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赤い星のリンカーネーション  作者: 鳥皿鳥助
第四章 青い海に白い砂浜、そして赤い空
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第29話 新たな技術






 マーグヌム山近郊のパウルム防衛ミッションを受けたジンとクレナ。

 彼らはメビウスへ戻る為、付近の拠点へと向かう道中でとある人物に遭遇した。


「ん? おぉ~、クレナじゃん!」

「この声は……タイト?」

「おう。昨日の今日でアレだが、レジーナの調子はどうだ?」

「良好よ。セルペンテスも問題なく使用出来ているわ」

「そりゃ良かった」

「あぁ、そういえばレジーナもタイトが作ったとかって話だったな。というかお前がこっち(ルブルム)に居るって、中々珍しくないか?」

「あ~……まぁちょっとした用事でな」


 彼らが遭遇した人物とは、ESF所属のメカニックであるタイト。

 彼はヘンリー博士を主導とする、物質転送実験を手伝っていたらしい。


 何でもタイトはレジーナが使用する“とある武装”を開発する為、ヘンリーの技術を借りたい。

 そしてヘンリー博士はルブルム側で気軽に動いてくれる助手……つまりリンカーの手が借りたかったらしく、思惑の一致した両者は協力関係を築いたようだ。


 ちなみにヘンリー博士はメビウス側からコンソールを操作する為、地上へは来ていない。

 タイトはヘンリー博士に状況を説明し、クレナとジンにも回線を繋げた。


『やぁジン君、昨日ぶりだね。アルゴンの方も、調子はどうだい?』

「どうって言われても……まぁ調子が分かる程動いては無いが、特に違和感は無いな」

『なら良かった。……あ、そうだ。タイト君、丁度良い事だしこの後の実験は彼らにも協力して貰おうよ』

「良いのか? 今回のは極秘ミッションって話だったと思うが……」

『大丈夫だよ。多少でも顔を知ってる彼らなら、実験道具を奪われる心配が無いし……名前が分かってるなら、HITS経由で請求も飛ばせるしさ』

「うっわ、マジか……」

「見える地雷だったわね……」






 ――――――――――――――――――――






 ヘンリー博士が主導する、極秘実験に巻き込まれたジンとクレナ。


 彼らが合流して最初に行われたのは、武器の転送実験だ。

 詳細な内容はメビウスからルブルムの指定座標へ武器を送る時、施設ではなく機体の手に直接送れるのかどうかを調べるらしい。


 転送自体の実験は既に済んでおり、転送ミスで武器が機体の中に……という現象は発生しない事が確認されている。

 そして話し合いの結果、今回の被験者はタイミング良く武器を持っていないアルゴンに決まった。


『はーい、大人しくしてねぇ~。座標データは……まぁこんな所かな。ポーズは指定通りに頼むよ』

「マジか……」

「ジン、大人しく実験台になりましょう」


 博士の指定を受けたアルゴンは手を軽く開け、真上へ向けた状態で固定。

 ここまで来ればジンにする事はもう無く、何もしない事が一番の仕事である。


「天井のシミを数えている間に終わる……かもしれませんよ」

「そうだな~、そうするか……って、天井メッチャ綺麗でシミ一つねぇじゃねぇか!!」

『じゃ、行くよ~』

「えっそんな軽い感じで行くのかよ! もうちょっとカウントダウンとか――」『――転送開始!!』

「うぉ!」


 軽い調子でヘンリー博士がコンソールを操作すると、メビウスから赤い雷がアルゴンへと降り注いだ。

 赤い雷光は機体の手を数秒包み込み、その中心に物質を作り出す。


『うーん、少々収束率が甘かったかな……。けど、実験は成功だよ』

「……お? おぉ!?」


 雷による発光と煙が収まったアルゴンの手には、ジンも見慣れたレーザーライフルが収まっていた。


『一回位失敗するかと思ったんだけど……僕ってば完璧に作り過ぎだよね~! アハハハ!!』

「いやいや、完璧に作りすぎて良いだろ……」

『でも失敗が全然無いと面白くないじゃん? 皆、失敗して爆発する姿見たかったでしょ?』

「まぁ、違うとは言い切れないけどよぉ……」


 転送実験は無事に完了したが、ヘンリー博士は物足りなさそうにしている。


『ん~……そうだ! 丁度武器も送れた事だし、もう少し実験を続けようか』

「おいおいマジか、まだこんなのに付き合わされるのかよ……」

『大丈夫大丈夫、次の実験は君達好みの物だと思うよ? タイト君準備よろしく~』

「あいあい。二人には座標データを転送しといたから、先に移動しといてくれ」

「はぁ~……りょーかいりょーかい」

「分かったわ」






 ――――――――――――――――――――






