第22話 ワールドミッション《迷いの森》
リンカーランクが3になったジンだが、その日も彼はクレナに呼び出されユニオンルームへ向かった。
「――さて、今日集まって貰ったのは他でもない。……ワールドミッションに向けて、準備をするわよ」
「「「ワールドミッション……?」」」
ワールドミッション、それはこのゲームにおけるストーリーミッションとでも言うべき物だ。
このワールドミッションで何か進展があると、全てのリンカーに大きな影響を与える特性を持っている。
そうした効果はリンカーが動かずとも、時間が経てばNPC達が何か動きを見せ話が進む。
有名所で言えばメビウス死守戦がこれに当たり、リンカーが動かなければ大抵悪い方向へ進むらしい。
だがジンは初心者だから、ユウトは自分の事で手一杯だったから……そしてタイトはCAいじりが楽し過ぎた為、その存在を明確には把握していなかった。
「……大丈夫なのかしら、このチーム」
「そこはほら、クレナが頑張って……ね?」
「分かってるわよ。とりあえず今回のミッションは別ユニオンと合同で行う事になってるわ、そろそろ着くと思うんだけど……」
ユニオンルームには同盟外の人物を招待する事が可能となっている。
勿論、利用可能な施設はかなり限られてしまう。だがこうしたミーティングをする程度には十分な為、今回のような同盟間での連携は頻繁に行われているようだ。
「失礼する、ジェムズのザ・ナイトだ。君達がESFの諸君で合っているかな?」
「えぇ合ってるわ。私がクレナでそっちからユウト、タイト、ジンよ」
「ほう……キミがジンか。話はエイジから聞いている、期待しているぞ」
「エイジ? あー、アイツか……」
今回ESFの面々が共に戦うのは総勢十二人のユニオン“ジェムズ”、そこに所属するクロム、サピロス、ザ・ナイトの三名。
少し前にジンが共に闘ったエイジもジェムズの一員なのだが、今回その姿は見えない。
「知り合いなの?」
「あぁ、ちょっと前のミッションで一緒になってな。結構気の合うヤツだったんだが……当のエイジはどうしたんだ?」
「ファントム・エクスから合同調査に招待されてね、そっちに行ったよ」
「あー、なるほど」
ファントム・エクスの盟主は、エイジの憧れるリンカーであるルナクス。
あわよくば話が出来るかも……という考えで行ったのだろう。
そうして各々の挨拶も終わり、ミッションに向けたミーティングが始まろうとしたその時。
ザ・ナイトが一つの疑問を投げかけた。
「――で、君たちESFの盟主……リーダーは誰になるのかな?」
「ジンでしょ」「クレナだろ」
「「……え?」」
――――――――――――――――――――
ESFの盟主は設立者であるクレナとなったままだったが、最終的にジンへと権利を譲渡。なし崩し的に彼が務める事となった。
そういった同盟内のゴタゴタはあったものの、ミーティングはザ・ナイトの優れた手腕により恙無く進行。
具体的な作戦の立案を行う前に、まずは各々の機体特性を話す事となった。
最初に話されたのはジェムズ最高齢らしいクロムの機体に関してだ。
彼が乗るのはオールラウンダーな重量多脚ベリル、相棒は我の強い翠。
次にケモミミ武士サピロス、彼の機体は近接防衛型の重量二脚ダイクロアイト。そして相棒は蒼なのだが、彼は猫耳に並々ならぬ情熱を持っているらしい。
機体に相棒所か自身にもそれを付ける程だ。
そした最後はサピロスを制御出来る数少ない人物にして、今回の作戦でリーダーを務めるザ・ナイト。
彼の機体は近~中距離からの支援を得意とした軽量二脚のターコイズであり、相棒は騎士のような風貌と態度の瑠璃。
その性質はある意味でアルゴンと似ている……というのはザ・ナイトの言葉だ。
こうしてバディの説明までを合わせて行われたのだが、今回のミッションでは緊急時を除いてバディの音声は通信に乗せない事となっている。
理由は単純に人数が多すぎる為であり、顔合わせまではしていない。
そうしたミーティングを終えたESF・ジェムズ合同部隊は、早速ルブルムへと出撃した。
降下地点からの距離が短い為に彼らは輸送機は使わず近場のパウルム、そしてそこに設置されたカタパルトを経由して迷いの森へと向かう。
ちなみにザ・ナイト曰く、迷いの森という名前は正式な地名では無いらしい。この辺りはマーグヌム山の麓、現実で言う所の青木ヶ原樹海のような場所に当たる。
だが敵味方問わず多くの機体が迷う事から、そう呼ばれるようになったそうだ。
そんなこんなで始まったワールドミッションだが、その内容は迷いの森を調査する事。
