070「ある男の子との出会い(4)」
「あ、あなたは⋯⋯⋯⋯ジュリアン《《様》》!」
「え? ジュリアン⋯⋯《《様》》?」
孤児院長が顔を真っ青にしながらジュリ君に向かってそんな言葉をかけた。すると、
「やあ、クロフォードさん。あ、ここでは『孤児院長』⋯⋯かな?」
「え? ジュリ君?」
そこには普段とは違う《《含みのある笑み》》を浮かべるジュリ君がいた。
「な、なぜ、あなたがここに⋯⋯」
「僕はただスフィンベルクで美味しいと評判のポテトフライの焼き立てが食べたくてここに来ただけだよ? あとクロ⋯⋯《《孤児院長》》様、何か誰かと勘違いしているようですが僕は『ジュリ』という者で《《ただの》》隣町の商家の後継ぎ息子ですよ? そんな一平民の子供に《《様》》付けだなんて誰かと勘違いしているのではないですか?」
「! そ、そうだな。どうやら私の⋯⋯勘違いだったようだ」
「よかったー、ありがとうございます! ちゃんと勘違いだと《《認識》》してくれて」
「あ、ああ」
「⋯⋯」
な、なんだ? 何なんだ、この2人の会話はっ!?
ていうか、何かジュリ君の雰囲気が一瞬変わった?
いつもの『爽やか笑顔』がキャッチフレーズのジュリ君の笑みが邪悪に感じたのだが?
それに孤児院長の態度も一瞬変な感じだった。あれは一体⋯⋯?
「⋯⋯ふぅ」
するとここで孤児院長が一度大きく深呼吸をする。
するとさっきまでの動揺した表情が完全に消え、いつもの⋯⋯いやいつも以上の堀深な眉間に皺寄せ顔に変わった。
「そうだな。どうやら私の勘違いのようだ」
「よかったー」
「では、改めてだが君がよければぜひこれから私の部屋でお話しでもどうかな? な〜に、君は《《商家の後継ぎ息子》》なのだろう? であればポテトフライやケチャップについて興味があると思うのだがどうだろうか?」
「えっ?!」
孤児院長が突然ジュリ君にそんなことを提案したことに驚いてつい声を上げてしまう俺。
いや、なんでっ?!
いくら商家の後継ぎ息子だからって孤児院長が子供に対してこんなこと言うのは普通じゃない!
それにポテトフライの話だって、あれだけ外部からの接触には十分注意するよう言ってた張本人である孤児院長が自ら外部の人間を孤児院に招くだなんて⋯⋯絶対にありえない!
それに孤児院長はジュリ君のことを知っているようにも見えた、あとジュリ君も。てことは2人は顔見知りってことになるがそれはそれでおかしい。
なんせ孤児院長は隠しているが本当はこの領都スフィンベルクの領主でフィアライト侯爵家当主の息子なんだぞ?
そんな貴族⋯⋯いやただの貴族ではない。貴族の中でも上位に位置する侯爵家と関係がある一平民なんて、そんなの聞いたことがない!
でも、孤児院長は一平民であるジュリ君を今目の前で手放しで招いた。
この2人の関係性は一体⋯⋯?
そうして、俺が一人脳みそをフル回転させてうんうん考えていると、
「え? いいんですか! いや〜嬉しいな〜、ぜひお願いします!」
と、孤児院長の提案に即答で乗ってきたジュリ君。すると、
「わかった。ではアナスタシア、君も来なさい」
「え?」
ここで孤児院長からまさかのご指名。
「当然だろう? ポテトフライの話なのだからな」
「⋯⋯はひ」
孤児院長に強制連行されました。
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——孤児院長室
ドナドナされた俺の目の前にはジュリ君、そしてその横には孤児院長がソファに座っている。
そして、ジュリ君の真後ろには護衛のライアン君とヘッセン君が直立不動で立っており、孤児院長の後ろにはマイルスさんが立っていた。
部屋に入ってもすぐに会話が始まることはなく、シーンとした異様な静けさが広がっていた。何というか「先に動いたら負け」みたいな? そんな感じだ。
そんな静けさに包まれる空間にコンコンと扉をノックする音と「失礼致します」と言って入ってきたのは年長組の中でしっかり者のシエラとヴィラの二人。
彼女らは部屋に入った瞬間一瞬「ひっ!」とでも言いたそうな顔をするも何とか取り繕い、お茶を出して出て行った。
わかる。俺だって逆の立場なら同じリアクションをしただろう。
それだけこの部屋には如何ともしがたい異質な空気が流れているのだ。
そんな独特な緊張感漂う空間にて、孤児院長が初手からとんでもない爆弾を投下してきた。
「では、いろいろと話を聞かせていただけますでしょうか⋯⋯⋯⋯ジュリアン《《第二王子》》」
「え?」
ジュリアン⋯⋯《《第二王子》》っ?!




