第28話 剣士から女王へ
アルゴンがヒューゲル試験場でエラーを起こし、ジンがヘンリー博士の元へ向かっていた頃。
クレナは自身の暴走を起因として発生した、フェンサーの損傷部分を修復していた。
そんな彼女にESFメカニック、タイトはとある提案を持ちかける。
「――なぁ、新しい機体に乗らないか?」
「新しい……機体?」
「あぁ。概要はここに書いてあるから、見といてくれ」
タイトはクレナにとある書類を渡した。
そこに書かれた機体の名前はレジーナ。
中量二脚へ分類される近接型の機体らしく、セルペンテスという専用の蛇腹剣一本が付属する。
専用武装こそ少ないようだが、レジーナはフェンサーに近い性能をしている。
つまり大抵の兵装は使用出来るように設計されているようだ。
「本当ならもう少し早く仕上げたかったんだが……ちょっとした事情で遅れてたんだ、悪いな」
「いいえ……ここまでの機体を作って貰えるのなら、そんな文句言えるはずが無いじゃない」
フェンサーに近い性質を持っているとは言え、基礎スペックはその全てはフェンサー以上。
フェンサーでは物足りなくなりつつあったクレナにとって、文句のつけようが無い性能を誇っている。
特出したスペックを持たないレジーナだが、この機体は一つだけ特殊な機構を持っていた。
「……ねぇ、ここのパーツって何で付いてるの?」
「あ~そこ? 細かい事はまだ決まってないんだが……拡張用スロットって所だな。
中々承認されなくて作れてねぇが、まぁ……追々って所だな」
――――――――――――――――――――
「こいつを手に入れた頃とは逆だな」
「そうね。たまたま暇しててくれて助かったわ」
「おう」
新たな機体を手に入れたクレナは日付を変えると共にジンを巻き込み、マーグヌム山近郊のパウルムのクルスを殲滅するミッションへと赴いていた。
この地域のミッションは、リンクレベル2相当のプレイヤーに向けられた物が多い。
だが初心者以外……新機体を入手したリンカーも、このエリアを多く利用している。
ヒューゲル試験場はまず動くかどうかの確認、そして簡単なミッションで感覚のズレを調整する……という流れが、ある種の儀式としてリンカーの中に広まっていた。
クレナもそんなリンカーの一人であり、ジンは保険として連れられている。
「――けど、俺来なくて良かっただろ……」
CAにおいても非常に珍しく扱いにくい武装である、蛇腹剣……セルペンテスを振るうクレナのレジーナ。
近距離の相手は勿論の事、中距離の相手にはセルペンテスをムチのように振り回し対応している。
「ミドリ!」
「りょーかい」
クレナはミドリに指示を飛ばし、蛇腹状に変化させたセルペンテスでクルスを絡み取る。
彼女はそのクルスを重りとして振り回し、更に多くのグルムを撃墜していく。
その数はジンが手を出す間も無く減っていき、大量に蠢いていたクルスはすぐにその姿を消した。
「ミッションコンプリート。……まぁこんな物かしら?」
「お疲れ様~、その蛇腹剣すげぇな。何で伸ばした時に赤く光ってるんだ?」
「形状操作の為にクァドラン粒子を利用しているから……らしいわよ? 詳しい原理は良く分からないらしいけど」
「なるほどね。まぁゲームだし、ただのエフェクトと思っておけば良いか」
「そう……ね」
「っし、じゃあ帰るか~」




