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赤い星のリンカーネーション  作者: 鳥皿鳥助
三章 ワールドミッション
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第23話 迷いの果て






 迷いの森へと赴いたESFとジェムズの面々……計六機のCAは、鬱蒼(うっそう)と覆い茂る木々の中を歩いていた。

 彼らはクロムを先導として進み、依頼主であるメビウスから地図データも受け取っている。


 そこまですれば迷う事は無いと思われていたのだが――


「――スマンスマン、完全に迷ってしもうたわい」

「まーじか……」

「マジじゃよマジ。さっきまで『コッチだ』と言っていた勘が、もうサッパリどっかに行っちまったわい」


 今回渡された地図データに使用されているのは、この場所の遥か上空に存在するメビウスから撮影された画像が主となっている。

 もっともそこに映るのは常に成長し続ける木々だけであり、目印になるような物は何も映っていない。


 だが近くのパウルムから飛ばした偵察機が撃墜された事から、この辺りには地対空兵器の存在が示唆されている。

 そして偵察をされては困るような“何か”がある事は確実……と言われているようだ。


「どうするでゴザルか? 迂闊に上へ飛んで、周囲を見回す事も出来ないでゴザルよ……」

「ふむ、そうだな。……折角ここまで来たと言うのに、今帰るのは勿体ないだろう。クロムさん、引き続き先導をお願い出来ますか?」

「合点承知の助、このワシに任せんしゃい!」

「本当に頼って大丈夫なのか? この爺さん……」

「大丈夫でゴザル、クロム殿の勘は八割当たるでゴザル」

「……残りの二割は?」

「まぁ最終的には良い結果になるでゴザルが、大体過程が大変でゴザルな」

「で今回はどっちよ」

「二割の方でゴザル」

「……行くか」

「そうすると良いでゴザル、ジン殿はもうエイジ殿に関わった時点でアウトでゴザル。腹を括るのが一番でゴザル」

「……」


 勿論彼らがここ(迷いの森)(おもむ)く今日まで、大小様々な調査は幾度も行われている。

 だが地対空兵器が存在する可能性や、森そのものが持つ“迷いやすい”という地形的性質によって成されずにいた。


 そして今回は強運を持つと噂されているクロムの協力によって、その全容が暴かれるかもしれない……と依頼者(メビウス陣営)は期待しているらしい。


 幾人からもそうして“強運を持つ”と評されるクロムだが、ジンにしてみれば大して知らない人物である。

 不安になったジンは、先頭を歩くベリル(クロム)へと近づいた。


「……なぁクロムさんよ、本当にコッチで合ってるのか?」

「問題無い。ワシの勘がコッチと言っておる」


 彼らはクロムに付き従い、森を突き進む。

 多くの木々が育つ事は変わらないが、周囲の様子は徐々に変化をしていた。


「……何か周りが赤くないか?」

「あぁ、クァドラン粒子の濃度が上がっているのだろう」

「えっ……それ大丈夫なのか?」

「問題ない、気流の流れや地形的な問題で粒子が溜まっている場合もあるからな。……が、これは当たりかもしれない」

「当たり……?」


 今回のミッションでリーダーとなったタンザナイト(ザ・ナイト)は、ダイクロアイト(サピロス)と共にベリル(クロム)の背を追う。

 辺りの異様さに若干怖気(おじけ)づくESFの面々だったが、ここで置いていかれても困る。


 ESFの彼らもジェムズの面々を追いかけたのだが、辺りに漂う赤い霧(クァドラン粒子)は更に濃度を上げ……うっすらかかる程度から、先が見えにくくなる程度にまでなった。


「マスター、報告です。クァドラン粒子の濃度上昇により、メビウスとの通信が途絶えました」

「お、本格的にヤバくなってきたんじゃねぇか?」

「ここまでの濃度になると、僕の機体……グラファイトでも先行して敵機を捉えるのが厳しいかもです。皆さんの方でも警戒をお願いします……!」

「承知! 道中の警戒はユウト殿にお任せしていた故、ここからの索敵は拙者に任せるでゴザル!!」


 この霧(クァドラン粒子)はザ・ナイトやジン達の予想以上に、機体へ悪影響を与えていた。

 単純に視界が悪くなる以外にも、メビウスとの通信が出来ない事やマップ機能関連の一部機能が使えない等の影響を及ぼしている。


 そしてジンのアルゴンを含めた合同チームの各機は、以前クレナが話していた暴走……通称粒子酔いを起こさずに耐える事が出来ている。

 全員が全員、それなりの練度を持っているという証だ。


 そんな濃い霧の中、再びグルムは姿を現した。


「――敵機発見、規模はそれほど大きくないでゴザル」

「……なぁ、やっぱグルムも森で迷ってるだけだったんじゃねぇか? この霧は気流の都合で溜まったって事でよ」

「いや、そう仮定するとおかしな点が生じる。これまでの蓄積情報と現在遭遇している部隊の規模が違いすぎるし、何より“状況が出来過ぎ”だ。何故ここまでの数が配備されているんだ……?」

