点となったそこへ撤退し、それぞれの機体を格納庫へと運び込んだ。


「こりゃまた随分と派手にやられたな~」

「だね。足の方は比較的マシなレベルだと思うけど……」


 左脚は関節部分のパーツが損傷した為に動きが悪くなっているだけであり、その部分を交換すれば問題無いだろう。

 だが問題は腰部ブースターにあった。


「ありゃあヘンリー博士の協力が必要だと思うぜ?」

「マジかぁ……」

「コアパーツの損傷が酷すぎてほぼ新造状態になるから、残念だけどタイトさんの言う通りだね」


 二人の整備士とパイロットがアルゴンを囲み唸るも、良い案は中々出ないモノである。


「ブースターとフェーズシフトを使わないで良いなら何とかなると思うけど……」

「そうも行かないんだよな」

「だよなぁ。お前ってば、基本速度と力に物を言わせた雑な動きだもんなぁ……」

「あぁぁあああ~~~!! 絶対に時間が足りないし、ヘンリー博士が居ないとどうにも出来ない~~~~~!!!」


 ジンの実質的な無茶振りに、ネイトとタイトは頭を抱えるしか無い。

 彼が使える他の機体は用意しておらず、アルゴンも満足行くレベルまで修理した頃にはワールドミッションどころか後始末までもが終わっているだろう。


 だがヘンリー博士という言葉で一つの妙案が舞い降りた。


「ヘンリー博士、ヘンリー博士……あ!」

「「どうした!?」」

「ちょっと待ってろ」


 ジンはコンソールを操作し、メビウスへと通信を繋ぐ。

 通信の先で待つのはヘンリー博士本人である。


『おージン君、丁度良い所で連絡してくれたね。君の方は忙しいかもしれないけど、実は僕の方の作業は一段落したから――』

「――例の機体、仕上がってるか?」


 音声はスピーカーに設定されており、その場の全員が両者の声を聞く事が出来る状態だ。


『あぁ、全くせっかちだなぁ……君達は』

「どっちなんだ。動かせるのか? 動かせないのか?」

『そうだねぇ……』


 ネイトとタイトは固唾を呑んで返答を待った。






 ――――――――――――――――――――






 一先ずジンはマーグヌム・カストラで待機し、クレナとユウトだけが補給と応急修理を受けて再出撃する事となった。

 行き先はファントム・エクスの討ち漏らしたバロンの元である。


 苦戦はしていないようだが、付近のグルムが寄って来ている事もあり善戦も出来ていないという戦況が伝えられていた。


『何だあのデッカイの……』

『敵、じゃないよな?』


 リンカーが送る視線の先には、巨大な鉄の箱が浮かんでいた。

 レジーナとグラファイトはその上に立っている。


「味方機に通達、これより砲撃を開始する。死にたく無かったら、アタシの指示に従いなさい!!」

『『りょっ、了解!!!』』


 それはタイトの準備していたとっておき、秘密兵器というヤツであった。


 クレナの指示に従う彼らが事前にその威力を知る事は出来ないが、ある程度は予測する事が出来る。

 明らかに異常な大きさと空気を漂わせるそれは、一射せずとも問答無用で味方を動かす力を秘めていた。


「じゃ、私達もやるわよ」

「りょーかい」

「了解です」


 ユウトの乗るグラファイトは光学迷彩を起動して降下、森の中に姿を消した。


「さて……バスターキャノンユニットの力、見させて貰いましょうか」


 一方のクレナはサブモニターを操作し、バスターキャノンユニットから各パーツを展開させる。

 機体とのコネクターもその一部、箱の前面中心部に存在した。


「……これいるの?」

「ロマンだよロマン」


 レジーナは両腕をコンテナに挿入し、内部に仕込まれた棒を掴む。

 すると腕全体が固定され、背部では無数のケーブルが接続された。


「BCユニット起動を確認。モードはどうする?」

「シングルストライクで良いわよ」

「りょーかい」


 シングルストライクモードは移動特化とも言える状態。

 バスターキャノンユニットとしては多少攻撃性能が落ちるものの、それでも十分な攻撃力は期待できるだろう。


「ガンタレットは自動稼働だし、防御フィールド生成装置も僕が管理するし大口径ビーム砲も使えないとして……クレナには移動とアームの管理を任せるよ」

「オッケー」


 既に味方の配置変更は終了し、レジーナを中心とした陣形になっている。

 これでようやくクレナは戦闘を始められる状態となった。


『バロン一機抜けました! すみません!!』

「大丈夫よ」


 剣を持ち飛びかかるバロンに対し、クレナは巨大なアームを操作し掴んだ。

 そしてそのまま内蔵されたビーム砲を発射し、胴体部分に大きな風穴を作り出す。


