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赤い星のリンカーネーション  作者: 鳥皿鳥助
5章 巡る戦場
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第45話 連携と予言






「で、奴の方はどんなモンだ?」

「ジンはん……こらアカンで」


 流石に難なくとは行かなかったようだが、クレイモアで防御された。

 金の矢によって大きく後退させられたヴァイカウントは刃を地に付け、恨みがましく視線を向ける。


 ジンとヘリオスが次の行動を警戒していたその時。

 辺り一面に声が響いた。


『お前らは偽りのヒーローだ。全てはルブルム共和国が糸を引き、英雄を作ってるに過ぎない』

「これは……」

「音声の発信源は……ヴァイカウント!?」

『俺の行動はお前達を救う事にもなるんだ。だから邪魔をしないでくれッ!!』


 ヴァイカウントも少なからずダメージを負っている。

 それを無闇に増やさない為に、パイロットは交渉しようとしたのだろう。


 だが今回は相手が悪い。


「ハッ!! そんな事、俺達プレイヤー(リンカー)が知るか!!!」

『何だと……?』


 ジンはヴァイカウントへとルナブレードを向け、言葉の刃を手に取った。


「偽りのヒーロー? 創られた英雄? 上等じゃねぇか」


 アルゴンが一歩前に出れば、ヴァイカウントは一歩下がる。

 自身の優位を確信したジンは二つの刃を手に突撃した。


NPC(ルブルム)や運営が必要とする限り、俺達自身が"そうありたい”と思う限り……ヒーローであり続ける!!」

『クッ……!! 余所者が!!!』


 両者の刃が混じり合う。

 だが同じ道へ辿り着く事は無く、この場においては対立しか無い。


「違うな! 俺達もメビウスに、ルブルムに関わる人間だ!!」


 ESGの普及によってVRゲームは大きく進化し、もう一つの世界と呼ぶべきバーチャル空間が生まれた。

 そうした場所で遊ぶプレイヤー達の中では“その空間に住まうNPCをどう扱うか”と言う問題が古くから議論されている。


 あくまでもゲームのキャラとして割り切る者も居るが、ジンはゲームの中に存在する“生命”としてNPCを認識していた。


『遊び感覚で首を突っ込むべきじゃないのに、何で君達リンカーはいつもいつも!!』

「遊びだから本気でやるんだろうが!!!」


 アルゴンは助走をつけて左膝蹴りを繰り出し、立て続けに右回し蹴りを行いクレイモアを弾く。


 体勢を崩されたヴァイカウントは巧みな体幹操作で攻撃に転じるも、着地と同地にパリィの構えを取ったアルゴンに弾かれる。

 火花の散る刃を目前に構え、極限まで接近したジンはヴァイカウントの胸部を斬りつける事でようやく後退した。


「遊びだから、本気やと……?」

「そうだ。本気だから頂点を目指せる、本気だからそこへ至る努力が出来る。違うか!?」


 ヘリオスの夢は英雄になる事。

 誰に何と言われようと、見境なく他人(ジン)へ迷惑をかける程には本気である。

 そしてジンもルナクスも、多少方向性の違いがあっても本気具合に大差は無い。


 彼女に足りなかったのはそこへ至る覚悟だけなのだ。


「ウチも……ウチもなぁ!!」


 ソル・フレアは剣と盾を握り込み、前を見据える。


「本物の、英雄になるんやぁぁぁああああ!!!」


 そしてヴァイカウントと並び立つアルゴンの真後ろから突撃した。


「アポロ!!」

「心得た」


 ジン諸共撃破するつもりなのか。

 目を向けられた数人の味方がそう思った、次の瞬間――


「ジン殿、申し訳ないが少し避けて頂けるだろうか?」

「良いだろう、やってみろ!!」

「おおきに!」


 ――アルゴンが大きく跳ねた。

 ヴァイカウントの視線はそこへ追従するが、本命はそこでは無い。


「せぇぇぇぇい、やぁぁぁぁぁぁああ!!!!」

『そんな攻撃……!』


 ソル・フレアがヴァイカウントを攻撃圏内に収めるのは初めての事である。


 剣は右腕で防がれてしまった為、すぐに反撃が飛んでくるだろう。

 だがヘリオスは盾を投げる事でクレイモアを弾く。


『何だと!?』


 正直な所、ソル・フレアはアルゴンと比べ全てが劣る。

