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朧火の意志  作者: 布都御魂
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エリア020前線基地


エリア020における革命派の前線基地を破壊した事により、革命派による侵攻は一時収束した。


俺達戦団が雪などの厳しい環境下において戦力を容易に展開できないのと同様に、革命派もまた中継地点となる前線基地を失った事でエリア021に容易に侵攻する事ができなくなっているらしい。


現在、破壊工作を行った前線基地は戦団が戦力を駐留させる事によって革命派から基地を奪取し続ける事に成功している。当初は爆破して基地としての機能を全て停止させる見込みだったのだが、レイダー騒動によって爆破がすぐに遂行されなかった事で戦力駐留までの時間に余裕が生まれたのだ。


レイダーであるガリアルが襲来した事が結果的に、戦団の保有領域を拡大する事になるとは誰が想像できただろうか……レイダー様々だと言いたい所ではあるのだが、実際に戦った俺からすると微妙な気分なので言うのは止めておくとしよう。


爆破されなかった革命派のアナライザーはどうなったかというと、C4を取り外されて前線基地の予備役として運用されるらしい。基本的には戦団製のアナライザーである寒冷地仕様の『SA-36』が防衛を担うそうなのだが、旧型にしろ戦力は多い方がいいという事で運用が決まったのだそうだ。


まぁ無人化すれば動く固定砲台にはなるだろうし、革命派の倉庫に残された弾薬を使用すれば迎撃に使う弾薬費も浮くので一石二鳥である。


そしてそんな前線基地には、本部であるフォートレスから新たに派遣された新設部隊『エリア020前線駐留軍』が配備されている。当初は数名の人間と多数の樹脂人形(ドール)で構成される予定だったらしいが、雪国出身の兵士達がこぞって異動を進言したらしく、当初よりも遥かに人間の兵士が多い状態で駐留軍が設立された。


直属の上司が何故異動したいのかを聞いてみた所、「フォートレスは良い所だが、雪国出身の俺達には脅威であり隣人である雪が恋しい。」との理由なのだとか。また雪かきに追われる生活な気もするのだが、昔よりは雪かきのハードルは下がっているらしいし、彼等にとっては苦では無いのだろうか…?もしくはその大変さも含めての恋しさなのかもしれない。


こうして雪国であるカナダ出身の兵士達の多くが前線駐留軍に異動となり、駐留軍の長官としてカナダ出身の兵士"リアム・ブルックス"大佐が就任した。筋骨隆々の身長190cmという大柄な身体を持ち、戦場ではその体躯を存分に活かした突撃戦を繰り広げていた事から、敵からは『暴虐の(バイオレンス・)巨人(ジャイアント)』という異名で恐れられていたらしい。


戦団陸軍所属の彼は、陸軍との合同演習の時に何度か会ったことがある。異名とは裏腹に人柄は良く、部下達にも慕われている優秀な兵士だったと記憶している。とはいえ演習では持ち前の体躯を存分に発揮しており、対戦チームの兵士達が涙目になって迎撃していたのは記憶に新しい……彼ならば、厳しい環境下と革命派の猛威を乗り越えられるに違いない。


そんな彼等の異動に伴い、エリア020前線基地には本部から多数の兵器が配備される事となった。増産された新型主力戦車である『NT-12』や『改修型T-64』を始め、装甲戦車車両である『ジャッカル』や装甲ミサイル車両である『フラッグ』など、陸軍で主力兵器として運用されている兵器群が多数配備されている。


また航空戦力も配備され、戦団で正式採用されているマルチロール機の『PWS-37』やその無人機仕様の『PWS-37-OTM』、戦団製の戦闘ヘリである『EH-5』や俺の開発した爆撃ドローンである『ヤタガラスⅡ』が正式に配備される事となった。しれっと配備されていた『ヤタガラスⅡ』だが、爆撃運用の他に除雪用の融雪剤散布にも運用されるらしい……思った以上に大事な役割を担っていたが、航空機等で運用される『GEB-25 無誘導爆弾』を積載できる性能があれば、まぁ大丈夫な筈だ。


ちなみに除雪に使用される融雪剤は雪国であるロシアで製造された新しい融雪剤なのだとか。なんでも長年の研究の末、「雪を効率的に溶かし、それでいて環境を汚染せず、その上生産コストが安価」という融雪剤における理想形を生み出した科学者が居たらしい。その科学者が融雪剤を製品化、各国での試験的な運用が行われた結果、今では世界中で普及する製品となっている。


これを開発した研究者は小さな町の研究所に所属する一般研究者だったらしいのだが、まさか小さな町で積み重ねられていた研究が今や世界中で活躍する融雪剤になるとは、開発した研究者も思いもしなかっただろう。


世の中、いつどんな人が世界を変える発明をするのか分からないものである…。


………話が逸れたな。


ともかく、配備された兵器群に加え、新たにアナライザーも多数配備される事となった。寒冷地仕様に改修した『SA-36』は当然の如く配備されるのだが、実はもう一種類新型機が配備される事が決定している。


