072「ジュリアン第二王子(2)」
「⋯⋯ここに来たのはポテトフライについて興味が湧いたからというのは本当だし、もっといえばポテトフライという商品の秘密を知りたかった、というのが本音だ」
「「ジュ、ジュリアン様!」」
「いいんだ。僕が話すと決めたんだ。止めないでくれ」
「で、ですが⋯⋯」
「頼む。ライアン、ヘッセン」
「⋯⋯はぁ、わかりました」
「お、おい、ライアン!」
「しょうがないだろ。こうなったジュリアン様は止められない。お前だってわかってるだろ」
「し、しかし⋯⋯」
「ヘッセン。あきらめろ」
「!⋯⋯⋯⋯わ、わかりました」
ジュリアンの言葉に度肝を抜かれた護衛のライアンとヘッセンが思わずジュリアンの言葉を遮る⋯⋯がジュリアンがその遮ろうとする二人をさらに止める。
そんな3人のやり取りをさも苦虫を噛み潰したような苦い表情で眺めるのは孤児院長クロフォード・フィアライト。
ちなみに現在、孤児院長室は何とも重い緊張感が漂っており、そしてその空気を察して一人戦慄するのは孤児院の世話人頭マイルス・レッドフォード。
(おいおい、何だよこの重い空気は⋯⋯! ていうか、なんでジュリアン第二王子がこんなところにいんだよっ?!)
世話人頭をしているマイルスの正体はレッドフォード伯爵家の嫡男。次期当主。そしてクロフォードのフィアライト侯爵家とレッドフォード伯爵家は主従関係があり、マイルスはクロフォードを支える側近。
そんなマイルスは孤児院にジュリアン第二王子がいるという現実がいまだ受け止められないでいたが、しかし必死になって現状を把握しようと思案する。
(さっきジュリアン様は孤児院に1ヶ月通っていると言っていた。そして、そのことは表情を見る限りクロも把握していないと思う。ということは、フィアライト家自体も第二王子のことは⋯⋯把握していない?)
マイルスは、どこまでもがジュリアン様の独断専行なのかどうにも図ることができないでいた。
(いずれにしてもジュリアン様の話を聞いてから⋯⋯か)
ジュリアン第二王子の狙いや思惑などあまりに不透明な状況ということで、脳みそをフル回転させるクロフォードとマイルスだったが、クロフォードの横に座るアナスタシアにおいては、
(⋯⋯ジュリ君)
と、ただただジュリアンの言葉にしか意識が向いておらず、クロフォードやマイルスのような危機感や警戒感は1mmも感じていなかった。そんな中、
「ごめんね、アナスタシア。話を中断してしまって」
ライアンとヘッセンとのやり取りを終えたジュリアンが、アナスタシアに一言声を掛けるとまたすぐに話を始めた。
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「きっかけは、最近貴族で流行っているというポテトフライの噂を聞いたのが最初で、それからポテトフライの原料となっているこの野菜は一体何なのかというのに興味が湧いてね。そしたら元々これは平民街から流行ったもので、さらに調べるとそれを最初に作って販売したのは孤児院だと聞いて⋯⋯僕は衝撃を受けたんだ!」
「ひあっ!?」
ダン!⋯⋯とジュリアンが机を叩きながらアナスタシアに向かって前のめりになる。そんな熱量マシマシのジュリアンに驚き、思わず変な声が出てしまったアナスタシア。
「ご、ごめん。驚かせてしまったね。ふぅ⋯⋯でそこで僕は思ったんだ。ただでさえ教育を受けられない孤児院の子供達がどうやってこんな美味しいものを作ったんだとね。さらにはポテトフライの原料をどうやって見つけたのかとかね」
「⋯⋯」
「でも、孤児院に通いながらアナスタシアと話していく内に気づけばアナスタシアと話したいが為にポテトフライをダシに通っているっていう⋯⋯まぁ何とも変な感じになっちゃったんだよね、あはは」
「⋯⋯ジュリ君」
アナスタシアは最初ジュリアンがそんなことを聞いてきたことを覚えていた。
しかし、ジュリアンはその最初だけでそれ以降はポテトフライの原料のことなど聞いてくることはなかったことを覚えている。
「僕はね、アナスタシア⋯⋯同い年で君のような価値観の合う子と出会ったのは初めてなんだ。アナスタシアと話しているといつも時間を忘れちゃうほど楽しいんだ。それってアナスタシアも同じでしょ?」
「えっ?! え、えーと⋯⋯その⋯⋯う、うん」
「だよね!」
アナスタシアの肯定の返事を返すと、ジュリアンがニコっといつもの爽やかスマイルが飛び出した。
「だから僕はポテトフライとは関係なくアナスタシアと友達になりたい。ただそれだけだ! もしそれでポテトフライのことを勘繰るのはやめてほしいというのであればそれでも構わない! これが僕の本当の気持ちだ、アナスタシアっ!!」
「っ!?」
ジュリアンの気持ちの乗った言葉に思わず笑みが溢れそうなほど嬉しい気持ちが込み上がるアナスタシアだったが、同時にそんな気持ちになる自分に戸惑い、どうしたらいいのかと混乱するアナスタシアがそこにいた。




