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朧火の意志  作者: 布都御魂
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緊急出動


フォートレスの空軍宿舎にて、警報とアナウンスが鳴り響く。


『──空軍司令部より各位へ通達、エリア022方向より所属不明機が領空侵犯を犯している。現在地はエリア022国境線付近、待機中の者は早急に緊急出動(スクランブル)せよ。繰り返す──』


「またかよ……ったく、懲りねぇなぁ…。」


「いつもの事でしょ、レベッカ……ほら、行こ。」


「へいへい。」


先程まで読んでいた小説をベッドに放り投げて、クローゼットからパイロットスーツを引っ張り出す。隣ではルームメイトであり同じイーグル隊に所属する"レベッカ・ジョーンズ"が着ていた服を無造作に投げ捨ててパイロットスーツを着込んでいた。


非番の日は夫であるロバートがいる家へと帰るのだが、今回のように緊急出動が多い事もあって戦時中である今は元々過ごしていた宿舎にて夕方迄を過ごしている事が多い。出勤日も基本的に宿舎で寝泊まりしているから、家よりも此処で過ごす事の方が多いのだ。


ロバートと過ごせないのは残念ではあるが、ロバート自身も戦団空軍の長官という役職である為宿舎で寝泊まりする事が多くなっており、だったら今はこの形を取ろうという事でお互いに納得している。


ジッパーを締め、ヘルメットを持って部屋を出る。レベッカも支度を終えたのかヘルメットを持った状態で部屋を出てきたので、二人で宿舎の廊下を駆け足で移動する。


階段を降り、宿舎を出て格納庫へと急ぐ。正直今日は非番なので別に出なくても良いのだが……緊急出動なのだから人手は多いに越した事はない。


途中で男性寮の方から走ってきた同じイーグル隊の3人と合流し、共に格納庫へと急ぐ。私の前を走っているのが"トーマス・エイドリン"で、イーグル隊の中では最年長の34歳のパイロットだ。私の次に操縦が上手いパイロットで、前に機体の撃墜マークを描く場所が無いと悩んでいた程に卓越した操縦の腕を持っている。


そしてその隣を走るのが"アイク・エイドリン"。トーマスの4歳下の弟であり、兄と共に戦団空軍へと入隊したパイロットである。操縦は隊の中では4番目ではあるものの、それを補う戦術と知識を持っている為か基本的に兄と大差ない動きを行う事ができる優秀なパイロットだ。


次にその後ろ、一番背の高い奴が"ルーク・ドルマヤン"で、180cmの身長があるにも関わらず隊の中で最も若い23歳である。腕はまだ伸び代があるものの、アメリカ空軍時代には同年代における出撃回数が常にトップであったのもあり、経験数だけは誰よりも多かったりする。だからこそ隊のメンバー全員が実力を認めてるし、彼の経験から来る判断を信用する事ができるのだ。


最後に私のルームメイトであるレベッカだけど、彼女は元アメリカ空軍のエースパイロットであり、職場での対人関係が原因で戦団へと移籍してきた経歴を持っている。……実際口調は荒いし、色々と雑な所は多いけど……それ以上に仲間思いの良い人なのだと言う事を、私達は知っている。だからこそ、安心して彼女に背中を預けて戦っているのだ。


……紹介はここまでにしよう、戦闘機のある格納庫に着いたのだから。


「む、イーグル隊か。今日は非番の筈では…?」


格納庫には私達の上官であるドミニク少佐がいた。非番である筈のイーグル隊がパイロットスーツを着込んで此処にいる事が不思議なのだろう。


「緊急事態ですので人手は多い方が良いかと思いまして。」


「それは助かる、今現在エリア022戦線に第1〜第40航空隊が出払っていてな……出動できるのが新兵の多い第41〜45航空隊しか残っていないのだ。」


あぁ、あの新兵達か……前の演習時に対戦相手の背後を一度も取れずに敗北していたのはよく覚えている……あれから上達はしたんだろうけど、彼等だけじゃ流石に不安要素が大きいか。


