価値2
その日も利子は母親の帰りを待っていた。母は父の後妻だった。腹違いの姉が一人いた。姉は利子と違って優秀だった。父の期待通りに優秀な大学の医学部に首席で入学していた。中学受験で失敗した利子と姉では明らかに態度が違ったが利子はそのことに対しては仕方がないことだと思っていた。才能のせいにして現状を嘆くだけの人間には成りたくなかったから。それに姉はそのことで利子を見下すような態度を取ったりはしていなかった。年の差というのもあったのかもしれない。ただ6つ上の姉、優子は腹違いの妹にいやな顔一つせずこころから可愛がっていた。利子に勉強を教えて利子の欲しいものを買ってくれた。
ぼんやりとそんなことを考えていると玄関の方で物音が聞こえて来た。利子の表情は明るくなり音のする方へ近づいた。香水と煙草の匂いをまとった利子の母親がそこにいた。喫煙者ではない母親が何故毎晩のように夜遅くに帰宅しては服から煙草の匂いがしていたのか、この頃の利子はそれが分かるほど大人では無かった。
「ただいま。夕飯はもう食べたの?」
「えっ…あ…一応…?」
利子は迷いながらもそう答えた。姉と違い出来が悪い利子は同じ食卓に着くことが許されなかった。だからいつもお金だけを渡されて自分でコンビニなりスーパーでご飯を買って食べていた。そのことを母親も知っていたはずだった。ただ母親はあまり賢くなかった。だからきっとそのことをもう忘れているのだろうと利子は思った。
「もう寝るから。」と母親は言って寝室に向かった。二階へ上がる彼女の背中を見て利子は小さく呟いた。
「お母さんにとって娘はカワイイ存在なの…?」




