第20話 エイジとアベンチュリン
いくつかの戦闘へ向かい、大きく損傷を受けたアルゴン。
その機体は優秀な整備士であるネイトの手により修理完了となったが、パイロットであるジンはかなり怒られてしまった。
そんな彼はこの日も懲りず、再び戦場へと向かう為にCAへとログインしている。
「おはよーう、進捗どうですか」
「おはよう、ジンさん! 言われてた通りに整備は終わらせておいたよ」
「サンキュー。……色々悪いな、本当に」
「ん~? あー、まぁ確かに大変だけど……それだけアルゴンの戦闘データが集まるんだから、良いって事よ!」
「助かる。んじゃ、いっちょ行ってくるぜ」
「いってらっしゃ~い。……今度は派手に壊さないようにっ!!」
「ん、善処する」
本当であればジンも無茶はしたくない。
だがグラファイトを助けたあの時は他に手段が無く、状況も安全な戦闘を許さなかった。
そして今もリンクレベルを3に上げないと次のイベントに参加出来ないという事情があり、無理を承知でネイトに早急の修理を頼み込んだのである。
幸いにも彼女はは優秀であり、その望みに応えてくれた。だが流石に疲労の色が顔に浮かんでいる。
帰宅するネイトを見送ると、ジンはルブルムへと降下した。
――――――――――――――――――――
ESFメンバーにはそれぞれ予定が存在した為、ジンはクライン工房と呼ばれるCA生産工場に一人で降り立った。
何でもクレナは会社の用事に、ユウトとタイトはユニオンでの戦闘に向けてグラファイトの調整へと向かっているらしい。
故にこの日、この場所で戦うのはジン一人……では無かった。
Z-ONという企業が管理する区域で待機するジンの隣には、クレナとはまた違うカラーリングのフェンサーが降下していた。
「おっすー、白いフェンサーに乗ってるって事はアンタがエイジ……で合ってるよな?」
「あ、合ってます! どうもこんにちは、アナタがジンさんですよね? 僕がエイジで……」
「ワタシがエイジのバディをやってるアベンチュリン。気軽にチュリンとでも呼んでくれたまえ」
「ご丁寧にありがとうございます。私はアルゴンのバディ、アルと申します」
「「よろしく!!」」
「おっ、おう……息ピッタリだな」
「中々元気の良い方々ですね」
「「いやぁ、それ程でも……あるかなー! 」」
「いや、マジで仲良いなお前ら……」
彼らはジンが野良でミッションを受けるに当たり『一人での戦闘は厳しい』と予想したクレナから紹介された人物だ。
ジンとしても誰も一切知らないの相手よりは、多少でも知り合いと繋がりのある人物と手を組みたいと考えている。
つまり特に異論が出る事は無く、仲介者不在のままエイジとジンは戦闘を行う事となった。
ちなみにジンから見たエイジは黒髪の爽やかイケメンフェイス、チュリンは緑色の長髪で糸目といった印象だ。
ぴっちりとしたボディスーツを着ているチュリンだが、エイジは“ソッチ系”の話題が苦手で初心な青年らしい。
彼は周囲を警戒しながら『チュリンの服装は自分が選んだわけじゃない』と言っており、当のチュリンも『私が選んだ』と言っていた。
何でも『そうすれば面白いかなーと思った』そうなのだが……当初のエイジは恥ずかしさから、サブモニターを見る事すら出来ない程に初心だったようだ。
チュリン的にあの選択は失敗だと思っているらしい。
「でも最近は慣れてきたみたいで、ワタシの事を結構見てくれるんだよね~。……いやーからかう甲斐があるってモンだよ! 」
「チュリン、キミって奴は……」
「何と言うか、そっちも中々……苦労してそうだな……」
「何ですかマスター、私に何か不満でもあるんですか?」
「いえっ、何もございません! ……んな事より、さっさと敵を探すぞ!!」
「逃げましたね」
「逃げたわね」
「逃げるんですね」
「……わりぃかよ!!」
和やかな会話を繰り広げるジンとエイジだったが、そうした雰囲気もそこそこに戦闘の幕が上げられた。
この辺りではルベル・クルスと言う、ボールの強化型が多く出現する傾向にあるらしい。
赤いカラーリングとボール以上に素早い動きが特徴であり、今回もその例に漏れずその強襲型が集団で襲ってきたのだが――
「――ハッ!!」
「おいおい、マジか……」
エイジは一回剣を振るうだけで三機の敵を倒す程の、圧倒的な動きを見せていた。
ジンも負けまいと努力をするのだが、彼の殲滅速度には追いつけない。
「何だお前、スゲェな……」
「僕なんてまだまだですよ! ……っと」
そう謙遜をするエイジだが、集団の七割は彼が倒していた。
だが彼が憧れる人物……ルナクスは、これ以上の戦果を上げるらしい。
「もうあの人は凄いんですよ! こう……ビューンって行ったと思ったら、ズドドドーン! って感じで!!」
ジンも何度か話に聞くその人物は、以前RBSで特集されていた通りにメビウス死守戦で大きな戦果を上げたリンカー。
そして現在のCAにおける最大級ユニオン、ファントム・エクスの盟主を努めているらしい。
彼の駆るルクシオンが一振りすれば、数十機もの敵が地に伏す。
彼の居る戦場は勝利が約束されたも同然……と、言われているらしい。
「とてつもないな……」
「ですよね! 凄いですよね!! 憧れちゃうな~……」
「あぁ、だが――」
――いつか、そんなプレイヤーを超えてみたい
ジンの心には畏敬の念と同時に、そうした欲望の炎が灯った。
彼は久しぶりの感覚に笑みを浮かべる。
「――さっさと片付けるか!」
「はい!」
「了解です、マスター」




