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赤い星のリンカーネーション  作者: 鳥皿鳥助
二章 その名は星を越える戦士たち
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第16話 ラウンド3






 グラファイトが調整を受けている頃、尚も続いている戦闘ではアルゴンが不利な状況だった。


「左腕損傷率50%超。左腕出力の大幅な低下が予想されます、注意して下さい」

「――ッチ、流石に受ける場所が悪かったか……」


 機体の損傷度を表示する右サブモニターは、ユウトと初めて会った時のように赤く染まっている。


 ニガーフェレスの攻撃を受け止めた左腕には多大な負担がかかったらしく、いくつかの重要部品が吹っ飛んだようだ。

 こうしている今も損傷部からは、機体の動力源である赤い粒子(クァドラン粒子)が漏れ出している。


 ジンは素早く決断を下した。


「左腕をパージしろ、パーツは後で拾えば良い!」

「了解、左腕パージします」


 すると肩の付け根から左腕が外れ、粒子の流出も収まった。

 ただの重りとなってしまった左腕は適当な所に捨て置き、ジンは戦いを続けた。


 ニガーフェレスに撤退の意思は無く、ジンも同様に撤退の意思を持たない。故に戦いはまだまだ続いた。

 左腕を失い戦力が大幅に落ちたアルゴン。そのパイロットであるジンが次の行動、今後の行動を考えているとバスターソードが飛んできた。


 それを簡単に掴んだジンが剣を投げたであろう方向へ向くと、そこにはクレナの赤いフェンサーが立っている。


「ジン、手を貸すわよ! あと忘れ物!!」

「助かる! が、何でこういう時に限って忘れるかねぇ俺は……」

「マスターが急ぎすぎていたからです」

「うっせー、わーってるわい!」


 戦闘において武器の持ち忘れは大問題であり大きな不安要素なのだが、ジンには頼れる仲間が居る。

 大した不安を抱える事も無くクレナと共闘し、数十機のボールを撃破していった。

 だがそれでも、彼らは未だにニガーフェレスの元には辿り着けていない。


 受けたのが左腕で良かったが、片腕で重量武器(バスターソード)を使うのはかなり厳しい。

 痺れを切らしたジンが一か八かの突撃を仕掛けようとしたその時、彼らの元には待ちかねた人物からの通信が入る。


『お待たせしました、ジンさん! 大丈夫ですか?』

「ふぅ、ようやく来たか。……こっちは大丈夫だから気にするな! お前はさっさと狙撃ポイントへ行け!!」

『はい!』


 前と変わらずフードを被っているユウトだが、布に隠れるその顔は良い表情に変わっていた。

 そのあまりの変わり様に、クレナは思わず驚愕の声を上げてしまう。


「ジン……アンタ一体何を吹き込んだの?」

「別に? クレナの時と変わらねぇさ。俺の信念を話してただけだよ」

「……なるほど、またバカによって一人の少年がバカに仕立て上げられたって訳ね」

「ア゛ァ゛!? それ自分をバカって言ってるようなモンだぞ、コンニャロー!!」

『あの……ポイントに到着したので、狙撃を開始しても良いですか……?』

「「どうぞどうぞ」」


 じゃれ合うジンとクレナの二人だったが、ユウトはその流れを断ち切った。


『では、さっきまでより前に出て戦って下さい。……援護はしっかりするので!』

「「了解!!」」


 ユウトの指示通りにアルゴンとフェンサーは突撃を始めた。

 (ニガーフェレス)はそれを好機と捉えたらしく、手下(クルス)に囲ませた。


 だがその包囲網は完成せず、アルゴンとフェンサー両機の横を掠める二発の銃弾により妨害される。


『……ふぅ、腕は落ちてないかな』

「五枚抜きなんて……凄いわね」

「あぁ……。俺達も手柄を取られないようにしなきゃな!」

「そうね」


 オクトライフルの威力は凄まじい物であり、たった二発で十機のボールを撃墜した。

 そうした威力を叩き出すオクトライフルだが、一応は静音性も考えて設計されている。それでももはや砲弾とでも言うべき威力の代償として、轟音を鳴り響かせる特性を持っていた。


 そして今回の敵であるニガーフェレスは聴覚に優れている。

 音の響き方や射角等、いくつかの情報からグラファイトの狙撃ポイントは簡単に割れた。


 手下で押さえきれるアルゴンやフェンサーよりもグラファイトが驚異だと感じたらしく、ニガーフェレスはグラファイトを目指して動き始めた。


「ユウト、援護いるか?」

『いいえ……大丈夫です!』

「……分かった。メインディッシュはお前に任せる!」






 ――――――――――――――――――――






 タイトがユウトの為に作り上げたグラファイトは、近接戦闘を苦手としている。

 セッティングによっては近接戦闘も可能だが、近距離での戦闘が苦手ならそもそも近づかれる前に撃ち抜いてしまえば良い……ユウトはそう考えた。


 そして狙撃能力を向上させた今、前のような近接戦闘は難しいだろう。


「ツグミ、残弾数は?」

「マガジン内は六発、タイトくんから貰った予備のマガジンも合わせれば一四発ね」

「ありがとう。……六発で仕留める」

「あらあら、面白くなってきたじゃない。私も頑張らなきゃね」


 スナイパーライフル(オクトライフル)を持って完成した黒い機体、グラファイト。

 丘のように小高い場所から戦場を見下ろすその機体に対峙するのは、全身金属質だが生物的な造形も併せ持つニガーフェレス。


 ユウトは近づくその相手(黒猫)へ素早く二発撃つが、左右にステップを踏む事で回避された。

 今度は三発撃つが、それらも同じように避けられる。


「くっ……」


 腕は鈍っていなくとも、上達はしていない。

 あそこまで素早く、そして本物の獣のように動く相手へ鉛玉を当てるのは至難の業だろう。


「――ふぅ」


 ユウトは深呼吸をして息を整え、再び狙いを定める。

 距離はどんどん縮まり、武器を構える為に押し続けている中指は感覚が無くなる程に力が入っている。


 グラファイトとニガーフェレスが接触するまで、残り一五メートル。


 十メートルを切ってもユウトは撃たない。


 残り五メートル、そのタイミングでニガーフェレスが大きく跳躍する。


「今だッ!!」


 これはユウトが初めて計算では無く、勘を信じて行った狙撃だ。

 そもそも検証をしている暇も、計算をする暇も無いのだが。


 グラファイトは素早くバックステップをすることでニガーフェレスの攻撃を避け、ユウトはその代わりとばかりにオクトライフルのトリガーを引いた。


 轟音と共に放たれた弾丸はニガーフェレスへ命中し、その動きを停止させる。


「リロードッ!」

「はいはーい♪」


 攻撃を受けた獣が死んだふりをする……というのは、よくある話だ。

 これほど精巧に“獣”が再現された相手であれば、そこも恐らく再現されている。


 そう考えたユウトは素早くリロードさせ、ニガーフェレスへもう一発打ち込んだ。

 案の定ニガーフェレスはまだ生きていたらしく、グラファイトへと飛びかかる寸前を撃ち抜く事でようやく活動停止した。


「…………はぁ、何とかなった」

「やったね、ユウトくん!!」

「うん……皆にはお礼を言わなきゃな……」






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