 パイロットの戦闘技術にまでそうした差が現れているのだから、ヴァイカウントが警戒を怠るのも無理はない。


「けどなぁ、舐めて貰っちゃあ……困るなぁ!!!」


 ヘリオスの動きは防御から攻撃に転じ、ヴァイカウントを圧倒する。

 だがそこまでしても、地力の差は戦局に現れてしまうモノだ。


『それは俺のセリフだ!!』

「チッ!」


 ヘリオスは剣を真上に弾かれてしまい、一時的とは言え丸腰になってしまう。

 以前の彼女であれば打開出来なかったであろう状況も、今ならば対処出来る。


「本気なら、こういうのも使えるよな!」

「もちのろんやで!!」


 アルゴンは素早くルナブレードを投げつけ、それを受け取ったヘリオスがヴァイカウントの一撃を斬り払う。


 この武器も多くのエネルギーを消費する性質を持っているが、アウルムアルクス程では無い。

 そして短時間であれば貯蔵出来るという特性も合わせ持っていた。


「ルナブレード稼働時間、残りは三十秒程度だ」

「マジかいな! でもそんだけありゃあ……!!」


 弾かれたストライクソードを再び拾い、ソル・フレアは二刀流の構えを取る。


『貴様に……貴様に何が出来るッ!!』


 ヘリオスが攻めに転じきれない事は兵装と手応えから察しが付いている。

 故にヴァイカウントはカウンターを狙う。


 ソル・フレアはそれもお構い無しに飛び込み攻撃を行った。


「さっきまでのウチとはちゃうで!!」


 ヴァイカウントは二本の剣をクレイモアで受け止め、膝蹴りによる反撃を狙う。


 だがソル・フレアの行動は予想を上回った

 刃が届かないと察すると、素早く剣から手を離したのだ。


 そして両腕部を相手へと向け、隠し玉を披露する。


「フレアッ!!」

『何だと!?』


 ソル・フレアから爆発的な熱波が放たれ、ヴァイカウントの体勢を崩した。


 その隙きに二本の剣拾い上げ、逆袈裟斬りを一発。

 振り上げた剣を再び斬り下ろすのかと思えば、彼女は突如振り返りエネルギーの枯渇したルナブレードを投げつける。


「ジンはん!」

「おうよ」


 マントはアルゴンの姿を覆い隠す。

 無防備なソル・フレアの背中を斬ろうとしたヴァイカウントの胸部に、持つべき主と光を取り戻したルナブレードは深く突き刺さる。


『小賢しい、事を……ッ!』

「そうはさせんでッ!!」


 ヴァイカウントも反撃しようとクレイモアを持ち上げるが、フレアによって弾き飛ばされた。

 降下範囲も威力も優れない技だが、手軽さは随一である。


『クッ!!』


 クレイモアを失ったヴァイカウントの手は、代わりにルナブレードの刀身を掴む。

 その様子はヘリオスのマントに隠されてしまい、ジンが見る事は出来ない。


「そぉーら……よっと!!」

『何ッ!?』


 だが反対側の様子を見れないのはヴァイカウントとて同じ事。

 不意に押し込まれたルナブレード、そして二本目の剣……ソル・フレアのストライクソードが突き刺さる。


「悪いな、ヘリオス!」

「この位なら構わんで!!」


 マントをパージしたソル・フレアはターンし、アルゴンと並び立つ。

 そしてそれぞれの剣を手にかけ、勢い良く引き抜き斬り裂いた。


「チェックメイト、ってやつだな」

「観念せい!!」


 胴体部に甚大なダメージを受けるも、ヴァイカウントは立ち続ける。


『まさか……この俺が、貴様ら如きに!!』


 戦いはまだ終わってはいない。

 ジンとヘリオスは、ヴァイカウントの前へと立ちふさがった。


「貴様らじゃねぇよ。E(Exceed)S(Star)F(Fighters)のジン、と……」

「ソレイユ・エクスのヘリオスや! 今はまだウチ一人やけど、いずれ大軍勢でアンタらブチのめしたるからな? 覚悟しときぃや!!」

『ESFに、ソレイユ・エクス……覚えておこう』


 流石のグルムと言えども、ここまでのダメージを受けても戦えるはずが無い。

 ヴァイカウントは膝から崩れ落ち、無傷の背を地に向けた。


『俺達はいずれ相まみえる。リンカーが戦い続ける限り、絶対にな……』


 ヴァイカウントはその言葉を残し、活動を停止させた。

 同時に周囲のグルムは撤退を開始し、緊急ミッションはようやく収束の目処を見せた。






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