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朧火の意志  作者: 布都御魂
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嘲笑と殺意


「コネクション!」


【メインシステム─起動──接続開始──接続完了─ユーザー認証──不明なユーザーが検出されました──機能を停───ザザ─ユーザー認証──メルト─認証完了──オーバーライド──ビジョンシステム─起動──FCS─起動───全システム─オールグリーン】


普段と比べて時間のかかる認証に焦りを覚えながらも、なんとかシステムの起動に成功する。


普段よりも鈍い動きのアナライザーを、端末を弄って調整しつつ、なんとか動ける程度まで出力を上げておく。まだ愛機の性能には程遠いが、今は贅沢を言っていられない。


機体を動かしつつ、兵装を確認する。搭載されているのは西華連邦製の『92式手槍』と呼ばれるハンドガンで、モデル的に9mmパラベラム弾仕様のハンドガンのようだった。恐らくは国内向けの『QSZ-92-9』の方では無く、輸出用の『NP42』の方なのだろう。


『92式手槍』の他にはコンバットナイフが一つのみで、それ以外の兵装は搭載されていないようだった。この機体が安価なのがよく分かる、実に簡素な兵装であった。


格納庫の奥にあった銃器保管庫から使えそうな銃と弾薬、予備のマガジンを引っ張り出してマガジンラックに収納しておく。持ち出した銃は革命派がよく運用しているサイズアップ版のG3であり、大口径の7.62✕51mmNATO<B>弾を使用するバトルライフルとなっている。少々年式の古い銃ではあるが、この大口径弾薬であれば始まりの使徒(アポストル)相手でも多少は活躍してくれる事だろう。


後は壁に立て掛けてあったマチェットを鞘の固定器で腰部に取り付け、更にその横に立て掛けてあった金属製のタワーシールドを左手に持った状態にして兵装を確定する。正直心許ないが、今出来る最上級の装備なので我慢するしかない。


近くの入り口をアナライザーで蹴破り、外の広場へと躍り出る。ガリアルに銃口を向け、フルオートで7.62✕51mm弾を叩き込んでいく。


装甲の薄い関節部にはダメージが入っているようだったが、全身を覆う外殻装甲は全くと言っていい程ダメージが入っておらず、ほぼ全ての銃弾が弾かれてしまっていた。バトルライフルの銃弾を弾くなんざ、反則にも程がある。


『鬱陶しい……貴様から片付けてやるぞ、特異点よ。』


特異点……?俺に向けて言っている事から、その特異点とは俺の事なのだろうが……一体どういう意味だ…?


『危ないっ!』


「っ!」


咄嗟にタワーシールドを前に突き出すと、ガアンッと音を立てて大斧とタワーシールドが衝突し火花を散らす。物凄い衝撃がアナライザーを襲い、機体がグラッと揺れ動く。なんとか倒れない様に姿勢を保ちつつ、盾を傾けて斧を地面へと受け流す。


叩きつけられた大斧が地面を抉り、固められた雪を巻き上げるように地面を粉砕する。その脅威的な威力に肝を冷やしつつも、G3を突き出してフルオート射撃をお見舞いする。先程よりも近い距離からの射撃というのもあり、多少なりともダメージは通っているようであった。


とはいえ敵の装甲は強固であり、銃弾はどれも貫通には至っていないようだった。想定以上の硬さに舌打ちしつつ、横から薙ぎ払われた大斧をブースターを活用したジャンプでギリギリ回避する。回避行動を取りつつG3のボルトハンドルを引き、溝に引っ掛けてからマガジンを取り外して新しいマガジンを差し込み、ボルトハンドルを叩き落として遊底を前進させる。


G3の最大の欠点はマガジン交換の手間が多い事であり、迅速にマガジン交換をしたい戦場においては大きな隙を晒す要因にもなり得てしまう。だからこそ普段はG3を使用する事はないし、戦団でも採用される事はまずないのだが……まさかこんな敵地で、それも強力な特殊個体(ユニーク)と戦う際に使うなんざ夢にも思わなかった。


なんとかギリギリで回避行動を取りつつ、G3でダメージを蓄積させていく。多少なりともダメージが入っているのは幸いなのだが、残念ながらその程度のダメージで倒せる程、ガリアルは弱くない。


目の前に迫り来る大斧を盾で防ぎ、機体に直撃する事が無いように耐え続ける。今は受け切れているが、もうそろそろタワーシールドの耐久度に限界が迫っている……このまま受け続けていればいずれはシールドを破壊され、大斧の直撃をくらう羽目になるだろう。


それに加えてこの機体……関節部の耐久性が低すぎる…!先程から大斧を盾で防御する度に関節部から軋む様な音が聞こえ続けている……下手すりゃ盾より先に腕が吹き飛ぶかもな…。


「この機体のせいで死にましたなんて、笑えねぇな!」


このまま受け止め続けていても埒があかない為、防戦一方の状態から一転して打って出る。G3をフルオートで連射しつつ突撃し、ガリアルの懐へと入り込む。


『死に急ぐとは愚かな……』


「うっせぇだったら仕留めてみやがれ!!」


弾切れとなったG3を後ろに放り投げ、代わりに腰からマチェットを引き抜いてガリアルの関節部に勢い良く突き刺す。幾ら頑丈な装甲に包まれているとはいえ、関節部が弱点となるのはレイダーも同様の様であった。


