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赤い星のリンカーネーション  作者: 鳥皿鳥助
5章 巡る戦場
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第49話 思わぬ出来事






 三度目となるワールドミッション。


 それは二週間ほど前から告知され、遂に当日の朝が訪れた。

 今回もRBS経由で告知をするようだが、前回までとは異なり最初からシルフ総司令官の姿が無い。


 代わりにリーゼン秘書官と一人の女性が映っている。

 リーゼン秘書官はいつも通りの笑顔だが、共に映る女性は何やら油断した様子だ。


『……え、もう始まってるの!?』


 始まって早々に画面が切り替わり、トラブルの対応中という旨のテロップが表示された。


「大丈夫なのかね、これ」

「まぁ~……あの人はかなり抜けてるから、こうなるような気はしてたわ」


 しばらくすると再び画面が切り替わる。

 今度は両者準備万端のようだ。


『リンカーの皆様、初めまして。私はマーレン・ガイスラーと言う者です。普段はHITSの社長と、リンカーの総括管理を任されています』

『今回はシルフ総司令官が別件でお留守な為、彼女と私……リーゼンの二人でご案内をさせて頂きます』


 今回のワールドミッションでは、迷いの森奥地に存在するカウス3が目標となる。


 マーグヌム・カストラ周辺のクァドラン粒子濃度がある程度低下した事により、大軍勢での侵攻が可能となったそうだ。

 ただし樹木の成長速度や長距離通信のジャミングは相変わらずであり、油断は出来ない。


『ですが我々の使える札も以前とは異なります。マーグヌム・カストラという一大拠点や、各種列車を利用し戦況を有利に進めて下さいね』






 ――――――――――――――――――――






 作戦決行時間は半日後程度の時間がある。

 それまでに各リンカーは戦闘準備を行う事となっており、格納庫でアルゴンを調整するジンとタイトもそうした人々の一人であった。


「……そういえばさ、カストラ攻略の時は何でルナブレード使わんかったんだ?」

「まぁ忘れてたってのもあるが、狭い所


振り回す武器は使いにくいからな」


 事実、メンディ鉱山での戦闘でも地面や転がっていた岩を何度か削っている。

 開けた場所であれば問題は無いだろうが、閉所では致命的な結果に繋がりかねない事案だ。


「アレ持ってたら絶対壁こすってたぜ? と言うか刺さって抜けなくなってたかも」

「まぁ確かに」


 更に言えば、前回は少数戦力による拠点攻撃戦。

 そうした場合には速さ(スピード)よりも攻撃(パワー)防御(ディフェンス)が重要である……と、ジンは考えている。


 一方で今回は多数戦力による拠点攻撃であり、乱戦となる事は回避出来ないだろう。

 そうなれば、速度がポイント獲得における重要な要素となる。


 つまりは相手と地形を考慮した戦闘の状況が装備を決める……のだが、彼の中にはそれ以上に重要となる項目がある。


「ぶっちゃけるとさ……」

「うん?」

「気分じゃなかったから使わなかったんだよな」

「マジかよ……」






 ――――――――――――――――――――






 マーグヌム・カストラの時はエアストに戦力を集めて出撃していた。

 少数戦力であった為に、万全の状態かつ確実に同時刻に攻撃を開始する必要があったからだ。


 だが今回においては不必要な考慮であり、ワールドミッションの時間内であればリンカーはいつでもどこからでも降下出来る。


「って事で、俺達は直上から降下しようと思う」

「まぁ一番手っ取り早い手段ね」


 実際にこの手を選ぶユニオンは少なくない。

 一方で支援組等は少し距離を取り、のんびりと降下しているらしい。


「ユウトもそれで大丈夫か?」

「はい、大丈夫です」

「っし。じゃあ行くかぁ!!」

「そうね」

「はい!!」


 ユニオンルームから格納庫へ向かい、各自の機体へ乗り込む。

