073「本題、その前に」
「僕はポテトフライとは関係なくアナスタシアと友達になりたい」
「これが僕の本当の気持ちだ、アナスタシアっ!!」
俺はジュリ君に「アナスタシアとは本当に友達になりたいんだ」という熱烈ラブコールを受けた。そんなジュリ君の真剣な表情に俺は彼の本気を感じ、
「ありがとう、ジュリ君。私も同い年でジュリ君みたいに話の合う子は初めてだから、できれば友達に⋯⋯なりたい」
「! じゃ、じゃあ⋯⋯」
「う、うん。私、ジュリ君を信じるよ」
「アナスタシア!」
そういうとジュリ君が机越しに俺の手を握ってきた。
一瞬ドキッとして思わずあたふたしてしまう。
ジュリ君の本心を聞いた直後ということもあって尚更だ。
そんな時だった。
「⋯⋯こほん。アナスタシア」
「あ、はい。孤児院長!」
俺は孤児院長の言葉で一瞬で我に帰った。
同時に孤児院長は俺の手を握るジュリ君の手を自然と引き剥がす。
「孤児院長?」
「アナスタシア、調理場の片付けや明日の準備などまだであろう?」
「いえ、さっき孤児院長室に来る前にリッツに事前に指示を出していま⋯⋯」
「《《まだであろう》》?」
ひっ!
あ、これ有無を言わさず従えムーブや。
「そ、そそ、そうでしたぁ! 私てっきりリッツに指示を出したつもりでしたが勘違いでしたぁ!! ジュリ君⋯⋯いえジュリアン第二王子様、突然ですがここで失礼致しますぅぅ!!!!」
そういって、俺はスタコラサッサとその場を後にした。
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アナスタシアが孤児院長室からスタコラサッサと逃げ出した後、
「ふふ、本当に可愛いよねアナスタシアって」
そういって、またもや不敵な笑みを浮かべるジュリアン。
そんなジュリアンの笑みなど意も解さない孤児院長が、
「それでジュリアン様、本当の目的をお聞かせ願えますか?」
と「早く本題を聞かせろ」とでも言わんばかりの表情で声をかける。
「やだな〜、本当の目的って⋯⋯。それじゃあまるで僕がアナスタシアに嘘をついているように聞こえるじゃないか」
そんな孤児院長の問いにジュリアンがおどけた返事を返すが、
「いえ別にそのようなことがないのはわかっています。しかし、だからといってあれが本題でないこともまた自明の理」
「なるほど。さすが『フィアライト家の至宝』⋯⋯といったところですか」
「⋯⋯何を仰っているのかよくわかりません」
「ふふ、そういうことにしておくよ。さて、そうだね。君の言う通り本題はこれからだ。そして、その本題についてももはや察しているのだろう?」
「さあ?」
「ふふ、わかったよ。僕の口からちゃんと言うよ。彼女⋯⋯アナスタシアの、いや『預言の聖女』のことだ」
「「⋯⋯」」
ジュリアンの発言に場が再びシーンと静まり返り、さらには重い空気と緊張の糸がピンと張る。
「うん。君ら二人がそんな厳しい表情で無言のリアクションだとそれこそ僕の言葉の意味を理解しているって証拠になるよね? まーでも今はそんなことを話したいんじゃない。わかるでしょ?」
「ええ、理解しております」
「うん、ありがとう。話が早くて助かるよ」
クロフォードのすぐの返事に満足するジュリアン。
「さて早速本題だが⋯⋯あ、その前にクロフォード!」
「はい、何でしょう?」
「君は僕のことを《《ちゃんと知ってる》》?」
「《《ちゃんと》》? それは一体どういう⋯⋯」
「惚けなくていいからね? これはこれから話す《《本題》》に関わってくるから」
「なるほど、わかりました。では、失礼ながら私が周囲から聞く理解では⋯⋯⋯⋯ジュリアン第二王子は普段から何を考えているのかわからず、さらにはいつも城を抜け出しては城下町や他の町や村などへ行くなど王族とは考えられないような奇行が目立つ無能な放蕩王子、といったところでしょうか」
クロフォードの淀みのない流暢な言葉に思わず全員が呆気に取られる。しかし直後、
「はっ!? き、貴様ぁ〜! ジュリアン様に対して何という無礼な発言⋯⋯」
「ヘッセン、大丈夫です。ていうか、今のは僕がクロフォードに命令して言わせたようなものです。それくらいわからないのですか?」
「あ、いや、それは⋯⋯」
ヘッセンがジュリアンからまさか苦言を呈されるとは思っていなかったのか、ジュリアンの言葉にあたふたとする。
「まーいいでしょう。でもこれから僕の護衛騎士を目指すのであればライアンのようにもう少し場の理解をお願いしたいものです」
「し、失礼致しましたっ!!」
そうしてヘッセンがすごすごと後ろへ下がる。
するとその下がるタイミングで横から「バカだな〜」とライアンがボソッと告げるとその言葉にヘッセンが一瞬眉間に皺を寄せる。
しかし、すぐにライアンが「ま〜お前のその融通の効かなさは武器でもあるけどな」とまさかのフォローが入ってまたあたふたとするヘッセン。
そんな護衛の二人がイチャイチャ(?)していることなど気にもしない、とでも言うように場の空気はジュリアンの支配下の元、動いていく。
「別に怒るつもりは毛頭ないけど、それにしても本人を目の前にして、よくもまあそこまで淀みなくはっきりと言えるものだね」
「⋯⋯ジュリアン様の許可をいただいたので」
「あはは。やっぱあんた最高だよ、クロフォード。さすが『フィアライト家の至宝』といったところだね!」
「(ピクッ)」
「あ、もしかして《《それは》》あまり言われるのは好きじゃない?」
「そう、ですね」
ジュリアンの『フィアライト家の至宝』という言葉に一瞬反応したものの、それは本当にちょっとした反応で、それは普通なら誰もが見逃すほどのもの。
しかし、そんな小さい反応でさえも見逃さないジュリアンの洞察力に冷静を装いながらも内心は脅威に感じたクロフォードは、ジュリアンの評価をさらに一段上げ、警戒心を強めた。
「でもよかった。それなら話が早い。ちなみにマイルスもクロフォードと同じ認識かい?」
「は、はい!」
「ありがとう。それじゃあ早速、本題の話を始めるとしよう」
こうして、孤児院に出向いた理由、そして預言の聖女であるアナスタシアにどういう意図を持っているのか、といったことがジュリアン第二王子の口から直接明かされることとなった。




