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兆候1
「はいこれ。」
朔は自己紹介の書かれた紙を少女に渡した。本当は紙が見当たらなかったので教卓の引き出しを勝手に漁ってとっただけだがそれを他人に公言できる程彼のプライドは低くなかった。今井優花というこの女は他の生徒と違ってよく話しかけてくるが、こういう人間は大抵思惑があって近付いてくるものだ。それにしては大分隙があるような言動をするのが気掛かりだが、きっとそれは頭があまり良くないからなのだろうと彼は片付けようとしたが、偏差値65の学校にそんな馬鹿が居るとも思えないのでもしかしたら本当に他意が無いのかもしれない。最も、それでも高校生の言動はきっと大人から見れば隙だらけな言動がほとんどだと思うが。
「そう言えば橘さん。」
「何?」
「今後また連絡が必要なことがあるかもしれないから、LINEとか交換しておかない?」
…その日彼は自分のプライドに負けて女子からの誘いを断ったことを心底後悔し、自室で静かに泣いた。それと同時に優花に対して他の女とは違う感情を抱き始めていたが、彼自身もまだ自覚していなかった。




