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『退魔鬼譚』 ~妖怪学校一の美少女と異世界帰りの勇者は怪異退治が任務である~  作者: 保志真佐
第五章 緋鞠と水鬼

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054不穏の予感




 そこは薄暗い洞窟の中。


 物音一つもない暗い空間。


 日光も阻んだ空洞の中では、目を凝らしても、周囲が確認できない。

 気温が低く、とても寒い。


 ギチギチ。

 さらに、ここは至る壁や地面に…妖獣が蔓延る。


 黒い芋虫のような存在が、あちこちに。

 暗闇を好む、この妖獣は洞窟内をムカデのように這い回る。


 こんなところを好む虫や植物の苔ぐらいしか、この場所には長時間居たくないだろう。


 ましてや、人など。

 いや、妖怪。


 いや、鬼族でも、余り居たくない環境である。


 「うう…」


 そんな冷たく暗い洞窟に、小さく悲痛な声を…………楓が出す。


 浅い呼吸を繰り返し、頭を下に降ろしている。

 様子を見るに、かなり衰弱している。


 寒い、冷たい空気が肌に触る。

 体が凍りそう。


 ……………裸なので、当然か。


 楓は今、衣服を身に着けることは許されず、裸体の状態。

 白い素肌を惜しげも無く外に晒している。


 恥ずかしがる元気も無い。


 両手両足を鎖で拘束されている楓には、身動きが取れない。

 身動きを取ろうとする気力も湧かない。


 短めの緋色の髪はボサボサ。

 目は虚ろであり、顔色の真っ青。


 普段は健康的な白い肌も、今はとても汚れている。


 擦り傷や痣も幾つかある。

 体中が痛い。


 もっと言えば、洞窟内を這い回る黒い芋虫のような妖獣たちが、彼女の裸体に無遠慮に張り付き、傷口に触れていた。


 「……………たす…………け……て…………………とう…………ま」


 皴だらけの唇から洩れる斗真への助けの言葉。

 彼女の銀色の目に、水滴が。


 ポチャ…。

 一筋の涙が零れ落ちる。


 楓が、このような絶望的な状況になったのには理由がある。

 それは少し時間を遡る必要がある。









 キーンコーンカーンコーン。

 学校のチャイムが鳴る。


 今日の授業の終わりを告げる音だ。


 いや、今日に限って言えば、学校における一大イベントを終わらせる音だろうか。


 「はぁ…終わったニャ」


 五月が大きく息を吐く。

 大きく腕を回し、肩を解す。


 「ほんっと、テスト疲れたニャ!」

 「お疲れ様」


 愚痴を言う五月に、楓が労いの言葉を掛ける。


 そう、今日はテスト…それも、一学期の全ての学力を図る期末テストの日だった。

 勉強嫌いな五月には、苦痛であっただろう。


 とは言え、それも終わり。


 先程、全ての教科のテストが終了した。


 「ふぅ…」


 斗真は息を吐く。

 さっきのテストを振り返る。


 テストなんて、久しぶりだ。

 異世界にいたのが、3年なので、かなり間がある。


 異世界にいる間に随分忘れてしまった部分も多かったが、そこは放課後や週末の「たぬき喫茶店」での勉強会で、どうにかなった。


 テストの点数も赤点には、ならないだろう。


 ミーンミンミンミン!!

 ミーンミンミンミン!!


 教室の窓の外からは、蝉の音楽が聞こえる。

 気温も高く、額から汗が出る。


 今は7月の上旬。

 梅雨を過ぎ、夏の始まりが来る時期である。


 これからもっと蒸し暑くなる事だろう。


 けれど、多くの生徒にとって、この時期は心が湧くだろう。

 何故なら、


 「もうすぐ夏休みニャ!」


 五月が、はしゃぐように、もう少しで夏休みが訪れる。


 7月下旬から8月いっぱいの一か月間の大型連休である。

 高校にとって、夏休みは友達とゲームしたり、夏祭りに行ったり、部活動がある人は大きな大会をやったり、時には終わらない夏休みの課題に四苦八苦したり。


 兎に角、イベント盛り沢山の夏休み。


 五月だけでなく、他の生徒も夏休みを楽しみにしている雰囲気を出している。


 テストが回収され、クラスメイト達が帰りの準備をする。


 「ねぇ!ねぇ!かえちん、これから打ち上げしようよ!」

 「打ち上げ?」

 「そ!テストも終わったし、何処かで遊ぼうよ!」

 「まぁ…テスト終わりなら良いかな。五月は頑張ってたし」


 テスト勉強の際は、斗真だけでなく、五月の勉強を見ていた楓。


 と言うか、殆ど五月と楓のマンツーマンだった。

 楓はどうにか、勉強を嫌がる五月を励ましながら、根気強く教えていた。


 「そうだ!しずっち!しずっちも、どう?」

 「え?私ですか?」


 突然、話を振られた家内…静子が驚く。

 静子からしたら、クラスで本ばかり読んでいる自分に、打ち上げの誘いが来るのは、驚きなのだろう。


 五月は静子の手を引く。


 「何言ってるの?!しずっちも勉強手伝ってくれたでしょ!それに、私達…友達なんだから!」

 「と、友達」


 友達と言われ、照れ顔をする静子。

 未だに静子からしたら、友達と言われるのが恥ずかしいようだ。


 「で、では…ご一緒させても」

 「やったーニャ!」


 どうやら、五月と楓と静子で打ち上げが決まったようだ。

 五月はポンッと手を叩く。


 「うん、打ち上げはカラオケにしよう!」

 「カラオケ…行ったことが無い」

 「私もです」


 どうやら、打ち上げ場所はカラオケ。

 でも、楓と静子の2人は行ったことが無いようだ。


 「大丈夫、慣れれば楽しいから!」


 そう言って、五月は楓と静子の手を引っ張り、カラオケに行こうとする。


 斗真も帰りの準備をする。

 だが、そこで五月たちが斗真の元に来る。


 「斗真も、ついでに誘ってあげるニャ!」

 「俺は、ついでなのかよ」


 呆れる斗真だが、カラオケは確かに楽しそうだ。


 こうして、4人はカラオケに向かった。




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