暴竜は舞い降りた
フォートレスにてスヴェルチームが過ごすいつもの宿舎にて、新規開発の兵器や増産が為された兵器の報告会議が行われていた。
モーリスは新型主力戦車である『NT-12』の生産状況を、俺は先日組み上がった無人航空戦闘システムと新型要撃機の性能についてを皆の前で発表していた。どちらも戦団の戦力をより高水準なものへと導く代物として、皆からも好評を貰う事ができた。
一通りの説明が終わり、質疑応答の時間に入ろうとしたその時、入り口付近に設置された赤いランプが点灯しその横のスピーカーから大きなブザー音が鳴り響き始めた。
「何だ!?」
ヴァネッサがすぐさま中央の立体映像装置を立ち上げ、状況確認に取り掛かる。
「陸軍からの緊急通信だよ!繋げるから静かにしてな!!」
ヴァネッサが端末を操作すると立体映像が3方向に大きな画面を形成し、とある場所の光景を映し出す。その光景はこれまで何度も見た、エリア022国境線を越えた先……エリア022の荒野であった。
『こ、こちら戦団陸軍第4戦車中隊所属、ドルトン軍曹であります!スヴェルチームの方はそこに居られますでしょうか!?』
「こちらスヴェルチームのヴァネッサ!こっちは全員揃ってる、何があったか教えな!」
『は、はい!エリア022方面より敵軍の侵攻が発生したと聞き、陸軍の戦車中隊計4隊が迎撃に向かったのですが、敵の新型アナライザーの強襲を受け──』
『──迎撃部隊のほぼ全てが、壊滅しましたっ…!』
「何だって!?」
『現在、辛うじて生き残った本戦車が、他部隊の生き残った戦車4両を率いて撤退を開始しております!このような結果になってしまい、誠に申し訳ありません…!!!』
画面の向こうにいるドルトン軍曹は泣きながら状況を伝え続けてくれていた。今の状況下において、彼の心労は計り知れないものだろう…。
「狼狽えるなドルトン軍曹!!」
『…!!そ、その声はヘンリク戦団長!?』
「貴殿は生き残り、他の生存者を纏めてその命を守り続けている。現在の貴殿の仕事は涙を流す事ではなく、無事に国境線を越え帰還する事だ!貴殿の行動は間違ってはおらん!この私が保証しよう!!」
いつになく声を張り上げ、ドルトン軍曹に激を飛ばすヘンリク。
『っ、畏まりました!ここにいる全員を無事に帰還させるべく、死力を尽くします!!』
「それでいい……皆、話は聞いていたな?」
ヘンリクの問いかけに、全員が首を縦に振る。
「これより、敗走した陸軍戦車部隊に変わり革命派の新型アナライザーの迎撃を行う。迅速に出撃準備を済ませ、出撃を開始せよ!……以上!!」
全員が一斉に席を立ち、各々の準備に取り掛かる。俺も自室に戻ってパイロットスーツに着替え、ヘルメットを被って格納庫へと急ぐ。先程まで格納庫で機体のセッティングをしていたのもあって、既に機体の出撃は出来ている。兵装も搭載してあるし、既に準備万端なのだ。
メインアームはいつも通りのAKM、もう一つもまた、最近多様しているMG42を採用した。正直これがデフォルトで良いと思っているので、特に換装の必要が無い場合は今後この2つが俺のメインアームとなるだろう。
サイドアームもまたいつものMP-443であり、近接武器も専用大剣である『エターナル』だ。この4つをセットとして、俺のデフォルト兵装にしようと思う。
昇降用ワイヤーでコックピットに向かい、席に座って起動句を唱える。
「コネクション」
【メインシステム─起動─接続開始─接続完了─ユーザー認証──メルト─認証完了──ビジョンシステム─起動─FCS─起動──全システム─オールグリーン】
機体を立ち上げ、カタパルトへと移動する。脚部をカタパルトに接続し、出撃準備を完了する。
『スヴェル7、出撃を許可する。繰り返す、出撃を許可する。』
「了解……スヴェル7、出撃する。」
出撃用の出口にあるランプが青く点灯し、カタパルトが起動する。機体が前へ前へと押しやられ、カタパルトから離れる瞬間にブースターを噴射して空へと飛び立つ。
横の第2カタパルトからは同じく出撃準備を終えていたヘンリクが機体を加速させて飛び立っている所だった。合流ついでにヘンリクに追従し、他のメンバーを待ちつつエリア022へと移動を開始する。
後ろから次々と出撃してきた皆が合流した段階で、ヘンリクから通信が入る。
『スヴェル1より各位、これより敵軍の新型機迎撃を開始する。先程ドルトン軍曹率いる残存部隊が無事国境線まで後退出来たとの情報が入った。軍曹からの情報によると、敵は恐ろしい程の弾幕を展開してくるとの事だ…十分に注意して迎撃にあたれ。』
『『『『『「了解。」』』』』』
『アイギスよりスヴェルチーム、今し方、ハインケル長官の率いる戦団陸軍の全戦力が出撃しました。到着はそちらの方が早いと思われますが、後程陸軍が合流する事を留意しておいて下さい。』
