061「預言の聖女(1)」
「⋯⋯正直、最初クロから話を聞いた時や実際に話をした時は『預言の聖女』というよりもお『通常の子供よりかなり賢い子』くらいにしか思っていなかったのだが、しかし、まさか『預言の聖女』だったとは」
カイゼルさんが俺のことをマジマジと見ながらそんなことを呟く。
ていうか、『預言の聖女』って一体何なのさ!(ぷんすこ)。
というわけで、早速聞いてみた。
「あ、あの、『預言の聖女』って一体何なのですか?」
「ん? アナスタシアちゃんは『預言の聖女』のことを知らないのかい?」
「あ、えーと、昨日孤児院長から少しは説明してもらいました。『神の御力』という力を持っていて、それは誰もが欲しがる力で、だから狙われる恐れがある⋯⋯と」
「うむ。その認識で間違いないよ」
「でも、そもそもこの『預言の聖女』というのがよくわかりません! 一体どういう存在なのですか? 神様みたいなものなんですか?!」
俺はつい興奮気味にカイゼルさんに質問する。
正直、こんな想定外の力が現れてそれを見た孤児院長やカイゼルさんたちから『預言の聖女』と言われてもピンと来ないし何なら気持ち悪いさえある。
そりゃ『チート』みたいな力が使えるようになったのは嬉しいけど、でもそれが単にアナスタシアの力じゃなく『預言の聖女』という謎の存在が絡んでいるとなると話は違うじゃん?
つまり⋯⋯「俺はアナスタシアという少女に転生したTS転生者で『預言の聖女』という存在でもある」ということ。
設定盛り過ぎだっての!
とはいっても、すでにそうなってしまった現状を俺は受け入れるしかない。
それはいい。だがせめてそれなら『預言の聖女』という存在がどういう存在なのかくらいはちゃんと知りたいと思うのは至極真っ当な意見だと思う(ふんす!)。
「クロは話していないのか?」
「はい。というより、それを説明するかどうか考えている間にアナスタシアが突然『神の御力』を顕現したんです。全くこっちの都合などお構いなしに⋯⋯ぶつぶつ」
などと不貞腐れた顔をまるで隠すことなく俺を睨みながらブツブツ文句を言う。
「いやそれを言ったら私だって同じですよ! しかもこっちは当事者ですよ?! 私の都合もお構いなしなんですから孤児院長の都合を構うわけないじゃないですか!」
「何だと?」
「な、何ですか⋯⋯!」
孤児院長の睨みに負けずに俺も睨み返す。
俺は「こっちだって突然の出来事に混乱してイライラしてるんです!」ということをアピールした。
「⋯⋯ふぅ、そうだな。たしかに君の言う通りだ。少々言い過ぎた、すまない」
「えっ!?」
突然、孤児院長が折れて俺に謝った。しかも頭まで下げて。
「ちょ⋯⋯?! や、やめてくださいっ!!」
「いやさすがに今のは私の失言だった。だから頭を下げるのは当然だ」
「わ、わかった! わかりましたから! だからもう頭を上げてください孤児院長!!」
そうして、何とか孤児院長を宥めて頭を上げてもらった。
あービックリしたー!
まさか孤児院長が私に頭を下げるだなんて⋯⋯。
「あーこほん。そろそろ⋯⋯⋯⋯いいかな?」
「「⋯⋯あ」」
カイゼルさんが好々爺然とした柔和の笑みを浮かべながら、俺と孤児院長のやり取りのタイミングを見計らって声をかけてきた。
それを聞いてやっとカイゼルさんやセリーナさんを放ったらかしてやり合っていた現実に気づかされた俺と孤児院長。
二人に対してめっちゃ気まずかったのは言うまでもない。
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「ふむ、そうだな。それならやはりクロ、お前の方からアナスタシアちゃんに話してあげるといい」
「そうね。何たってクロは『預言の刻印板』の《《研究者》》だもの。あなたのほうが私たちよりもアナスタシアちゃんにより教えられるでしょ?」
ニコニコしながらカイゼルさんとセリーナさんが孤児院長にそう言ってきた。
孤児院長は二人の言葉に何かしらの意図や含みを感じたのか一瞬嫌な顔をしたがすぐに「ふぅ〜、わかりました」と了承した。
ていうか『預言の刻印板』ってたしか前にちょっと言っていたな⋯⋯。
で、孤児院長がそれの研究者⋯⋯だと?
最初は『孤児院長』という肩書きから『領主の息子』という肩書きが増え、さらに今度は預言の聖女に関係する『預言の刻印板の研究者』と新たな肩書きが増えた。
一体何者なんだ、この孤児院長は?
そんな疑問が頭によぎりながら俺は孤児院長の話を聞いたのだが、その孤児院長の話は想像以上だった⋯⋯⋯⋯良い意味でも悪い意味でも。




