7/13
天国
あれから彼女のことが忘れられない。寝ても起きても彼女のことが頭の中を占領していた。とてもじゃないけれど他のことに集中なんてできる状態じゃない。それでも周りにはこのことを悟られないようにパフォーマンスを落とすわけにはいかなかった。恋愛感情というのは私生活の邪魔だと分かっている。それでも手放すことはできなかった。彼女のことを考えているときが一番幸せだと気付いてしまったから。それでも自分から彼女に気持ちを伝えることはプライドが許さなかったし、親同士が決めた婚約者がいる以上彼女と結ばれることは決してない。だからこの想いは心の奥底に静かしまうことにした。
「朔?」と、不意に声をかけられて意識が現実に引き戻せられた。優花が心配そうにこちらを見ていた。そう言えば学校内の図書館で一緒に勉強をしていたんだった。
「ごめん朔、ここの所もう一度教えてくれない?」
「だからそこは微積だから―…」
ああ、こんな幸せな時間がずっと続けば良いのに。優花に気持ちを伝えられなくても、彼女に触れられなくても構わない。ただ今この瞬間、時が止まってしまえばいいのに。