 既に起動は済ませており、コックピットには光が灯っている。


「準備出来ましたか?」

「おう」


 ジンはサイドパネルを操作してワールドミッションへの参加を選び、出撃地点をカウス3真上に設定する。

 だが直上とは言っても、流石に文字通りでド真ん中に行く訳では無い。


 実際には多少の誤差や操作の余地がある。


「念の為に作戦を……聞いておこうと思ったのですが、その様子だといつも通りみたいですね」

「勿論、ちょっと横に降りて真正面から攻略だ!!」






 ――――――――――――――――――――






 赤い光がに包み込まれた無数の機体が大気圏へと降下する。

 地上から見上げるそれは、大規模な流星群のように見えた事だろう。


「ブースターユニット、パージします」


 リンカー達は僅かな減速と共に雲を突き抜け、森へと降り立った。

 着地ミスにより土埃を舞い上げる者も少ないが、大多数は無傷である。


「ふぅ……ここも久しぶりだな」


 以前と同じく無数の木々が生い茂る一方、粒子雲の濃度は以前より低下している。

 視界は良好と言い切れずとも悪くは無い。


「来たぞ、敵機だ!!」


 全ての戦場における尖兵はクルス。

 基本的なルールは以前と変わっていない為に、得点としての旨味は低い相手である。


 だが先へ進む為には、そうした小物も撃破する必要があった。


「何か今回数が多くねぇか!?」

「確かに!!」


 既に時間辺りのクルス討伐数は以前よりも高くなっている。

 一方で種類は少なく、粘りさえすれば余裕で勝利出来るとリンカー達は思っていた。


 ファントム・エクスからの通信が来るまでは。


『全機に通達、ノーブル・ランクス多数出現!! デュークはコチラで押さえいるが、エアルとバロンが数機各地へ飛んだ。注意してくれ!!!』

「情報確認、我々の側にはエアルが来ます」

「マジかよ!!」

「厄介ね……」


 バロンはこれまでにも数度の討伐報告があり、強さがある程度知れている。

 一方のエアルとは初めて戦うジン達だが、その詳細なデータはマーグヌム・カストラで入手していた。


「どうしますか?」

「あぁ~、そうだなぁ……」


 エアルは各地を歩き回り、手に持つスナイパーライフルで敵を遊撃するのが得意なグルム。

 数機のカウンテスを手下に率いている事が多く、バロンとは比較にならない手強さを誇る。


 正直な事を言うなら、ジンとて少人数で戦いたい相手ではない。


「近くに動ける味方は居ないか?」

「全機クルスの対処に追われています」

「そうか~。ならしゃーない、ポイントゲットのチャンスと行きますか~!」

「了解です」

「分かったわ」


 陣形はいつも通り、ジンとクレナが前に立ちユウトが援護する。


 唯一の違いはユウトがカウンタースナイプを狙う事であり、その為に前衛の二人がわざとカウンテスの動きに釣られユウト自身も最小限の援護しかしない事だ。


「見えました、カウンテスです!」

「二機か……」


 数としては少ない方である。

 だが偶然にも、グルムはジン達ESFと同じ編成になった。


「装備まで同じとは奇遇だな」


 カウンテスは剣を両手に持つが、ジンとクレナも剣をメインウェポンとしている。

 互いにジリジリと距離を詰め、機を(うかが)う。


「来るかッ!」


 最初に痺れを切らしたのはカウンテスだった。

 一機はアルゴンへ斬りかかり、もう一機はレジーナへと斬りかかる。


「動きは早いが、まだまだ単調だな」

「そうね。アンタみたいにフェイントと搦め手が無いからかなり楽だわ」


 グルムは基本的にその時の最善策を選び行動する。

 だが戦闘においては必ずしもそれが正しいとは限らず、愚策が思わぬ形で有用に働く事もあるモノだ。


「そろそろ狙撃が来ます。注意して下さい」

「「「了解!!」」」


 出会い頭を逃した場合、次の狙撃タイミングはある程度相手の行動を見てからになる。

 例えばレジーナがカウンテスを斬る為、セルペンテスを振り上げた時のように。


「ッ……ジン!」

「オッケー、借りるぜ!!」