元々は今回のミッションにも同行しているベリルがこの森へ迷い込んでしまい、偶然赤い霧を発見した事が発端となっている。
他の場所のような存在が明確に確認されているカウスよりも優先度は低いが、場所が場所だけにその難易度は十分にワールドミッション足り得る。
発見時期が丁度一週間前という事もあり、こうした形で調査する事となったそうだ。
ちなみにジェムズに所属する残りの九人はそれぞれ、迷いの森よりも優先度の高いミッションへ赴いているらしい。
エイジもその中の一人……という話をしている内に、状況は動き始めた。
「グルム発見、データを共有します」
「……想定より少ない」
「ほー、なら楽勝だな」
グラファイトの共有したデータ、そしてそれを分析したザ・ナイト曰く敵は意外と少ないらしい。
だが目的地は森の奥を調査する事であり、最悪無視して進む選択肢も存在する。
その選択肢も普通であれば彷徨って辿り着けない、つまり選べない物。だが彼らはクロムと共に戦い、その強運があやかる事が出来るのだ。
「連携はミーティング通り、ユニオン別で行う。……最初は我々ジェムズだ、行くぞ!!」
「「了解!!」」
彼らの対峙するグルム集団は総勢百数機にもなるが、その大半は低カテゴリーな機体で構成されている。
迷いの森で戦ったリンカーが討ち漏らした残党か、元々森を彷徨うものが集まった群れなのだろう。
ダイクロアイトが前衛で敵を押し留め、ベリルが大量のミサイルで敵の多くを撃墜。
その討ち漏らしをターコイズが仕留め、同時に司令塔としての役目も行っている。
危なそうなら支援を行おうとしていたESFの面々だが、ジェムズの連携に手を出す隙きは無い。
だがベリルの放つミサイル量は、完全に短期決戦のそれだ。
「弾切れとか大丈夫なのか? アレ……」
「問題無い。多分そろそろ――」
ジンの疑問にザ・ナイトが答える。
それと同時に、一つのコンテナが飛来してきていた。
「――オーライ、オーライ……よっこいしょー!」
ベリルは背部のミサイルコンテナをパージし、飛来してきたコンテナへと背中を合わせる。
すると中には同系の武装が梱包されていたらしく、コンテナが分解される事で弾数の問題は解決した。
「マジかよ……」
「クロムだから出来る芸当だ。私達は十回に数回程度しか成功させられない」
「いや、成功するんかい」
「慣れればどうと言う事は無い、一番の問題は到着タイミングだ。我々では運が足りないのだが、クロムさんは持ち前の豪運で最適なタイミングに出来る」
「おっ、おう……」
ちなみにコンテナは道中のカタパルトから射出されたらしい。他にも輸送機からの投下等武装の追加配備は楽なようだ。
やることも無く静かに観戦していたESFの面々だが、戦闘音を聞きつけた別のグルムが出現。
雑魚の相手をしているジェムズに変わり、こちらの対処をする事となる。
「何だアイツ」
「カテゴリー2のアーマーフォルミーカ、地球で言う所の兵隊アリというやつです」
「なるほど」
『ESF諸君、予定通りに兵隊アリは君達で対処を頼む。こちらの雑魚は引き続き我々に任せてくれ』
「りょーかいりょーかい!」
ザ・ナイトからの通信を皮切りに、彼らの戦闘も始まった。
この場所は名前に“森”とあるように、木々が多く生えている。だがスナイパーライフル等の大型兵装を取り回せない程では無かった。
陣形は以前と大して変化していない。
アルゴンとフェンサーが共にバスターソードを用いて敵を薙ぎ払い、グラファイトが狙撃で支援する。
カテゴリー2機の大群という事もあり多少は手こずった彼らだが、量産性に重きを置く兵隊アリは大した驚異とならない。
ジェムズとESFの戦闘はほぼ同時に終了した。
「何もない森……にしては敵が多い。クレナはこれをどう見る?」
「楽観的に考えるなら敵が沢山迷ってたって所じゃないかしら」
「ほう?」
「でもアリの方は“何かを守る”為に出てきたって気がするわ。……当たりだったんじゃないかしら」
こうした戦闘はこの後にも度々発生したが、大半は取るに足らない相手であった。
だがその中には時折、異様に強い相手や見慣れない相手等も混じっている。
――この先には、“何か”がある……
戦闘の度にそう確信していく彼らは、調査を続けた。
【修正箇所の報告】
3章タイトルの変更(ワールドクエスト→ワールドミッション)
一部敵の名前を変更(ボール→クルス/ラビット→レプス/ドック→カニス/キャット→フェレス
バード→アウェス等……)
19話までの全話を修正(一章の6話は結構見やすくなってるかも)




