075「本題(2)」
「それにしてもジュリアン様⋯⋯」
「何だい、クロフォード?」
「私やマイルスに会ったのは今日初めてですが孤児院へは1ヶ月ほど通っていたのですよね? ということは我々2人が孤児院にいないタイミングを見計らって訪問されていたのですか?」
「もちろん。しかも相手はクロフォードだからね。そこは入念に計画して動いていたよ」
ジュリアンがクロフォードの追求をあっさりと認めると、クロフォードが大きくため息をつく。
「なるほど。よ〜くわかりました。ただ私が今聞きたいことはそのことではなく⋯⋯いささか性急過ぎるなと思ったのです」
「⋯⋯うん」
「いくら放蕩息子を演じて動きやすくなっているとはいえ、こうも同じ場所に通うというのはそれなりにリスクがあります。そして、それをわからないジュリアン様でもないでしょう。ということは、何かしら《《急ぐ理由》》があるのですか?」
クロフォードがグッと「ちゃんと話せ」と言わんばかりにジュリアンに視線を送る。
「さすがだよ、クロフォード。君の言う通り、私の性急過ぎる行動もすべては《《ある理由》》のためだ」
「《《ある理由》》⋯⋯?」
「聖王⋯⋯つまり父上はもう長くないかも知れない」
「⋯⋯っ?!」
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「そ、それは⋯⋯どういう⋯⋯」
「そのままの意味だよ、クロフォード」
「そ、そんな話、まったく聞いたこと⋯⋯」
「もちろんだよ、マイルス。このことは私たち家族と一部の関係者しか知られていない事実だ」
「そ、そんな⋯⋯」
ジュリアンの言葉を聞いてショック状態で棒立ちのまま体を震わせるマイルス。
クロフォードもまたその事実を聞いてショックを受けるも、すぐにジュリアンに話を薦める。
「話してください、ジュリアン様⋯⋯⋯⋯すべてを」
「わかった」
そうして、一度乾いた喉を紅茶で潤し一息ついたジュリアンが口を開く。
「聖王リカルド・ハルシュタインは表向きは精力的に活動しているように見えるが、実際は体力回復薬を用いて何とかこなしているに過ぎず、しかも滞在時間を短くしたりしてするなどして、公務以外の時間は常に体を休めるよう調整している。しかし、最近ではそれもかなり⋯⋯キツそうなんだ」
「そうでしたか。ですが正直そんな話は初めて聞きました。聖王はずっと前からご病気で体調を崩されていたのですか?」
「いや違う。今のような体調になったのはほんの1年くらい前からだ」
「⋯⋯1年⋯⋯前?」
そこで、クロフォードの体が一瞬ピクッと反応する。すると、
「何か気になることでも⋯⋯⋯⋯クロフォード・フィアライト」
ジュリアンが《《わざとらしく》》フルネームで声をかけた。
「ま、まさか、何者かの⋯⋯手による⋯⋯」
ジュリアンが発した『1年前』という言葉を聞いて、滅多なことが頭をよぎったクロフォードの口から《《ある可能性》》を含んだ言葉が出る。
「まだ確証はないが、その可能性は非常に高いと見ている。実際父の体が1年前から不自然なまでに急速に衰えてきたのだ。私個人としては間違いないと思っている」
「そ、それって⋯⋯⋯⋯『聖王暗殺』ってことですか?!」
マイルスがたまらずジュリアンにはっきりとその真意を確かめようとする。しかし、
「バカ者。はっきりと言葉を出してどうする! せっかく私もジュリアン様もあえて言葉を伏せていたというのに⋯⋯」
「あ⋯⋯。す、すみません!」
クロフォードに一喝されたマイルスがジュリアンに深々と頭を下げ謝罪する。
「いえ、大丈夫ですよマイルス。それよりも私が君たちに伝えたいのは『それだけ聖王の身が危険である』ということ。それと⋯⋯」
「「それと?」」
「『預言の聖女』様であるアナスタシアの力が借りたい」
「「⋯⋯!」」




