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赤い星のリンカーネーション  作者: 鳥皿鳥助
5章 巡る戦場
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第38話 地下施設への潜入






 先日の撤退時、少なからずダメージを負ったアルゴンは修理を受けている。

 その為に使える機体が無く、ジンはユニオンルームでのんびりとしていた。


「アンタが戦闘に出てないなんて珍しいわね」

「まぁな。装備のメンテは大事だし……たまには休憩も必要だ」


 クレナの言葉にそう返したジンは、手を後ろで組んで身体を解す。

 今活動している身体がゲームのアバターである以上意味は無いが、気分を変える程度の効果はあるだろう。


「そういえば……」

「ん?」

「今リンカー達の間で、変な噂が流れてるのよね」

「と言うと?」

「ルブルムとメビウスの各地で機体が紛失しているらしいのよ」


 それも未使用の新品、リンカーが搭乗する前どころか、バディすらインストールされていない状態。

 つまり制御OSが搭載されただけの機体が多く失われているそうだ。


 一部ではグルムによる攻撃だと考えられており、各ユニオンやCAメーカーが警戒を強めている。


「“神隠し”とか呼ばれてるこの噂。ジンはどう思う?」

「奴らが搦め手を使うのは何と言うか、珍しいよな」

「やっぱりそう思うわよね~……」

「あぁ。バカ正直に真正面から攻めるのがグルムの特徴って感じがするが、警戒をするに越した事は無いだろうな」


 だがそもそもの話として、その辺りがゲームのシステムとして守られていないのか……という疑問はある。

 ここがVRゲームの中であり、ESGを作り出したES社が送るCAの中ならあっても不思議では無いという考え方も出来るが。


 少なくとも、ジンはそうした疑問を抱いた。






 ――――――――――――――――――――






 マーグヌム山に敵基地があると分かってから数日。

 その場所はメビウスの地上最重要拠点であるエアストが近い事から、早期攻略の必要があった。


 敵戦力は分からないが、メビウスにワールドミッションを発行している暇は無い。

 即座に集まれたファントム・エクスにジェムズ、そしてESFの持てる戦力全てを投じ戦う事となった。


「ま、他にも都合の合った有志は集まってるけどね」

「なるほどね。それでこの規模か……」


 ESFからはジンとクレナがファントム・エクスのユニオンルームへと向かった。

 そこには大勢のユニオンルームが集められている。


「――時間だ。これより、マーグヌム山近郊の敵基地……マーグヌム・カストラ攻略作戦の概要を説明する」


 ファントム・エクス盟主、ルナクスが語る作戦の基本はユニオン単位での戦闘が主となっている。

 彼のバディである千景が最適な配置を導き出しており、配置は望めば変更出来るが最適解は彼の示す物だそうだ。


「最後方で我々ファントム・エクスがエアストの防衛を行う。各ユニオンは森の中で待機し、可能な限り敵機を撃破してくれ」


 そして各地には列車を配置し、スムーズな補給や簡易防壁として活用出来るようにしている。

 前線で対処出来ない敵が現れた場合には、迷わず後方へ流して欲しい……と言うのが彼の言葉だ。


「我々が絶対にその敵を撃破してみせよう。そして本陣だが――」

「――俺達、ESFが叩くのか」

「その通りだ。粒子雲下で機体を動かせる人材は少ないからな」


 ルナクスの言う“熟練度”を持った人材は少ない。

 そしてそれがチームで動ける候補となれば、メンバーの揃い具合もあり更に減ってしまう。


「けど少数のチームでそこそこ動けるってなると、ファントムの遊撃隊……えーっと名前何だっけ?」

「エクリプスだ」

「そうそれ、ソイツらを出した方が良いんじゃないか?」


 ジンの言葉にも一理ある。

 エクリプスはファントム・エクスの中でも最上位のチームで、強さはESFと同等かそれ以上の物だ。


「悪いがグルムにエアストへの防衛線を超えさせる訳には絶対にいかない。あそこに住む人々を守る義務があるから、僕達は動けないんだ」

「なるほどね……」

「だからこそ、この作戦は君達ESFの素早い拠点制圧が頼りになる。頼めるか?」

「りょーかい。まぁ出来る限り頑張ってみるか」






 ――――――――――――――――――――






 ミーティングは問題無く終わり解散。

 後は各々で準備を進め、エアストで作戦決行時間を待つだけである。


「ここに来るのはチュートリアル以来だが……壮観だな」


 現在、エアストには無数の機体が運び込まれ最終チェックを受けている。

 装備を換装している一部の機体を除き、ほとんどは燃料補給と消耗品の補充だけで作業を終えている。


 だが数が多く、ひたすらに時間がかかっているのだ。


