番外編~従姉~
優花はその日眉間にシワを寄せながら廊下を歩いていた。提出物を口実に朔と接点を得ることには成功したがその後どうすれば良いのか分からない。勿論提出物を朔が出していないということも先生からお願いされたということもどちらも嘘だったが幸い運良くばれなかったというだけで連絡先を交換することには失敗してしまった。距離を詰めるのが早すぎたか?わずかなミスすら許されない。警戒されては怪しまれてしまってはその後の人間関係を維持することが難しいと優花は分かっていた。ブツブツと独り言を呟きながら歩いていると不意に懐かしい声がした。
「…利子ちゃん?」
全身の血の気が引き背筋が凍った。恐る恐る振り返る。そこには九条利子の従姉である九条すみれがいた。幼い頃は仲が良かったが年齢が上がるにつれて不出来な娘である利子は次第に父親のメンツを損ねるという理由で親戚付き合いを制限されるようになっていた。優子と同様にすみれも優秀であったため賢い学校に行ったとは聞いていた。本来、偏差値が10以上違う優花と違って教団のコネなどでは無くきっと彼女は実力でこの学校に入ったのであろう。しかしその事実が優花を余計に惨めな思いにさせた。
久しぶりに優花の頬が一瞬だけ緩んだ。しかしすぐに今自分が利子では無く優花であるということを思い出すと冷たい目で目の前の少女を突き放した。
「すみませんがどなたですか。私は利子という人物ではありません。私の名前は今井優花です。」
「え…でも…」
「しつこいようなら先生に言いつけますよ。」そう言って優花は振り返ることなくその場を後にした。
愛ビーに戻ると優花は教祖と繋がりの濃い信者に言った。
「以前の私を知っている人物が近くにいるの。計画の邪魔だから排除しておいて。」そういいながら机の上に参考書を広げた。本来の実力以上の学校で優花は授業について行くのがやっとだった。勉強と朔を始末する方法以外考える余裕など彼女には無かった。
その後、風の噂で聞いた話ですみれは不慮の事故によって亡くなったそうだった。