突き刺したマチェットが左腕の関節を破断し、断面からスパークを瞬かせる。一度引き抜いてから腕を思いっきり蹴り飛ばし、その反動を利用してガリアルから距離を取る。


『貴様……矮小な人間の分際でこの我に歯向かうとは…!』


「はっ、その矮小な存在に腕もがれた気分はどうだ?」


『貴様ァ……!!』


……めっちゃブチギレてやんの笑


物凄い憎悪の視線を向けるガリアル。正直面倒な気もするが、俺にヘイトが向くのであれば都合がいい……ヴィンセント達に意識が向かないのであれば好都合だ。


ガリアルが片腕で斧を振り上げ、勢い良くこちらへと振り下ろしてくるのをサイドステップで回避する。何度も何度も振り下ろされる斧を見切りつつ回避し、次なる攻撃の機会を伺う。


『殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す……』


「なんコイツ怖。」


物凄いキレ散らかしてこちらに斧を振り下ろしてくるガリアルにドン引きしつつ、斧による連続攻撃を回避する。片腕なのもあって速度が落ちている為か、両腕の時よりも回避しやすい……そして回避され続けているという事実が、ガリアルの怒りをより煽る結果となってしまっていた。


絵面だけ見れば実にシュールである。


とはいえ、このまま回避し続けるというのも現実的ではない。俺も人間である以上、いつかは集中が切れてしまう上に、この機体は革命派からパクった西華連邦製の量産機だ。関節部やフレームの至る所から軋む音が聞こえる上に燃費が物凄く悪い……いずれは動けなくなる可能性が高いな、コレ…。


仕方ない、この辺でケリをつけるか……!


邪魔なタワーシールドを投棄し、力任せの振り下ろしを回避した直後に前へと距離を詰めつつ、マチェットを右肩の関節部へと滑り込ませる。食い込ませたマチェットを保持した状態でブースターを噴射、関節を捻り切るように思いっきりマチェットを捻り、ガリアルの右肩の関節に強烈な負荷を加えていく。食い込んだマチェットは肩の関節を破壊しつつ分断し、刃こぼれを起こしながらもガリアルの右腕を肩口からもぎ取った。


『何ィっ!?』


ねじ切った際のブースター噴射を利用してそのままガリアルの後方へと周り、首筋へ坂手持ちにしたマチェットを力任せに突き刺す。装甲の隙間を狙い突き刺したマチェットは少しばかりの手応えを生じさせた後、刃こぼれした部分から砕け散るように折れてしまった。


「ちっ、仕留め損ねたか…。」


折れたマチェットを投げ捨て、小さく舌打ちする。


マチェットが折れた事で十分な刺突が行えず、ガリアルにトドメを刺すことができなかったのだ……まぁ量産品のマチェットの割には、始まりの使徒(アポストル)相手に良く持ち堪えた方だろう。とはいえ、貴重な近接武器を失ってしまったな……。


機体に搭載されたナイフでも使ってやろうかと考えていたその時、上空から機械音が鳴り響き始めた。ガリアルから距離を取りつつ空を見上げると、4機の戦闘ヘリがこちらへと飛来して来ているのが確認できた。


機体の先端に向けて少し尖った特徴的なフレームはトルコ陸軍が運用した戦闘ヘリ『T129ATAK』を彷彿とさせ、大きめに設けられたスタブウィングには赤外線誘導方式を採用した戦団空対地ミサイルである『AAMS-40A』が4発ずつ搭載され、その隣には同じく戦団製の空対空ミサイルである『AIM-130サーペント』が1発ずつ搭載されていた。兵装からして恐らく、あのヘリは戦団で正式採用している戦団製の戦闘ヘリ『EH-5』なのだろう……製造され始めたばかりの新型機であり割と良いお値段がした筈なのだが、マーカス少将も良く購入したものである……しかも4機。


一応有人機である『EH-5』だが、専用の機械を取り付ける事で簡単に無人機化できる代物である為、恐らく少将はその無人機化装置も購入したのだろう……凄い人だな、ホント…。


4機の『EH-5』が一斉に空対地ミサイルを放ち始め、満身創痍のガリアルへと正確に直撃させる。着弾と同時に爆発したミサイルがガリアルの外殻装甲を砕き、内部へと浸透ダメージを与えていく。


『グゥッ!?……っ、クソが!この借りはいつか必ず返してやる…!!首を洗って待っていろよ、人間…!』


「満身創痍で何言ってんだコイツ。」


『貴様……貴様だけは、いつか必ずこの我が殺す!』


ガリアルはそう言い残し、機体のブースターを思い切り噴射して空へと飛び去って行った。負け惜しみ感の強い、実にテンプレ感溢れる退却だったな…。


まぁ何はともあれ、だ…。


なんとか、生き残れたな……まぁ途中から煽ってたけども。


最後のヘリは恐らく、ヴィンセント達が要請してくれたのだろう……決定打が無かったのもあり、あのタイミングでの航空支援は正直助かった。


しかしまぁ、よくこの機体で生き残れたものである。モニターを見ると燃料計のメーターは赤いエリアを指し示しており、あと少しで燃料切れになる事を示していた。あと少しヘリが来るのが遅ければ、燃料切れで行動不能になっていた可能性が高いと思うとゾッとする。……例えガリアルの両腕が無くとも、行動不能ともなれば脅威でしかないのだから。


大きく息を吐いて、シートへともたれ掛かる。戦闘中は気にならなかった疲労感が一気に体を襲い、気怠さが身体中を支配していく。どうやら思ったより疲労が溜まっていたらしい…。


『メルト君──無事───返事を──』






外から聞こえてくるヴィンセント達の声を聞きながら、俺は意識を手放した。






お読み頂き、ありがとうございますm(_ _)m

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