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赤い星のリンカーネーション  作者: 鳥皿鳥助
5章 巡る戦場
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第47話 噂の真相






 度重なる激戦を乗り越え、アルゴンは全フェーズを開放した。

 整備を兼ねて再調整を行いたいという……ヘンリー博士の要請に応じ、ジンは一人で工房へと向かう。


「こんちゃーっす」

「ようこそジン君、君の来訪を待ちわびていたよ」

「そりゃどうも……ってか、何かとっ散らかってんな」

「そうだね、ここは今とっ散らかっている。だから作業を始めるにはもう少し時間がかかるんだ」

「つまり?」

「少し話をしようじゃないか」


 ヘンリー博士はハードウェア側だけでなく、ソフトウェア側まで自作出来るタイプの技術者。


 ジンが以前戦った無人機の試験と調整を繰り返してアップグレードを行い、アネモイという名前までもを与えていた。

 だがこの事態は、そのアネモイが全ての原因となっている。


「ちょっと前にさー、消えちゃったんだよね」

「消えた……か。奪われたとかでは無く?」

「あぁ、そこは間違い無いよ。記録が残ってたからね」


 だがその記録がかなりの曲者でもある。

 奇跡的に残っていた映像データは軍艦から攻撃を受ける瞬間を捉えており、その船が地球に現存する物と一致したのだ。

 ジン達の暮らす地球では何も起きていないと言うのに。


 更にアネモイが“向こう”で十七年稼働していた事になっているが、ヘンリー博士視点だと数週間しか経過していない。


 これらの証拠から、ヘンリー博士はアネモイが別時空へと転移していた可能性が濃厚である……と考えているらしい。


「記録が見れた……って事は、戻って来たのか」

「そうそう。一定以上のダメージを受けたら必ず帰還するようにプログラムしてたんだ」


 その結果がこの惨状でもあるが、ヘンリー博士としては不満は無い。


「でもねぇ、あの時は正直焦ったよ。折角の研究成果が綺麗サッパリ無くなってたんだもん」


 ヘンリー博士は話をしながらも掃除を続ける。

 一先ず足の踏み場は確保され、人が暮らす最低限の装いは取り戻した。


「ふぅ……これで施設を復旧させる目処は立ったかな」


 工房の側にある格納庫では二体のロボットが横たわっている。

 周囲には様々な部品が並べられており、どれがどちらの部品か分かるようにマスキングしてあった。


 白い機体の周囲にはアネモイ、そして青い機体の周囲にはブレイズという名前とパーツ番号がそれぞれに記載してある。


「でさ、神隠し騒動があったでしょ?」

「あぁ~……あったな」


 それは未使用の機体のみが消え去るという、現在は沈静化した騒動の事。

 メビウスやリンカー(プレイヤー)達の間ではグルムが原因だと考えられているようだが、ヘンリー博士の掴んだ答えは違う。


「アレはこの機体が原因だったみたいなんだよね」

「マジかよ……」


 その証拠は“グルムも消えている”という記録がマーグヌム・カストラに残されていた事である。

 ルフス・エフェクターも真相を探ろうと躍起になっていたようだが、アネモイを知らないが故に真相へと辿り着く事は出来なかったようだ。


「それでちょっと厄介な事があってね、ルイーナの石版も若干削り取られちゃったらしいんだよね」

「記録は無いのか?」

「残念ながら」


 削り取られたのは未解読・未研究の極狭い領域だったが、運悪く記録漏れしていたらしい。

 そこはライズリアライザーの強化型に関する記述があった……と考えられているそうだ。


「それよりも! 興味深いのはこっちの機体だよ!!」


 ヘンリー博士が指差すのは、コックピット部分が空洞化した青い機体。

 アネモイや従来のCAと比較してもかなり小型なようだが、アネモイと渡り合うだけの性能は秘めているようだ。


「ちなみに名前はブレイズと言うらしい。OSがギリギリ生きてて助かったよ……」


 アネモイ側も合わせて調査した結果、ブレイズのOSはアネモイの基礎OSを参考に作られていると判明した。

 破損部分は多くこのままでは動かせないが、CAのOSと類似点も多く多少の手間で動かせるようになるとヘンリー博士は見込んでいる。


「こんなボロっちいのを動かすつもりなのか……」

「そりゃ勿論。けど最も注目すべき部分は……ここだ」

「ジェネレーターか?」

「あぁ」


 ブレイズに搭載されたジェネレーターは、アネモイや従来のCAと比べて明らかな小型化と高効率化が進んでいるらしい。

 これは現在のメビウスが持つ技術力では不可能な領域である。


「この辺りはグルムも別時空の地球に行っていた事が原因だろうね」

「ほうほう」


 アネモイの起こした神隠し騒動では石版の未調査領域だけでなく、少なくない数のグルムも巻き込まれた。

 それらを全てを参考にして、別時空の地球でブレイズのジェネレーターは作り上げられたのだろう。


「だがグルムがブレイズの開発に影響を与えているとなれば、一つの疑問が生まれる。何故地球人はグルムの構造を解析出来たんだろうね?」


 その真相を技術者では無いジンに計り知る事は出来ない。

 だが疑問を持つ事はある。


「なぁ……そもそもグルムって何なんだ?」

「ルフス・エフェクターによって作り出された生物を模した機械等の総称さ、多少の例外は存在するけどね」


 そして存在する意義はメビウス陣営と戦う事。

 更にはCAがグルムへの対抗策として作られ強化されて来たように、グルムも進化している。


「エフェクターとメビウス、どっちも悪い事はしていない。主義主張が違うから、こうした衝突が起きてるんだ。……そしてどちらも引かないから、争いはいつまでも続く」


 全ての原因は二大陣営が交渉不可能状態で真正面から争っている事にある。

 ヘンリー博士は工具を手に取り、現状の表現を始めた。


 互いにぶつかり合い損耗し、最後に待っているのは共倒れ。

 どちらかが勝たなければどちらも負けてしまう、それがヘンリー博士の予測する行く末なのだろう。


「で、その終止符を打つ存在がアルゴン……かもね!」

「かも……って?」

「アルゴンが最後の希望である事に変わりは無いけど、他にも策は用意してある……って事さ」


 アネモイもその策の一つだったらしいのだが、神隠し以前の段階で試験起動の許可さえ降りなかったと言う。

 改良に改良を重ねた結果、現行世代の設計思想からは逸脱し過ぎたのだ。


「だから別時空の地球人には申し訳ないけど、正直戦ってくれて助かったよ。良いデータが取れたからね」

「なるほどね。で? 俺を呼び出した本当の理由は何だよ」

「流石にお見通し……か」


 比較的余裕のある今、整備や調整を急ぐ必要は無い。

 なのに呼び出された事に対し、ジンは違和感を抱いていた。


「君なら……アルゴンの適合者なら、ブレイズを起動出来るかもしれないと思ってね」

「起動してどうするんだよ」

「データを取るのさ。そうすれば今後の研究と開発に役立つかもしれないからね」


 おちゃらけたような動きをするヘンリー博士だが、その目は真剣そのものである。


「……分かった、協力してやるよ」

「助かるよ。じゃあ僕は隣の研究室からモニタリングしているから、指示に従って動いてくれ」

「りょーかい」






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