「私達も出動しますので、これにて。」


「あぁ、機体は整備済みらしいから……気を付けて行ってこい。」


「「「「「了解。」」」」」


いつもの白く塗装された『PWS-37』に乗り込み、酸素マスクを装着して待機する。暫くすると牽引車が私の戦闘機を移動させ始め、格納庫の外へと連れて行ってくれる。


『こちら管制室。イーグル1、滑走路までのタキシングを許可する。他の機体との接触に注意しつつ滑走路へと移動せよ。』


「イーグル1、了解。」


機体のエンジンを入れ、滑走路まで機体を移動させる。滑走路へと侵入し、離陸方向へと機体を向けると、再び管制室から通信が入った。


『滑走路の侵入を確認した、イーグル1の出撃を許可する──御武運を。』


「ありがとう。」


エンジンの出力を上げ、離陸する為に機体を加速させる。徐々に速度が上がり、一定の速度まで機体が加速したその時、機体が宙に浮かび始める。ふわりとした浮遊感が来たのもつかの間、耐G緩衝装置によって軽減されたGが体に負荷をかけ始める。この装着が開発された事で戦闘機のパイロットになるハードルはグンと下がっているし、現役の私達もより高度な機動を行う事ができるのだ。


機体の速度を抑え、チームメンバーの合流を待つ。私の離陸した滑走路から仲間達が次々と離陸し、私の機体に並ぶ形で飛行し始める。


「イーグル1より各位、これより敵航空機の迎撃を行う。やり方は……いつも通り自由行動(ブレイク)で。」


『OK、せっかくなら競争といこうじゃないか。ビリは夕飯奢りで!』


イーグル3──レベッカだ──が競争を持ちかけてくる。いいね、いつもなら節約しちゃうおかわりも、奢りなら遠慮なくできちゃうし。


『まじかよ……今月金欠なんだよなぁ…。』


『弟よ、また趣味の骨董品集めに散財したのか…?計画的にやれといつも言っているだろうに…。』


『しゃーねーだろ!貴重な年代物のレコードが見つかったんだよ……つい買っちまうのも無理ねぇだろ。』


アイクは先程言っていたようなアンティークや骨董品が大好きで、よく珍しい骨董品を購入しては金欠になって兄であるアイクに叱られているのをよく見かける。古い代物に惹かれるのは分からなくもないけど、金欠になる程に購入してしまうのはやり過ぎだと思う。


『まぁまぁ、今は迎撃に集中しよう?もう出撃してるんだからね。』


『そうだな……ルーク、今日こそは負けねぇぞ?』


『いや今日も勝つけど…?』


しれっと煽るルークに苦笑いしながら、レーダーを確認しつつ前を見据える。


「皆、お喋りはそこまで。──狩りの時間だよ。」


レーダーに赤い光点が表示され始め、徐々に自機との距離が縮まっていく。所属不明機……まぁ戦闘機なのは判明してるので十中八九、革命派の戦闘機だけどね。


「敵機補足、各機自由行動(ブレイク)。」


編隊飛行していた皆が散り散りに別れ、各自が自由に敵機を迎撃し始める。私も正面にいる敵機をロックオンしてから空対空ミサイルを遠距離から発射する。


「イーグル1、フォックス2。」


主翼から遠距離空対空ミサイルである『AIM-130サーペント』を敵機に向かって放つ。最新のロックオンシステムの補助を受けたミサイルが敵機へと急速接近し、回避し損ねた敵機を真っ黒な花火へと変える。普段見る分にはなんの派手さもないモノクロな花火でしか無いのだけれど、戦闘機に乗っている今は綺麗な花火に見えてしまう。


……だってこの花火が、私の技量を示すシンボルとなるのだから。


撃墜した敵機を回避しつつ、次なる敵に狙いを澄ます。遠距離空対空ミサイルで次々と敵機を狩り、領空を犯した侵略者達を次々とモノクロの花火へと変えていく。


この調子なら私が夕飯を奢る事にはならなそうね…、というか負ける事がないから競争で奢った事はまだないんだけど。


ご飯の事考えてたらお腹空いてきた……早く終わらせて帰ろっと。


速度を上げて左前の機体の背後に回り込み、背後から中距離空対空ミサイルである『AIM-72Fトラッカー』をお見舞いする。いつまでも追従し続けるミサイルが敵機を追い詰め、最終的に機体後部へと喰らいついて起爆した。今ので最後かな…?


『イーグル2よりイーグル1、敵機は今ので最後のようだ。』


「こちらイーグル1、了解……じゃ帰ろっか。」


再び編隊を組み、フォートレスの滑走路へと進路を向けて飛行する。




早く帰って、お夕飯をたっぷり食べるとしよう。

















ちなみにビリはアイクだった。お夕飯のガーリックステーキは非常に美味だったとここに記しておく。


                   エイヴァ


お読み頂き、ありがとうございますm(_ _)m

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