068「ある男の子との出会い(2)」
アナスタシアの計らいで孤児院の庭にあるテーブルへと移動し、ポテトフライを堪能する少年たち。
「ポテトフライは揚げたてが一番美味しいというのは本当ですね!」
晴天の中、庭にそびえ立つ大木の木陰に設置されたテーブルで揚げたてのポテトフライを食べて満面の笑みで美味しさを伝える少年。
さらにその横で一緒に食べる少年らも「美味しい!」「全然違う!」と手放しでポテトフライを褒めてくれる。
そんな光景に、少年たちと対面に座るアナスタシアが頬杖をつきながら満足げに「うんうん」と笑顔でうなづく。
「よかったです。よろこんでもらえて」
アナスタシアがほっこりしながらそんな言葉を伝えると、
「はい。しかもこんな良い場所を提供されるなんて⋯⋯今日、直接孤児院に買いに来て本当によかったです!」
他の二人も「「ありがとうございます!」」と感謝の言葉を伝えた。
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一通り、ポテトフライを食べて満足したあと少年がおもむろに自己紹介をする。
「挨拶が遅れてすみません。はじめまして、わたくしはジュリという者で隣町のしがない商家の跡取り息子です。9歳です。そしてこちらの2人は私の友人であり護衛の⋯⋯」
「ライアンと申します」
「ヘッセンと申します」
と、そんなジュリと名乗る男の子は横にいる同い年っぽい子らを「友人であり護衛」と説明する。それを聞いたアナスタシアは「よほど大きな商家の息子なんだろうなぁ」と当たりをつける。
「護衛だなんて、ジュリさんはすごい商家の息子さんなんですね!」
「いえ、そんなことは。大したことないですよ」
アナスタシアの手放しの褒め言葉にも謙遜しながら笑うジュリ。それを見て「まだ子供なのに飾らない子だなぁ。大人だなぁ」と感心するアナスタシア。
「丁寧なご挨拶ありがとうございます。私はアナスタシアと申します。この孤児院で暮らしています。9歳です」
「あ、同い年なんですね! それにアナスタシア⋯⋯素敵なお名前ですね。とてもお似合いです」
「えっ?! あ、ありがとうございます!」
(うお!? こいつまだ子供のくせにそんなセリフが出んのかよ。不意打ちだったからビックリだよ! こやつ、できる!)
(顔が良いだけでなく女の子を自然に褒めることができるなんて⋯⋯なるほど、これが真の『イケメン陽キャ』という奴か!?)
そんな「前世の俺とはまるで違う」と自虐的な感想が脳内でポンポンと浮かぶTS転生者アナスタシアであった。
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「それにしてもこのポテトフライ、初めて食べましたけどお芋とはだいぶ違いますね。初めての食感ですがとても美味しいです!」
「ありがとうございます」
「これはこの辺で採れるものなんですか?」
お? ジュリ君はポテトフライの原料に関心があるようだな。さすが商人の息子。しかしそう簡単に手の内は明かさないよ〜。
「ふふ、《《企業》》秘密です」
「キギョウ⋯⋯?」
あ、しまった!『企業』なんて言葉、この世界に無かったわ。
「あ、いえその⋯⋯秘密ということです。おほ、おほほほほ」
ここは俺の華麗なるお貴族様向け優雅さでごまかそう。
「そ、そうですか。まぁそうですよね。これだけの人気商品ですし」
「は、はい。そういうことです!」
うむ、なんとかごまかせたようだ。
あと、ジュリ君が「秘密にするのは当然ですよね」という言葉を投げてくれたので全力で乗っかったよ。
「そういえば最近貴族向けのポテトフライも売り出しましたよね」
「はい⋯⋯あれ? 食べたことないんですか?」
「はい。まだ食べたことなくて」
あ、そっかぁ。あれって貴族街にある『フィアライト商会』の店舗でしか販売してないもんなぁ〜。貴族でもないジュリ君が食べたことがないのも無理ないか。
「貴族向けのポテトフライには『ケチャップ』というものがついていて、それをポテトフライに付けて食べると聞きました。そうなんですか?」
「はい、そうです」
「しかもそれを食した方から話を聞くと『ポテトフライ以上に美味しい』とか『ポテトフライ以外にも使える』などと聞きました。そうなんですか?」
「え、ええ。そうですね⋯⋯」
おー、どうやらこちらの思惑どおりケチャップの有用性が広まっているようだ。いいね、いいねぇ〜。
ていうか、貴族でもないジュリ君はまだ貴族向けポテトフライを食べたことないというのにすでにケチャップについて気になっているというその着眼点はすごいな。とても9歳とは思えない。これは将来が楽しみな少年だな〜。
ん? 待てよ?
こんな聡い子供、しかも将来的に商家の跡取り息子と言っていた。
使えそうだ(ニヤリ)。
「あ、よかったら今度来た時に『ケチャップ入りポテトフライ』をご用意しましょうか?」
「え、いいんですか?!」
「もちろん!」
ええ、ええ、いいでございます、いいでございますよ〜。
そうしてケチャップの美味しさと有用性を『富裕層庶民』であるご友人らの親たちに広めてくださいませ〜。
「わーありがとうございます! ではまた明後日にでも尋ねますね!」
「わかりました。ではご友人の方のも含めてご用意いたしますね」
「「ありがとうございます!」」
こうして俺は貴族ではない『富裕層庶民』への宣伝をジュリ君を利用⋯⋯げふんげふん、協力することで進めようと考えた。
しかし、それはのちに『大悪手』であり、自らの首を絞めることになるとはこの時の俺は知る由もなかった。




