065「刻印教(1)」
更新遅くなってごめんちゃい。
孤児院長の刻印教の話、そして今いる孤児院はその刻印教の施設であることを知って落ち込む俺を見て孤児院長の父親であるカイゼルさんが声をかけてきた。
「アナスタシアちゃん、大丈夫だよ。あの施設は確かに刻印教の施設ではあるがあそこで働いている者たちは皆この家の関係者だから」
「え? この家の?」
「ええ、そうよアナスタシアちゃん。だから何も心配はいらないわよ」
さらに奥さんのセリーナさんも私のことを気にして励ますようなことを言ってくれた。
「そう⋯⋯なんですか?」
と俺は孤児院長に視線を向ける。
「ああ、そのとおりだ。だからそこについては心配はいらない」
「そう⋯⋯なんだ」
俺は孤児院長からの言葉を聞いて少し安堵する。
「しかし、だからといって何も対策もせずに君が『神の世界の知識』を使ってあれやこれやと振る舞うのは危ないと思ったからこの話をした」
「え?」
「じゃがいもやそれを使ったポテトフライ、またトマトやケチャップなどについてはまだ大人がやったことだと言えばごまかせるがしかし君のあの⋯⋯『神の御力』を使って何かやらかしてしまうとごまかすのは難しい。なので少し君に警戒感を持ってもらおうと思い、話をしたのだ」
「⋯⋯」
それってつまり孤児院長は俺が《《やらかす前提》》で判断して俺に釘を刺した⋯⋯ってこと?
「ちょ、ちょっと、孤児院長! それって私に対してあまりに失礼な⋯⋯!」
「そうか? 君はほんのさっき私の両親に対して《《9歳の子供にしてはありえない知識》》を披露したのにか?」
「うっ?!」
「正直、私としても君を怖がらせるのは不本意であったからここまでの話はしないつもりだった⋯⋯が、しかし君のあの振る舞いを見て私は絶対に伝えるべきだと判断した。そういうことだ」
「あ、えっと⋯⋯⋯⋯はい、すみません」
ぐうの音も出ないよ! ぐうっ!!
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「それで孤児院長、これから私はどうすればいいのでしょうか?」
ここまで孤児院長に自分の立場や環境の危うさを聞かされたら、もはや自分で何かすることに対してかなり抵抗がある。
「ふむ。そのことなんだがとりあえず君は今まで通り孤児院で過ごす分には問題ない」
「え? それってポテトフライやケチャップを売るとかも含めて⋯⋯ですか? でも、それって目立つ行動になるんじゃないんですか?」
「さっきもいったがそれに関しては大人のほうで主導して行っている《《体》》にすればいいだけなので大丈夫だ。それに君のその行動のおかげで孤児院の生活もよくなり、さらには孤児院の子供達も《《同い年ではありえない知識》》を身につけることができたからな」
「⋯⋯え?」
「君は孤児院での生活しかわからないから無理もないが、実は孤児院の子供達の識字率や計算能力の高さは同い年の子供達どころかその上の学園に通う年上の子らよりも上だ」
「ええっ!? そ、そうなんですか!」
「うむ。君の『神の世界の知識』の一部であるあの『掛け算九九』や『筆算』はこの世界にはないものだ。はっきりいって革命的だ。そのレベルだ」
普段、簡単に褒めることなどない孤児院長が少し興奮気味にそこまではっきり言うってことはそれだけの変わりようだったのだろう。
「え、えーと、でもそれってもはやかなりの《《やらかし》》になってません?」
俺はかなり目立った行動なのではないかと孤児院長に問いただす。しかし、
「いや問題ない。そもそもこれに関してはまだ孤児院内の話でもあるからな。それに孤児院の子供たちでこれだけの知識習得が短期間で可能だという結果が出たのだ。これは国にとっての大きな財産になる」
「それってつまり今後この国の教育に取り入れるということですか?」
「そういうことだ。国民が一人でも多く識字率と計算能力を獲得すればそれだけ優秀な者たちが増える。それは引いてはこの国を豊かにする土台⋯⋯『礎』となる。教育の重要性は君にも理解できるだろ?」
「そうですね」
「とはいえ、もちろんすぐには無理だ。それに刻印教に今の状態で見つかるのもよろしくない。なので、ここからは私だけでは手に余るということで父上に相談したというわけだ」
「カイゼルさんに⋯⋯ですか?」
あ、そうか! そういえば孤児院長のお父さんカイゼルさんって侯爵家当主で領都スフィンベルクの領主でもあるけど本来の仕事はたしか⋯⋯。
「どうやら気づいたようだね。私はこのハルシュタイン聖王国の『宰相』だからね」
とニコッと満面の笑みを俺に向けるカイゼルさん。
「私は現聖王様や聖妃様の側近の一人だ。だから今くらいの規模の話となれば私の出番ってわけさ」
「カ、カイゼルさんってすごい人なんですね。これまで軽々しい態度や言動をして申し訳ありま⋯⋯」
「ああ、違う違う! そういうことじゃないよ、アナスタシアちゃん! そういうのはいいから! 私はこれから全面的に君たちの力になるよってそういうことを言いたかっただけだから! だからいつも通りにしていいからね!」
カイゼルさんにこれまでの失礼を謝罪しようとしたら全力で止められた。
「むしろ、『身分』の話をしたらそれこそアナスタシアちゃんは『預言の聖女』なんだからこの私どころか聖王様や聖妃様よりも《《上》》の存在なんだからね?」
「え?」
「そうよ、アナスタシアちゃん。預言の聖女様は『神々の遣い』と言われている。だから刻印教では『神の子』⋯⋯『神子』という扱いでそれはこの世界の人間すべての『上位の存在』という扱いなの。だから本来であれば私たちの方がアナスタシアちゃん⋯⋯いえ《《アナスタシア様》》に傅かなきゃいけないの」
「へ、へぇ⋯⋯」
なんだか肩書きがおだやかじゃない!
「⋯⋯アナスタシア様が預言の聖女様であることを隠さなきゃいけないとはいえ、私たちのこうした言動や態度をお許しください」
「っ?!」
そういうと、セリーナさんが、カイゼルさんが、そしてまさかの孤児院長までもが、目の前で両腕をクロスさせ片膝をついて私に跪いた。




