069「ある男の子との出会い(3)」
隣町の商家の跡取り息子ジュリ君と出会って1ヶ月が過ぎた。
あれから彼は週2回——閉店間際のタイミングで孤児院にやってくると、俺の分も一緒にポテトフライを買っては「一緒に食べましょう!」といって外テーブルで一緒に食べるようになっていた。
もちろん最初は遠慮していたが、ジュリ君や一緒にいる護衛であり友人であるライアン君とヘッセン君たちと話すのは楽しかったのでジュリ君のお言葉に甘えさせてもらった。
そんな俺とジュリ君たちが外テーブルと楽しげに話しているのを見て混ざりたいと思っているのか子供達の興味津々な眼差しが遠目からひしひしと感じた。
するとジュリ君も他の子供達の様子に気づいたようで、するとジュリ君のほうから「君たちもここで一緒に食べようよ!」と子供達の分のポテトフライも買って一緒に食べようと誘ったのだ。
ジュリ君の誘いに最初は子供達は皆戸惑っていたが、そんな中リッツがズンズンとこちらにやってくると「それじゃ遠慮なく!」と言ってドカッと少々強引な感じで椅子に座りポテトフライを貪った。
その態度にジュリ君の友人で護衛のライアン君とヘッセン君は「「あ?」」と軽く睨みながら警戒した。
しかしジュリ君はそんな二人を手で軽く制して「うん、いっぱい食べてよ!」と失礼な態度を取ったリッツに対して快く歓迎した。
そんなことを言われると思っていなかったのか、リッツは「え⋯⋯? あ、えーと⋯⋯うん、ありがとう」とシューンとさっきまでの横暴な態度が鳴りを潜めるとそのあとはジュリ君と楽しく話すようになっていた。
いつものリッツならそんな失礼な態度なんて取らないから最初は「え? どした、リッツ?!」と戸惑いが大きかったけど、でもその後の態度を見たら俺は気づいたね⋯⋯⋯⋯リッツは同い年のジュリ君と仲良くなりたいんだと!
わかる、わかるよーリッツ!
であれだろ? その気持ちを相手に悟られるのはそれはそれで恥ずかしくて嫌なんだよな! だからこんな荒っぽい態度を取ったんだよな!
ふふん、リッツ愛い奴め〜!
そんなリッツを快く受け入れたジュリ君を見ていた子供達もそれで安心したのだろう。最初は恐る恐るであったものの他の子供達もジュリ君たちのところに寄ってきた。
もちろんジュリ君は他の子達に対してもリッツと同じように「みんなで一緒に食べよう!」と爽やかな笑顔と共にそんな言葉を言ってくれた。
何、そのイケメンムーブ!
そんなん俺が女だったら惚れてまうやろー!⋯⋯⋯⋯⋯⋯あ、俺『女』だったわ。
あれ? 俺は何を言ってるんだ?
——トゥンク。
え? トゥンク?
い、いやいやいやいや無い無い無い! それは無いってぇぇぇ!!!!
な、何だよ、トゥンクって!?
俺は外見『女』でも中身は『男』なんだぞ!
ときめいてどーする!
い、いかん、何か変な感じだ。
顔も何だか火照ってるし⋯⋯。
そんな一人で勝手に暴走して精神的ダメージを負っていると、
「アナスタシア、どうしたの?」
と横に座るジュリ君がこてんと首を傾げて声をかけてきた。
(っ!?)
ジュリ君のその可愛らしい表情と仕草を見て、ボッと音でも鳴ったかと思うほど顔が赤くなり、背中には嫌な汗がブワッと出た。
もはや自分の制御できない反応に「これ以上この場には居られない。居てはいけない!」となった俺は、
「ご、ごめん! ちょっとお花摘みに行ってくりゅぅぅ!!!!」
と全力でそんな言葉を叫んでその場から逃げ出したのであった。
まーそんなこともありつつ、その後は俺だけじゃなく孤児院の子供たちとも仲良くなり今では店を閉めた後に皆で一緒になって外テーブルでポテトフライを食べながら楽しんでいた。
——そんな時だった。
「アナスタシア、いるか?」
「う〜ん、中には誰もいないみたいですねぇ⋯⋯ん? 何だか外が騒がしい?」
「どうやら外にいるようだな。おいアナスタシ⋯⋯⋯⋯っ?!」
「ん? どうした、クロフォー⋯⋯⋯⋯ええええっ!?」
お? ちょうど孤児院長とマイルスさんが帰ってきたようだ。
「孤児院長、マイルスさん、おかえりなさい! 今ちょうどジュリ君と一緒にみんなで外でポテトフライを食べて⋯⋯」
「あ、あなたは⋯⋯⋯⋯ジュリアン《《様》》!」
「え? ジュリアン⋯⋯《《様》》?」
孤児院長が顔を真っ青にしながらジュリ君に向かってそんな言葉をかけた。すると、
「やあ、クロフォードさん。あ、ここでは『孤児院長』⋯⋯かな?」
「え? ジュリ君?」
そこには普段とは違う《《含みのある笑み》》を浮かべるジュリ君がいた。