『すっ、すげぇ……』

『関心してる場合じゃないぞ! 俺達でアレの前に敵を運ぶんだ!!』

『そうだな!!』

「飲み込みが早くて助かるわ」


 そこからは半ば作業状態だ。

 味方機が次々とグルムを送り、レジーナが砕く。


 順調にスクラップの山は肥大化していくが、クレナは一抹の不安を抱えていた。


「これだけやってもエクリプスと合流出来ないってのは気がかりね……」

「まぁこの森も広いし敵も多いし、仕方ないんじゃないかな」

「だと良いんだけど」


 しばらくすると敵の侵攻が落ち着き、彼らの間には武器を下ろす程の余裕が生まれた。


「これで終わりかな?」


 残弾にはまだ余裕はある。

 もう一度同程度の量が来たとしても、問題無く対応出来るだろう。


『ホロスコープシリーズ出現、遭遇に警戒して下さい』

「何ですって……!?」

「データ来たよ」


 どうやらエクリプスがカウスに侵入する直前で獅子型のグルム、レオと遭遇したらしい。

 ある程度は応戦するも撃破は叶わず、逃走経路から遭遇するリンカーを絞り千景が警報を出したようだ。


『……おい見ろ! 森が燃えてるぞ!!』

『火事か?』

『んな訳ねぇだろこのバカ!!』

「どうやら私達でどうにかしなきゃ駄目みたいね」

「だね」


 レオは近接戦闘能力が高く、たてがみが炎で構成されている事から接近戦は極めて不利であると結論付けられている。


 クレナは素早く味方に指示を出し、遠距離戦中心の陣形を組んだ。

 だがレオの機敏性は想定以上の物である。


「クッ……!」


 そして判断力にも優れた

 レオは素早いステップでレジーナを避け、後方に待機する遠距離攻撃機を撃破して回る。


『うっ、うわぁぁぁあ!!!』

『チクショウ、名前も知らねぇやつの仇だ!!』

『せめて知ってるやつにしろよ!!!』

『生きてちゃあ仇討ちじゃねぇだろうが!!!!!』

「各機散開!! 各々の判断で動きなさい!!!」

『『『了解ィ!!!』』』


 こうなればもはや陣形に意味は無い。

 各々は各々が得意な方法で戦闘を行うが、それでもレオを殺し切る事は出来なかった。


「ミドリ、ギガバスターモードを使うわよ」

「お、行っちゃう? 良いよ良いよ、各所調整は任せて」

「よろしく」


 細々した攻撃で倒す事が出来ないなら、大技で一気に仕留めるしか無い。

 それまで空を飛んでいたBCユニットは着地し変形した。


 明らかに大きな隙きとなっている行為だが、レオは攻撃以外に興味を示さない性質がある。

 故に目の前のリンカーに夢中であった。


「出力安定、チャージ完了まで五秒……」

「上出来」


 照準をレオに合わせる。

 素早く動く相手ではあるが、ある程度の傾向や取りたがる場所はあるモノだ。


「……チャージ完了!」

「全機、横に避けろ!!!」


 その声と同時に、各機には射線と回避方向が一斉に表示された。


『『『あっ、アイサー!!!!』』』


 それに従うリンカー達の動きもまた一斉であるが、レオはすぐに動く事は無い。


「発射ッ!!」


 バスターキャノンユニットからレオへ向けられた砲身が一斉に光を灯す。

 それらは全てが攻撃であり、これで勝負は終わるはずだった。


『あっちゃー、マジですかぁ』

「避けられた!?」


 レオは敵の動きに鈍感だが、攻撃に対しては敏感である。


 砲身の光を確認した瞬間、周囲のリンカーが回避した距離から射線と幅を予測し跳躍した。

 赤熱化する地面に着地したレオは姿勢を低くし、レジーナを捉える。


「クッ……手痛い反撃が来るわよ! シングルストライクに移行しなさい!!」

「了解!!」


 BCユニットは素早く変形し、空中へと浮上する。

 だがその頃にはレオの牙が目前に迫る頃だ。


「――そこのデカブツ! 轢かれたくなきゃ今すぐ左に動け!!」

「えっ!?」


 クレナは聞き覚えのある声に従い、機体を動かす。


「そっちのお前は敵だな? 避けんなよ!!」


 後ろから飛び出した機体の中心部は青く、四肢の終端部は黒くなっている。

 そして各所に炎のエンブレムが施されているのだが、クレナはその機体を知らない。


 未確認機はレオの顔面を掴み、サーフボード代わりとする事でようやく減速を果たした。


「ふぅ……ようやく止まったぜ」

「アンタ、相変わらず無茶苦茶だけど良くやるわね……」

「最強無敵のブレイバー! なんてな」






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