「私達が出られるのは当分先よ」

「分かってるって」


 ESFの機体はエアスト防衛圏外のカタパルトに移送し、ブースターを取り付けている最中である。

 今回の戦闘に参加する機体群の中でも特に遅い出撃となるが、高速で突撃する為問題は無い。


「それにしても、霧の中を飛ぶとか良くそんな事思いついたわね?」

「まぁ……VFじゃよくやってたからな」


 作戦の大部分を決めたのは千景だが、強襲の方法だけは決める事が出来なかった。


 根幹部分とも言えるそれらを一任されたジンは、目標座標と地形データだけで突撃する事にした。

 目視に頼らない高速飛行もジンの得意分野だからだ。


「おーいお前ら! 暇なら最終チェック手伝ってくれ!!」

「おう、今行くぜ!!」






 ――――――――――――――――――――






 カタパルトとブースターを使用し、ESFの全三機は目標地点上空へ到着。

 そこは前回アウルムアルクスを発射した場所である。


「ブースターパージ!」

「了解、ブースターユニットをパージします」

「フェーズは変更しますか?」

「いや……しばらくはディフェンドのままで行こう」

「了解です」


 森の中腹部では既にグルムと味方機が遭遇し、戦闘を開始している。

 ジン達も急ぎ足で矢の着地点へと向かう。


「早速お出ましか!!」

「あれだけ大きく動けば流石に察知されるわよね……」


 アルゴンはバスターソードを振るい、敵を薙ぎ払う。

 それをグラファイトが援護し、レジーナもアルゴンの後に続く。


 こうして彼らがいつも通りの戦闘を繰り広げている一方、森の方では大乱戦が巻き起っているようだ。


「なぁなぁ、ユウト」

「えっと……どうかしましたか?」

「こういう場合、どこに行くのが正解だと思う?」

「えっ、それは……ッ!?」


 ユウトは操縦桿から手を離し、考え込む。

 銃口を下ろしたグラファイトにグルムが飛びかかるが、レジーナがそれを叩き落とした。


「気をつけてね」

「あっ、ありがとうございます」

「で答えは?」

「えーっと……敵陣を迂回して進む、つまり敵が居ない所に向かう事でしょうか」

「ん~、残念!!」

「何かムカつくわね……」


 ジンは軽口を叩きながらも、グラファイトへ決してグルムが向かわないように立ち回っている。


「正解はなぁ……敵陣の中央を突破する事だぁぁぁぁああ!!! フハハハハハハハ!!!」


 アルゴンは敵を切り飛ばす事で強引に道を切り開く。

 進めば進む程に厳しくなる道だが、ジンは構わず敵陣のド真ん中を進む。


「本気ですか!? ジンさん? ジンさーん!!」

「ああなったらもう止まらないわよ、あのバカ。まぁ今回は正解みたいだけど……」


 敵を迎撃するには迎撃装置を出す必要がある。

 そうなれば山としてのカモフラージュのベールは剥がされ、隠された拠点としての姿を表す物だ。


「まさかあんな所に入り口があるなんて……」

「敵増援、真正面からです」


 地下への入り口は敵拠点へと繋がっている。

 つまりそこからは敵が多く出ると言う事であり、彼らは周囲を囲まれつつあるという事でもある。


「流石にそろそろキツイな。……アル!」

「はい!」

「「フェーズシフト、パワードフェーズ!!」」


 装甲を削りやや軽装になったアルゴンは攻撃の速度を増した。

 バスターソードの重量を利用した動きで敵を翻弄し、時にはビームトンファーも使用し敵を屠る。


「僕達だって……」

「負けてられないわね!」


 クレナの駆るレジーナも蛇腹剣、セルペンテスを振り回し敵を掴み振り回す。

 近接戦闘を得意としないグラファイトはそこへ混ざれないが、彼には他の役目があった。


「皆さん、そろそろ敵基地へ侵入出来ると思います」

「「了解!!」」


 敵陣の空洞へと潜り込んだグラファイトが先行し、マーグヌム・カストラ内部へ入り込む。

 そこへレジーナが続き、殿をアルゴンが担った。


「っし、一発ドデカイのぶっ放してやるかァ!!」

「援護は必要?」

「んなモンいらねぇよ」


 ジンは背中からアウルムアルクスを取り、チャージを始める。

 弓に光が集まる一方でビームトンファーからは光が失なわれ、機体全体のエネルギーが急激に一点に集められている。


「チャージ完了、いつでもどうぞ」


 アルゴンは両足を広げ、矢を大きく引く。

 向かう先は赤い粒子雲に包まれた空だ。


「お空に向かって元気良くゥ! 行ってきまぁぁぁぁあす!!」


 不幸にもアルゴンに近づいてしまったグルムが巻き込まれるも、大半は撃破出来ていない。

 だが彼の目的は達成された。


「皆さん気付いてくれますかね……?」

「あんだけド派手にやりゃあ十分だろ。さっさと行くぞー」

「あっ、はい!!」






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