特殊部隊の名
「たっだいまー!」
フォートレスの宿舎に大きな声を発しながら入室するアンジェ。久しぶりのフォートレスが嬉しかったのだろう。
かく言う俺も久しぶりのフォートレスに心踊らせており、アンジェに続いて意気揚々と宿舎へと入った。
「おかえり、諸君。エリア020での活躍は聞いている……良くやってくれた。」
テーブルでコーヒーを飲んでいたヘンリクが、入ってきた俺達を暖かく出迎えてくれる。その横ではトリシャとアンジェが再開を喜んで抱き合っていた。
「おかえり、4人共。……帰って早々に言うのもなんだけどね、報告書は期限内に纏めとくれよ?じゃないと経費で落ちないからねぇ。」
端末を抱えたヴァネッサが報告書の催促をしてくる。帰って早々鬼畜な気もするだろうが、これを怠れば自費で弾薬費等を支払う羽目になるので大人しく提出するしかないのだ。ヘンリクが横で気まずそうに目を逸らしている辺り、また報告書の期限を過ぎて怒られたんだろう……懲りないなアンタ…。
「うーい、戻ったぜ……お、帰ってきたのか!」
相変わらずなヘンリクに肩を竦めていると、宿舎の扉が開いてモーリスが入ってくる。手には大きな段ボール箱を抱えており、見た感じ随分と重そうな箱であった。
「ただいま、モーリス……んでその箱なに?」
「あぁ、この箱には新しく作った特殊部隊用のワッペンと合わせて作ったロゴ入りのタクティカルライト、それから最新版の救急キットが入ってるんだ。」
モーリスが箱を開けると、先程説明してくれた物品がぎっしりと詰まっていた。こういった新しい物品ってワクワクするよな…。
ワッペンには白銀の盾を持った騎士が描かれており、人々を護る騎士という意匠が施されているようだった。またタクティカルライトにはシンプルな盾の意匠が施されており、この『盾』というシンボルが俺達のチームを示す新たなシンボルになる事が伺えた。
「ふむ、丁度いいか……全員、一度テーブルに集まってくれ給え。」
ヘンリクがテーブルに集まるよう告げた為、持っていたワッペンとタクティカルライトを箱に仕舞って席に座る。
「揃ったな。先程モーリスが持ってきた箱の中に、ワッペンが入っていただろう?あれは我らが特殊部隊を示すワッペンであり、今後出撃する際にはあのワッペンを装着して出撃して貰いたい。そしてワッペンを決定すると同時に、私達の正式な部隊名を決定した。」
お、ついに決まったのか。前々から意見自体は出し合っていたが、収集がつかなくなりそうだったのもあって決定権をヘンリクに一任したんだよな……盾のシンボルが描いてある辺り、盾関連の名称になるんだろうか…?
「決定した部隊名を発表する。私達戦団特殊部隊の正式名称を『スヴェル』とし、必要な場合を除きコールサインも『スヴェル』に統一する事を決定した。諸君等には今後スヴェルチームとしてより一層の奮闘を期待する。」
『スヴェル』か……確か北欧神話に登場する盾の名前だったよな。その盾が落ちればその地の山や海の波が全て燃え上がってしまい、その様にならないように防いでいるのが『スヴェル』であると記載されていた。俺達が陥落すればフォートレスの皆に被害が及ぶという点に重ねれば、恐ろしくも奮い立たせられる意味が込められているな…。
……良いね、この身を盾として皆を護ってみせようじゃないか。
「尚、スヴェルチームと改めはするものの、私達の動き方は特殊部隊となんら変わりない……よって特殊部隊としても呼ばれる可能性がある事を留意せよ。あくまでも特殊部隊チームからスヴェルチームへと名称が変化しただけなのだからな。」
要は名前が変わっただけでやる事は一緒って事か……まぁその方がやり易いからそれでいいけどな。俺達の役目は通常の部隊では太刀打ちできない敵の撃破や秘密裏での破壊工作、そして襲来する始まりの使徒への対処だ……精々役目を果たすとしよう。
「以上だ……ここからはモーリスにバトンを渡すとしよう。」
「え、俺か!?」
どうやら無茶ぶりっぽいな……ドンマイ、モーリス。
「そうだなぁ……………あ、そうだ!」
モーリスは端末を取り出し、テーブル中央の立体映像装置を起動させる。映し出された立体映像が動きだし、1機のアナライザーを形成する。見たことない機体だ……新型機か?
