055カラオケ
期末テスト終わりの打ち上げと称して、斗真、楓、五月、静子の4人はカラオケに向かった。
駅前から少し歩いた先に、カラオケがあるのだ。
早速、一部屋借りる。
「じゃあ、トップバッターは…斗真ニャ!」
「俺?」
五月にトップバッターを任命される。
斗真はタブレットのメニュー画面を開き、そこから歌詞を選ぶ。
選んだのは、最近アニメで流れているメジャーな歌詞。
テレビ画面に、タイトルが表示され、曲が流れる。
斗真はマイクを手に取り、歌いだす。
音程を偶に外しはするが、だいたい大きくズレることなく、歌いきる。
気になるスコアは、
「75点か。まあまあだな」
テレビには、75点のスコアが掲載されていた。
良くも悪くもない点数である。
「中々悪くない歌だったニャ。じゃあ、次は私!」
斗真からマイクを受け取った五月が二番手で歌いだす。
そして、軽快な歌声で五月が歌い終わる。
その点数は、
「91点ニャ!」
なかなかの高得点である。
後で聞いたが、五月は普段から、よくカラオケに行って、歌っているそうだ。
本人曰く、歌っていると、夢の中に入り込むような感覚になるので、歌うのが好きなのだそうだ。
「今度は、かえちん!」
「うん、頑張ってみる」
「かえちんなら、きっと私より高得点だよニャ!」
五月からマイクを渡された楓は、決心を胸に秘めたような顔で、立ち上がる。
楓はカラオケに行ったことが無いが、ずっと行きたいと思っていたのだ。
前からやりたいと思っていたことを、やってみる。
それ故に、ドキドキしているのだ。
楓と静子に関しては、カラオケ初心者である。
なので、まずは楓と静子にカラオケを慣れさせるために、簡単な歌をやってみようと言う事になった。
楓が肺から息を吐き出し、歌い始める。
その結果は、
「「「あはは……」」」
「………」
斗真、五月、静子の3人が苦笑いする中、拍手を繰り返す。
楓は無表情無言だった。
その理由は、テレビの画面に表示されたスコアにある。
スコアは何と………53点であった。
うん、音痴である。
カラオケのスコアは甘えに設定されてある。
普通の人でも、70点ぐらいは出せる。
だけど、楓がマイクを持って歌い始めてから、すぐに気付いたけど、楓は歌詞に合わせて歌うのが、とても不得意のようだ。
いや…声は綺麗なのだ、声は。
ただ、音程がズレまくっているのだ。
故に、あの点数。
学業だけでなく、運動においても、万能の楓にも、こんな面があったとは。
楓も、自身の歌の下手さに、無表情で落ち込んでいた。
「う、うん!かえちん、凄い上手だったニャ!」
「ありがとう、五月。お世辞でも嬉しい」
五月の言葉が慰めであるのは、誰の目からも明らかなので、楓は五月に感謝しながら、マイクをテーブルに置き、椅子に座り込む。
椅子の上で体育座りして。
表情からも落ち込んでいるのが見て取れる。
「私…下手」
「げ、元気出せって!」
落ち込む楓に、斗真が声を掛ける。
慌てて、五月はマイクを静子に渡す。
「き、気を取り直して…次は、しずっちニャ!」
「は、はい!」
静子は緊張した面持ちで立ち上がる。
静子もカラオケが初めて。
何度も深呼吸をする。
そして、歌い始める。
すると、
「「「す、すご!」」」
斗真、五月、楓が異口同音で感銘の声を出す。
テレビに表示されたスコアは、何と96点。
歌い慣れている五月の、さらに上である。
これがカラオケ初心者なので、恐るべし。
歌っている時の静子は、テレビで聞く女優の歌唱力に迫る…と言っても、過言ではない程、上手い物だった。
普段、本しか読んでいない静子に、こんな才能があったとは。
プルルルル。
その時、電話が鳴る。
「はい」
それは楓の持つスマホからだった。
楓は電話に出る。
何か、重要な電話なのか、楓は何度も相槌を打ち、電話越しの相手の話を聞く。
電話は少しの時間で終わる。
終わった後、楓は真剣な顔で、斗真を見る。
この顔、”そう言う事”か。
斗真は楓への電話が、どういった要件かを瞬時に悟る。
「斗真!ここから、かなり離れた所に、妖獣が出たらしい。私と一緒に、退治に協力して!」
「分かった」
打ち上げは、カラオケで4人は一人一曲歌い終わると言う、短いものになってしまった。