『SA-36』の次世代機開発の為に製造された『SB-1』や俺の『デュランダル』等の専用機を参考に、サクセス・コーポレーションが新たに製造したのが、新型機の『CR-1』である。


サクセス・コーポレーション初の『寒冷地運用を主目的としたアナライザー』として設計されたアナライザーであり、寒冷地であるエリア020やその他の雪国における運用を目的とした新設計のアナライザーとなっている。


設計資料によると、低温環境下における発動機の安定起動や関節部の安定駆動、溶けた雪などによる継続的な湿潤環境下における金属の腐食を抑制するコーティングや降雪地帯における各種ブースターの安定出力等、各所に寒冷地運用を想定した設計が施されていた。


実際戦団で運用する『SA-36』も、寒冷地仕様に改修しているとはいえ元は温暖な気候条件での運用に焦点を置いた設計のアナライザーである為か、度々機体に不具合が発生したり寿命が短くなる部品が多くなっていた。ヴィンセントの機体にガタが来たのも、寒冷地における運用が機体への負荷を増大させた事によって、機体寿命を短縮してしまったとの見解が、整備スタッフの間で出されていた。


この機体はその懸念点を大きく取り除く事に成功した代物であり、今後はアナライザーの寒冷地運用における重要な主戦力となる事を期待されている。


まだ生産が始まったばかりというのもあり『CR-1』の配備数は20機程度に留まっているそうだが、現在フォートレスの工場にて大量生産されている最中らしく、2週間後には4倍以上の配備数が見込めるのだとか。そうなれば鹵獲した革命派のアナライザーは解体されるか、良くて予備役に回されるだろう……敵に鹵獲されても用途が無いとは、なんとも可哀想なアナライザー達である。


そして『CR-1』が配備され始めた事と、前線基地が自立的に防衛線を敷く事から、エリア020前線基地における銃器及び弾薬の種類も統一される事となった。


まず銃器だが、アサルトライフルは安心と信頼の実績を誇る『AKM』が採用された。雪に埋めても射撃できるその堅牢さは、雪に覆われたエリア020でも確実に活躍してくれる筈である。次にサブマシンガンだが、採用されたのはロシア製の短機関銃である『PP-2000』が採用された。本銃はどちらかというとPDWに分類されるのだが、9mm弾を運用する想定で採用されている為か、サブマシンガンの枠で本銃は採用されている。


機関銃枠には、またまたロシア製の汎用機関銃である『PKM』が採用された。アメリカ製の『M240』を配備しようという案も上がったのだが、後に紹介する狙撃銃と同じ弾薬を運用する方が、補給が容易であるという理由で『PKM』が採用されている。大口径の7.62✕54R<B>弾をばら撒ける本銃であれば、革命派の侵攻を押し留めてくれるに違いない。


そして先程触れたPKMと同じ弾薬を用いる狙撃銃が、これまた同じロシア製の狙撃銃である『SV-98』である。ボルトアクション方式を採用した優秀な狙撃銃であり、サイズアップされているにも関わらずその命中精度と信頼性は高い評価を得ている代物である上に、弾薬をPKMと同一化できるという利点もあって採用に至ったという経緯がある。


最後にハンドガンだが、こちらはオーストラリア製の自動拳銃である『グロック17』が採用された。そう、みんな大好きグロックである。プラスチック製のフレームを採用した故の軽さが売りの自動拳銃であり、その軽量さはアナライザーにおける運用にも一役買っているのである。


グロック17は軽量さ故のマズルジャンプを独自の設計により緩和しているが、アナライザーであれば人間と比べてマズルジャンプを押さえ込むのは容易であり、欠点を封じ込める事が出来る事から採用が決定されたのだ。



以上が、エリア020駐留軍の主要な装備となる。俺も資料として見ただけではあるが、次に前線基地を訪れた際には、革命派が使用していた時とは比べ物にならない程強固な防衛線が構築されているのだろう。



俺の言い方から多少察せるとは思うが、エリア020遠征軍はフォートレスへと帰還する事が決定した。主要戦力である陸軍を一時的とはいえ侵攻の途絶えたエリア020に配備し続ける訳にもいかないし、彼等にも家族がいるのだ……ずっと此処で戦わせ続ける訳にもいかないのである。



よって俺達特殊部隊チームも、エリア020を後にする事となる。短い期間であったにも関わらず、随分と長く戦っていた気がするな…。



ヘンリク達にも長らく会えてないし、久しぶりに会えるのが楽しみだ。





こうして、エリア020攻防戦は終わりを告げた。



一時的とはいえ、平穏が訪れたのは素直に喜ばしい事である。



戦い続けた兵士達も、少しは心と身体を休める事が出来る筈だ。



……とはいえ、戦争はまだ続いている。



未だエリア022では革命派の侵攻が続いているし、エリア020においても、再び侵攻が再開する可能性があるのだ…。




……俺の次なる戦場は、エリア022となる。






……此処での経験を胸に、次なる最前線で戦い抜くとしよう。







お読み頂き、ありがとうございますm(_ _)m

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