 ジン達はヘンリー博士に指示され、マーグヌス山近郊からヴァイト・ヴィーゼの辺境へと移動した。


「――で、何だコレ」

「線路……かしら?」

『あ、線路は踏まないでね。CAの重量だと簡単に歪んじゃうから』

「分かったわ」

「りょーかい。……やっぱ線路なんだな」

『じゃ、タイト君準備よろしく』

「あいあーい」


 ほとんどのリンカー(プレイヤー)は気に留めていなかったが、ヒューゲル試験場の一部地域は実験用の区画として指定されている。

 彼らが今居る場所もそうした実験区画の一つであり、ヘンリー博士の許可無しに侵入する事は不可とされていた。


 その理由は今現在ジン達が見ている物(線路)にあるのだが、彼らの話は直前の実験に関する物へと移っている。


「結局さっきのは何なんだ?」

『あぁアレ? 最初にも軽く説明したけど、クァドラン粒子を用いた物質の粒子化転送実験だよ。君達リンカーがメビウスにも持つプライベートルームとか、ユニオンルームに使われる空間圧縮技術を応用した物だね』

「空間圧縮ぅ? 俺達ってばそんな事されてたのか、全然違和感無かったが……」

「多分ジンが想像してるのは旧来のシステムよ。今メビウスで使われているシステムはヘンリー博士が改造した物らしいわ」

『そうだよ。だってシームレスなサイズ変更が無いと不便でしょ? 昔のちょっと待たないとダメなやつは不便過ぎたんだよ。だから僕が改造して今の状態にしたのさ』

「ほ~……」

『っと、そろそろお待ちかねの物が到着するよ』


 そうして雑談を繰り広げる彼らの元へ次の実験で使用する物。今までのCAには無いシルエットを持つ、二両の列車が到着した。

 列車はアルゴンとレジーナの前で停止し、その運転席部分からはタイトが顔を出した。


「よぉ、お待たせ! 白線の内側に下がってお待ちくださ―い……なんちゃってなぁ!!」

「……博士、撃っても良いか?」

「おいおい面白いダジャレなのに撃つとか、勿体ないから止めろよな?」

『そうだよ。せめてデータ取りの準備が終わってから撃ってくれ』

「おいおいおい博士、撃っちゃいかんでしょ!」

『僕はデータが取れればそれで良いから』

「おぉい!!」


 ジンは列車とタイトに向けて銃口を向けているが、勿論撃つ気は無い。

 その証拠にトリガーへは指がかかっておらず、せいぜいが銃身で殴る程度だろう。


「で、コレは?」

『ヴァイパーとシディウム、これから君達の戦場(ルブルム)で活躍するであろうサポート兵装さ』

「そして俺はタイト! ESFでメカニックを――」「――いや、お前じゃない」「最後まで言わせてくれよ!!」

『じゃあタイト君、手早く準備をよろしく』

「何かお前らからの扱いが雑過ぎないか……?」


 ヘンリー博士に指示されたタイトは、トボトボと列車の運転席に戻った。

 その様子を確認したヘンリー博士はジン達に向き合い、これから行う実験についての話を始める。


『さてさて。それでは説明に入るが、アレは確か君達の言葉で“列車”……とか言ったかな?』

「まぁ……見るからに列車だろ」

「紛うこと無き列車ね。正直ここで見るとは思ってなかったわ……」

『合っているなら良かった。アレは今回の実験に使う物の一つさ。この二両に関するデータは既にタイト君が送っていると思うから、是非目を通してくれ』

「オーケーオーケー、何々~?」


 先頭を走ってきた列車はヴァイパー。

 HITS(ヒッツ)C(Crystal)P(Paradise)社が共同開発した、攻撃型の列車だそうだ。

 HITSと共同開発するCPの影響からレーザー系の兵装を多く搭載している他、線路を“生成”出来るという特徴を持っている。


 そしてヴァイパーの後方を走る列車はシディウム。

 メビウス企業連合が開発した支援型の列車らしい。その性質はヴァイパーの真逆であり、ほとんどが防衛や防御に向いている。

 機体の整備や線路の敷設……更には即座に展開出来る仮拠点として成り立つような機能まで持っているようだ。

 ただし攻撃・迎撃能力には劣る為、文字通りの味方支援が主な想定として挙げられている。


「……なるほど、中々面白そうなモン作ってんな」

「そうね。でも企業が開発したのなら、そっちで試験運用をしないのはどうしてなのかしら。別にヘンリー博士が作ったとかではないのでしょう?」

『ご明察。この列車自体は企業の連中が設計と製造をやったんだけど、どうやらテストの人手が足りないらしくてね。それなりに技術力のある僕の所にまで来たって訳さ』

「ほうほう。で、俺達はアレと戦えば良いのか?」

『そうなるね。なるべく多くのデータが欲しいから、完全に破壊するつもりで行ってくれ。良いかい?』

「了解だ」

「了解よ」






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