066「刻印教(2)」
孤児である自分に対して、皆が跪くという異常事態に慌てた私はすぐに「やめてください!?」といって強引にやめさせる。
「よ、預言の聖女っていっても私にその自覚はありませんから、そういうのは本当勘弁してください! いつもどおりで! いつもどおりでお願いします!!」
俺が必死になって3人に「いつもどおりに」と懇願すると、
「ふふ、わかったよ、アナスタシアちゃん」
「ふふ、そうよね。ビックリしちゃうわよね」
カイゼルさんとセリーナさんが笑いながら俺の願いを受け入れてくれた。
「ふむ、そうか。わかった、アナスタシア。君がそこまでいうなら仕方ないな。ではいつもどおりとさせていただこう。君の願いだからな。仕方ない。ああ、仕方ない(棒)」
「⋯⋯」
孤児院長がまるで「アナスタシアならそういうことを言うだろう」とでも言わんばかりに、前もって準備していたような言葉を棒読みよろしく並べた。
「孤児院長はもう少し敬意を払っていただいてもいいんですよ?」
「案ずるな。君が負担に感じている気持ちはちゃんと伝わった。何も問題ない」
「いえ、ですが孤児院長はもう少し⋯⋯」
「アナスタシア、私は不器用でな。だから《《加減》》ができん。そこまでいうなら今後君に対してはずっと先ほどのあのような態度で接するが⋯⋯本当にそれでいいのか?」
「うっ!?」
孤児院長が突然グッと真剣な表情で俺に詰め寄ってきた。
うう⋯⋯圧がすごいし、それに正直あんな態度の孤児院長はそれはそれで⋯⋯嫌だ。結果——、
「⋯⋯こ、これまでどほりでいいです」
「うむ。あいわかった」
俺は一生孤児院長には勝てないかもしれない。
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「孤児院長、刻印教ってやばい組織なんですか?」
「やばい? まぁそういうわけではないがただ大きい組織なのだ」
「大きい組織? それってつまり色々と権力争いとかがあるってことです?」
「そのとおりだ。大きな組織となると大体が《《一枚岩》》ではないからな。そして刻印教もまたその限りではない。そしてその中の一部に『過激派』なるものがいてそいつらに見つかるのが一番マズイ」
「過激派⋯⋯(ごくり)」
あ〜、大きな宗教組織ってそういう話あるよな〜。
「過激派⋯⋯というのはどういう人たちの集まりなんですか?」
「預言の聖女を『災厄を招く悪魔の遣い』と捉えている」
「は? はああああああ?! な、なんでそうなるんですか! 刻印教って預言の聖女を神々の遣いとか『神子』って言ってませんでした?!」
「ああ。だから『過激派』の主張は刻印教ではほとんど支持されていない、いないのだが、だからといって無視していいほどの数でもないのだ」
「え?」
「あくまで噂ではあるが、奴らは刻印教以外の外部とのつながりが指摘されていて水面下でどんどん勢力を拡大しているという話があるのだ」
「外部?」
「この辺は私も定かではないが聞いた話では裏社会とのつながりがあるらしい」
「な⋯⋯!」
それっていわゆる『犯罪組織』とか『テロ組織』ってことなのではっ!?
たしかに日本でもニュースでそういうのと宗教ってすごい関わりがあるみたいなこと言ってたっけ⋯⋯。
いや、それがまさか自分の身の上に降りかかる可能性があるとか怖いんですけど! 怖いんですけど! 大事だから2回言っちゃう!!
「ただすぐにどうこうなる話ではない。孤児院は私や領主である父の管理下にあるからな」
「あ、そう⋯⋯なんですね。よかったぁ〜」
刻印教の『過激派』の話にビビりまくっていたが孤児院長の言葉に安堵する俺。すると、
「大丈夫。すぐに身の危険が及ぶことではないよ、アナスタシアちゃん」
「そうよ。何も心配することないのよ」
と、カイゼルさんとセリーナさんが優しく声をかけてくれた。
「あ、ありがとうございます」
その後——カイゼルさんが用事があるということで今回はここでお開きとなった。
「とりあえず刻印教については引き続き警戒を怠らないようにします」
「うむ。任せたぞ、クロ」
「それじゃあね、アナスタシアちゃん。また来てね!」
「はい! ありがとうございました」
そうして私と孤児院長は二人に挨拶をして馬車に乗り込み孤児院へと戻った。