「あ~、やっぱこういう発言はフラグだったか?」

「……アタシ、何か出てきたらジンを叩くわ」

「おまっ、クレナァ! そういうのフラグ補強するだけだから止めろよな!?」


 遭遇したグルムとの戦闘は、そうした雑談(軽口)を交わしながら行われた。

 だが低カテゴリーのグルムが中心という事もあり、すぐに終了を迎える程の実に代わり映えしない……詰まらない戦闘であった。


 だがその直後、サピロスの乗るダイクロアイトに取り付けられた猫耳型センサーが反応を見せる。


「――ヴァイ……カウント……?」

「何だ、どうかしたのか?」

「いえ……ナイトさん、そっちで今の音声は聞こえなかったでゴザルか?」

「こちらでは何も聞こえなかったが……」

「であれば、拙者の機体だけが音声を拾っているみたいでゴザルね。……今後も同様の音声を拾う可能性を(かんが)みて、当分の間はコチラの音声を全員に共有するでゴザル」

「了解した、音声の発信源は便宜上“ヴァイカウント”と呼称する。敵なのか味方なのかは分からないが、念の為に警戒はしておけ」

「「「了解」」」

「サピロス、発信源との距離はどの程度か分かるか?」

「かなり近く……霧が無かったら見えている程度でゴザル。そして相手の動きはコチラを探知しているような……」

「コチラで機影を捉えました、今画像を送ります!」


 最初にその姿を捉えたのは、ユウトのグラファイトだ。

 ヴァイカウントと呼称されるその機体は、中量二脚のCAに近い大きさ。そして騎士のような風貌をしている。


 その見た目には、今までの出現したグルムが持っていたような“動物的要素”は感じられない。


「この形状、味方機か? どうにか接触して、確認が取れれば良いのだが……」

「――ッ! いかん、下がれナイト!!」


 味方機か確認する為に近づこうとしたタンザナイト(ザ・ナイト)だったが、ベリル(クロム)が彼を引き止めた。

 次の瞬間にはヴァイカウントが攻撃態勢へと移行し、手に持つ剣を彼らへと向けて構えている。


 そして同時に剣へとクァドラン粒子を集め、サピロスの機体へ新たな音声を届けた。


『――――案外何かを失うのも命を失うのも他人事じゃないんだぜ?』

「あれは……?」

『何せお前等は全員が全員……』


 ヴァイカウントは剣へ粒子を集め終えると、構えを解いて天に掲げる。

 そして即座にそれを振り下ろし――


『何かを持ってるんだからな……ッ!』

「……不味いッ! 総員回避だ、防御では装甲が持たんぞ!!」


 ――その全てを、一気に開放した。


「おいおいおい、マージかよぉ!!」

「ヌオー! 踏ん張り所でゴザルーッ!!」

「クッ……!!」

「ジンさん、大丈夫ですか!?」

「重いからちょっと遅れたが、問題無い……ッ!!」


 大きな攻撃には、大きな隙きが生まれる物だ。

 更にザ・ナイトの素早い指示もあり、味方機は全員回避出来た


 だがヴァイカウントの放った一撃は地面を数メートル程削り……赤い空を真っ二つに割る。


「タイトが居たら『フラグ回収乙!!』とか言うんでしょうね……」

「ファー! これだから神様は!!」

「神様って基本理不尽ですよね」

「まぁそういうモンだしなー! コンチクショー!!」


 彼らはすぐに第二波を警戒し、戦闘態勢へと突入した。

 対するヴァイカウントも剣を構える。


「談笑中に失礼します、マスター」

「お、どうしたよアルさんや」

「先程ヴァイカウントが放った攻撃により、周囲に存在するクァドラン粒子の大部分が離散。最後に利用したパウルムの方角を特定出来ました。またメビウスとの通信も一時的に回復しています。相手の情報も不足している事を考慮するならば、撤退が得策かと」

「ほーう……。どうするんだナイトさんよ!」

「帰路は見えた、無茶は出来ん。ならば取る行動は撤退ただ一つだ、引くぞッ!!」

「「「了解ッ!」」」


 ザ・ナイトは素早く決断し、タンザナイトの各所に搭載していた煙幕を使用。

 ESFとジェムズの全機が去った事により、両者が会敵したその場にはヴァイカウントだけが取り残される。


 こうしてESFの面々が初めて受けるワールドミッションの結果は、撤退という形で幕を閉じた。






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