第48話 新たな機体
ヘンリー博士は工房を離れ、隣の部屋へ移動した。
ジンの様子はカメラ越しで確認し、声はスピーカー越しに伝えるそうだ。
『それじゃあまずは~……作業用アームを君の真上に持っていくから、そこに掴まってくれ』
「おいおい、大丈夫なのかよ……」
『大丈夫大丈夫! 落ちてもちょっと音がするだけだし、何より機体を傷付けたくないから絶対落とさないよ』
「ミンチの出来上がる音がしなきゃ良いが……」
『ハハッ! そうだね!!』
諦めてアームに掴まるジンの気分は、UFOキャッチャーの景品にでもなったようなモノである。
『お次は~……簡易的な操作パネルを繋げてたはずだから、アレを使ってジェネレーターを起動してみてくれ』
「オッケー」
ブレイズの胸部パーツ上部に到達したジンを慎重に下ろし、空洞化したコックピット部分へ投下する。
内部には無数のケーブルが張り巡らされており、ヘンリー博士の言う操作パネルに繋がっている。
タブレットのようなそれを拾い、ジンは表示されていたエントリーボタンを押した。
『まぁ何回かやって動かなかったから、ジェネレーターも壊れてるかもしれないけど……』
「動いてるぞ」
『……何だって?』
ヘンリー博士が慌ててデータを確認すると、そこには順調に上がる出力パラメーターが並んでいた。
『クククッ……アハハハハッ!! まーさかまさか、本当に上手く行くとはねぇ!!!』
「動かしちゃ駄目だったのか?」
『いや、良いよ!! 凄く良いよ最高だ!!!』
パイロットを選ぶ機体という物は確かに存在する。
性能が違えば、相性の良し悪しも生まれてくるからだ。
だがブレイズは起動する段階から相性を求めているらしい。
これまで数人のリンカーで実験を行い、起動の兆候までを見る事は出来ていた。
だがこうして順調に稼働するのは初めてである。
『……良し、決めた』
「何を?」
『ブレイズは君にプレゼントしよう』
「良いのか……?」
『あぁ。こうして起動させられた君なら……と言うのもあるけど、ジェネレーターの仕組み的にも慣れてるジン君が使ってくれるのが丁度良いと思うんだ』
第九世代から複数のライズリアライザーを搭載した機体が開発されるようになったが、それらは大まかに二つの種類で分けられる。
一つはアルゴンのような直列型、そしてもう一つはアネモイのような並列型。
ブレイズも並列型だが、性質はアルゴンのそれに近いらしいようだ。
「ほ~……種類があるのは分かったが、ブレイズがパイロットを選ぶのは何でだ?」
『恐らくだけど、グルムの技術だろうね』
グルムの開発でもパイロットに当たるパーツ、つまりOSと動力炉の相性問題が発生していたという記録が回収されている、
それは出力を上げるほど顕著になり、ノーブル・ランクスの中でもヴァイカウントが特に苦労させられていたようだ。
『その理由は今の僕達に解明出来ないけど、何故か地球科学だと解明出来る。なら、僕は戦いの早期終結を望むだけだ』
「なるほどね……」
これがヘンリー博士の協力する理由であり、ブレイズをジンに譲渡する理由である。
『あ、機体は譲渡するけど一応データは取らせてね』
「まぁそれ位なら良いぜ」
『助かるよ。それじゃ、ジェネレーターを停止させてくれ』
「りょーかいりょーかい」
『あ、それとさ。ブレイズはルブルムで戦えるように改造してから渡すから、そのつもりでね』
「おう! その辺は任せるぜ」
ちなみにだが、アネモイはアルゴンの兄弟機。
その為にアネモイの子機とも言えるブレイズは、アルゴンの従兄弟機とも言える。
その事を聞きつけ、少し浮ついた様子のバディが居たとか居なかったとか。