「先んじて公開した『CR-1』とは別に、戦団のアナライザーを新型機に更新しようと思ってな。現行機の『SA-36』も十分良い性能はしてるんだが、如何せんコイツも年代物だからなぁ……防衛部隊発足当初から採用されてるベストセラーではあるんだが、所々時代に追い付けてない箇所が見つかってるんだわ。」
戦団が採用する『SA-36』はサクセス・コーポレーションが開発したアメリカ製の『SA-36』をライセンス生産している物であり、性能や素材を含めてアメリカ製と同じスペックのアナライザーである。しかしながらサクセス・コーポレーションが開発したアナライザーの中でも第3世代のアナライザーである為、優秀な性能ではありつつもどこか黎明期の要素が残る代物なのである。
ちなみに第1世代は工業用アナライザーで、第2世代はかなり旧型の黎明期アナライザーである。第2世代のアナライザーを資料で見たことがあるが、なんとも香ばしい鉄板を溶接した無骨なアナライザーだったと記憶している。
「そこで新しく採用するのが、この『SB-18』だ!メルトが乗ってた試作機の『SB-1』をベースにシステムと燃料系を全面改良し、関節部の安定駆動やブースターの出力強化を施しただけで無く、装甲部にタザナイト複合装甲を採用した紛うこと無き次世代機だぜ!」
モーリスの熱い弁舌を聞きつつ、投影されたアナライザーを観察する。フレームは以前よりも少しばかりゴツくなっているものの、要所要所で流線型状のフレームが取り入れられているお陰か、ゴツくなっているにも関わらず機体そのものはより洗練された形状へと進化していた。
フレームはモスグリーンからグレーに変更され、より近未来的な外見へと変化していた。前のカラーも良かったけど、俺はこっちのカラーも好きだな…。
「機能面では新たに長距離望遠システムとナイトビジョンシステムを採用、より多局面での運用が可能になる筈だ。」
暗視システムかぁ……確かになんやかんや無かったもんなぁ。そういえば夜間に戦闘する際には外付けの暗視装置を付けてたんだっけか……外部パーツで精密機器を取り付けるとの壊れやすいんだよな…。
「それで、導入はいつ頃になりそうなんだ?」
「本格的な導入はもう少し後になるだろうな……まだ生産が始まったばかりだし、新型機への移行期間を考えるとまだまだ時間は掛かりそうだぜ。」
まぁ「新しい機体が出来たので使い方覚えて使ってね」なんて前線の兵士からすれば高性能の兵器を使える反面、機体への習熟度がほぼリセットになるからな……ベースが同じとはいえ、『SA-36』から色々と更新が行われている以上、慣れるのには時間が掛かりそうだな。
「……モーリス、私にも1機、『SB-18』を回しては貰えないだろうか?今は修理しながら使っているが、正直私の『SA-36』は限界が近い……雑兵ならともかく、敵のエースや始まりの使徒には今の機体では太刀打ちできん。」
「おう、良いぜ。……つーかお前も早く専用機作ってもらえよ……ガンガン前線に出る癖に専用機持ってないのお前くらいだぞ?」
そういえばヴィンセントは専用機持ってないだっけ……申請は出してるけど原案がないから作れないって、エリア020に行く前に技術部のランドルフさんがボヤいてたっけな…。
「まだ決まってないんだ……もう少し待ってくれ。」
「いやお前さんの機体だから別に良いんだけどよ……原案迷ってるなら手伝ってやろうか?」
「……頼む、私だけでは纏まらん…。」
自分だけじゃどうしようも無くて困ってるヴィンセントなんざ、中々見れるもんじゃないな……ちょっと面白い…笑
「まぁヴィンセントの機体はともかく、『SB-18』に関しては順次生産しつつ陸軍に優先的に配備する予定だ。海軍・空軍・諜報軍に関してはあんまりアナライザーの出番が無いし、俺達スヴェルに関しては専用機持ちがいるからな……ま、ヴィンセント同様『SB-18』が必要なら言ってくれや。んじゃ、ヘンリクに返すぜ。」
「ふむ、ではこれにて解散としよう。皆、ご苦労だった。」
解散となった為席を立ち、自室へと足を運ぶ。このままベッドに飛び込んで眠りにつくのもありだが、残念な事に報告書がまだ残っている。
………というか、後半がほぼ白紙なのだ。
バレる前に、終わらせるとしよう……(泣)
お読み頂き、ありがとうございますm(_ _)m