 アルゴンは目の前のカウンテスを蹴り飛ばし、弾かれたセルペンテスを掴み取り振り回す。

 そして素早くレジーナとカウンテスの間に張り込み、舞うように片腕を切り飛ばした。


「伸びろッ! 伸びねぇ!!」

「アンタには使えないわよ。返しなさい」


 クレナはアルゴンが振り回すセルペンテスを奪うかのように取り返し、再びカウンテスへと向き直る。

 状況は振り出しに戻ったが、結果としてはジンとクレナが一歩リードした形だ。


「っちぇ、ちょっと使ってみたかったんだが……」

「それよりユウト、そっちはどんな感じ?」

「もう一発来ればある程度射点を絞り込めるかと」

「了解」

「オッケー。んじゃそれまで耐えるとしますか!!」


 今度はアルゴンが前に出る。

 狙いは隻腕のカウンテスだ。


「せいやっ!」


 機動力ではアルゴンが勝っている。

 相手を撹乱するように動けば自ずと勝利は勝ち取れるだろうが、カウンテスとエアルの連携も中々の物であった。


「コイツらにも庇い合うって文化はあったのね」

「まぁ~……格下を守る文化は無いみたいだがな」


 カウンテスは時折クルスを掴んで盾にしたり、投げつけたりしている。

 それらを斬り裂き、ジンとクレナは更にカウンテスへ近付く。


 だがジンが攻撃しようとした瞬間、今度はアルゴンの左脚を銃弾が掠める。


「クッ、避けきれんか……ユウト!」

「もう見つけてます!!」


 エアル狙撃手の居場所を見つけたグラファイトが素早く狙撃するも、右足を破壊するだけに留まり撃破には至らない。


「ならもう一度……無理かッ!」


 だがエアルとてただやられるだけでは無い。

 カウンターのカウンターを食らった事により、グラファイトは光学迷彩を起動し移動を開始する。


「すみません、撃破出来ませんでした……」

「構わんさ。けど次は頼むぜ?」

「はい!!」


 エアルの居場所は判明し、片足を破壊した事により長距離移動は不可能となった。

 であれば、ジンとクレナはカウンテスを盾とした立ち回りが取れる。


「ハッハァー! どうだ撃てまい!!」

「左脚の被弾状況は軽微ですが運動性は低下しています、注意して下さい」

「ブースター動くなら何とかなるだろ」


 ジンは未だフェーズを変更せず、防御力の低い状態で居る。

 狙撃を回避するにはその方が都合が良いからだ。


 だが今回はその判断が仇となる。


「エアルの狙撃が来ます、注意して下さい!!」

「この位置でだと!? 射線はどこだってんだ――」


 グルムがお互いを庇い合う事はあるが、それは敵を撃破する為に必要な行動だからだ。

 敵を撃破する為に必要であれば、自身か味方を犠牲とする事に躊躇が無いのもグルムである。


「――あいつマジか、味方ごと撃ち抜きやがったぞ!!」


 ジンは即座にビームシールドを展開するも、それは目前のカウンテスによって排除される。

 銃弾はそのままアルゴンの左側面に命中した。


「腰部左ブースター損傷、稼働停止」

「マジかよ……ッ!!」


 アルゴンに止めを刺そうと剣を振り上げたカウンテスだったが、その胴体に金属の鞭がガッチリと巻き付き捕らわれる。

 レジーナは軽いスナップの後に空中へと放り投げ、それをグラファイトが狙撃し撃破が完了した。


「アンタがシールド使う程に追い詰められるなんて珍しいじゃない」

「悪いかよ」

「いいえ? 人間だったなーって思うだけよ」

「周囲の敵反応、消失しました」


 エアルはアルゴンを狙撃した直後にグラファイトが撃破、隻腕のカウンテスもレジーナが撃破し残されたカウンテスもたった今撃破された。

 一安心したジンは操縦桿から手を離し、髪を掻き上げる。


「ふぅ~……」

「で、どうすんの?」

「出来ればポイントを稼いどきたい所だが、流石に補給に戻った方が良さそうだな」

「オッケー。ユウトは援護をお願い、私がアルゴンを担ぐわ」

「了解です」

「すまんな……」






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