『こちらスヴェルチーム、了解した。……ハインケルの奴め、私の了承も無しに全戦力を動かすとは……変わらん奴だ。……まあいい、もう間もなく国境線だ。各位、到着次第迎撃を開始せよ。』
指示を聞きつつ、MG42のセーフティを解除する。国境線を越え、荒野にて待ち構えていた革命派の新型アナライザー達を注視する。
そのアナライザーは、これまで革命派が用いてきた旧式のアナライザーとは比べものにならない程洗練された、黒塗りの新型機であった。腕にはガトリング砲が搭載されて……いや、あれは搭載というよりは右腕そのものをガトリング砲へと換装していると言うべきか。腕部から伸びる黒い砲身はアメリカのM61バルカンを彷彿とさせ、その連射力は相当なモノであると伺える。
よし、先制攻撃と行くとしようか。
「スヴェル7、攻撃開始します。」
MG42を構え、先頭を突き進む黒い新型機に向かって機関銃による弾幕射撃を開始する。普段であれば散発的な射撃に留めておくのだが、新型機の装甲厚が不明である以上、初撃は一定以上の火力で攻撃するのが得策なのだ。
MG42から放たれた7.92mm弾が黒く塗装された敵機の装甲を穿ち、フレームを歪ませつつ内部をズタズタに引き裂く。見た感じ銃弾は通るようだが、いくつかはフレームを歪ませる程度に留まっている為、これまでの旧式アナライザーとは比べ物にならない防御力がある事が伺える。フルサイズの7.92✕57mmモーゼル<B>弾ですらこのレベルなのだから、AKMやMP-443では少し厳しいかもしれない。
撃破したアナライザーを尻目に、他のアナライザーへとMG42による弾幕射撃を叩き込む。機関銃が轟音を立てながら銃弾を吐き出し、地上にて右腕のガトリング砲を構えようとする黒い新型機達に風穴を開けていく。弾幕による薙ぎ払いだったのもあり、何機かは生き残っているようだった……流石に頑丈だな。
とはいえすぐに仲間達の攻撃で機能を停止していた為、あいつらは捨て置いて良いだろう……問題はまだまだ数が残っている事だ。この短時間で既に6機程度は撃破しているのだが、敵の新型機はまだうじゃうじゃ存在しており、こちらに向かって右腕のガトリングを放ち始めている。
左腕の拡張式複合装甲盾『アテナ』を展開し、銃弾を弾き飛ばしつつ弾幕を張る。ガトリング砲なだけあって連射力が桁違いであり、先程から『アテナ』に着弾する銃弾の数がかなり多い……貫通される事はないものの、この盾なしにアナライザーで肉薄するのはかなりリスキーだな…。
他の皆は弾幕を回避しつつ撃破を進めているが、やはり回避しながらだと思うように動く事が出来ていないようだった。どうにかして俺にヘイトを集めたい所だが……そうだ、アレをやるか。
「スヴェル7より各位、こちらで敵の注意を引きつける……その隙に敵機の撃破を進めてくれ。」
『メルト?お前何を──』
モーリスの問いかけを無視し、MG42をウェポンハンガーに預けて代わりに専用大剣の『エターナル』を引き抜く。そして左腕に搭載された新機能を起動させる。
「竜爪起動、『アテナ』連結接続!」
折り畳まれた状態で『アテナ』と左腕の間に仕込まれていた新機構が展開され、竜の爪を模した巨大な鉤爪が顕になる。爪の部分は銀色に輝き、手の甲の部分は黒く塗られた竜の爪は後端部が『アテナ』と接続され、その様相を鉤爪付のガントレットへと変える。
先のエリア020攻防戦にて、敵味方問わず噂になっていた『白雪の暴竜』という異名。あれは俺が愛機で大暴れした事から生まれたらしく、よりによってその異名が革命派側から各国に広まってしまい、もはやその異名が定着してしまっているのだという。俺としては勘弁願いたい異名な気もするのだが、一度広まったものはそう簡単に取り消す事は出来ない……こういう時は大人しく受け入れるのが吉なのだ。
そんな悲しき事件を逆手に取り、アナライザーによる近接戦にて新しい戦術アプローチをしようという事で開発したのが、『デュランダル』専用の展開式接続鋼爪『竜爪』である。
要は竜みたいな爪を使用すれば、否応なしに敵が警戒してくれるんじゃないかと踏んだ、ゴリゴリの物理兵器だ。戦車の装甲くらいであれば難なく引き裂く事の出来るこの鉤爪を活かし、近接戦闘能力の高い愛機の機体性能を存分に活かしてやろうというのが、この鉤爪のコンセプトである。
敵陣へと一気に急降下し、着地と同時に竜爪を振り下ろして黒塗りの新型機を縦に引き裂く。3本の爪痕が刻まれた敵機を踏み付けつつ、大剣を肩に担いで敵機達を睨みつける。
排気部からタイミング良く放出された空気が、この機体の威圧感をより一層醸し出す。
「さぁ来いよ間抜け共、一人残らずスクラップにしてやるよ…!」
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