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朧火の意志  作者: 布都御魂
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破壊の使徒


いつも通りステルス迷彩である"インビシブル"が搭載されたパラシュートで、エリア020における革命派の活動拠点へと降下する。規模から察するに、ここは前線への戦力や兵站を補給する前線基地のようだった。


「……前線基地の割に随分とデカいな…。」


簡素な構造ではあるが倉庫や格納庫が幾つも建てられており、その横には兵士達の集う兵舎も建てられていた。前線基地にも関わらず、かなりの規模である事が伺える。


「それだけ戦力を温存していたという事なのだろう……正直想定以上の規模ではあるがね。」


ヴィンセントも前線基地の規模に驚いているようだった。まぁエリア022の前線基地と比べて明らかに規模が大きく、保有しているであろう戦力も格段に多いのだから無理はないのだが。


「……倉庫の数が多い、手分けして設置しよう。アンジェは私と来い、ジャックとメルト君は奥の倉庫を頼む。」


「「了解。」」


「オッケー。」


ヴィンセント達と別れ、基地の奥側にある倉庫を目指して駆け出す。防犯カメラやセンサー等の設備が無い事を確認してから、倉庫の入り口付近に接近する。


入り口は……流石に施錠されているか。


「メルト、こっちダ。」


ジャックが呼ぶ方に走ってみると、ジャックは倉庫の換気用に設けられた小窓の前に立っていた。人ひとりギリギリ通り抜けられそうなくらいな窓ではあるが、一度鞄を下ろしてから潜れば問題なく通れるな。ジャックが先に中へと侵入し、その後に続く形で俺も中へと忍び込む。内部は照明が落とされているのもあり非常に暗いが、ヘルメットのフェイスガードに備え付けられた暗視装置がある為視界はある程度良好であった。


とはいえ暗く見え辛い事には代わり無いので、必要に応じてライトを使用する必要はありそうだが。


倉庫の中には多数のアナライザーが格納おり、どうやらこの倉庫全体がアナライザー用の格納庫であるようであった。これまで戦ってきたドイツ製の寒冷地仕様アナライザーである『アルゲマインB3』やエリア022でも戦った旧型アナライザーの『アルゲマインA6』、そして秘密裏に供与されていたであろう西華連邦製の量産型寒冷地仕様アナライザー『氷羅Ⅱ』もまた、この格納庫にて眠っていた。


『氷羅Ⅱ』は生産性と寒冷地での活動性能に特化させた量産型のアナライザーであり、シンプルな箱型の頭部に菅笠のような金属パーツが取り付けられた特異な見た目が特徴的なアナライザーとなっている。それ以外のボディフレームは実にシンプルな見た目をしており、目立った特徴といえば肩部や脚部に取り付けられたハニカム構造模様の装甲板くらいであり、性能よりも生産性に重きを置く西華連邦特有の設計となっている。


この『氷羅Ⅱ』には次世代機である『氷羅Ⅲ』や新型の『冷虎Ⅰ』が存在しており、西華連邦では既に最新型のアナライザーでは無くなっているらしいのだが、その生産性の高さから今尚生産され続けているベストセラー機であるのだと、前にモーリスから貰った各国のアナライザー資料に掲載されていた。


「メルトは西華連邦製、俺はドイツ製のアナライザーを担当としよう……急ごうゼ。」


「了解、さっさと全部吹き飛ばしてやろう。」


近くにあった『氷羅Ⅱ』から順に、C4をコックピット付近の装甲に取り付けていく。鞄の容量の殆どをC4にしているお陰で、ここにあるアナライザーのほぼ全てに爆薬を設置する事が出来そうだ…。


にしても随分とC4を取り付け易い、平坦かつシンプルな装甲である。念の為持ってきておいたテープの出番が無いほどに、C4を設置しておくのに都合の良いスペースがコックピット上部に存在していた。大方整備の際に使う工具を一時的に置いておける窪みなのだろうが、まさか敵にC4の取り付け箇所として使われるとは夢に思わないだろう。


鞄の中にあったC4を全て取り付け終え、ジャックと合流してから格納庫を後にする。鞄の中身が無くなったお陰で随分と軽くなった鞄を背負い、ヴィンセント達のいるもう一つの倉庫へと向かおうとしたその時だった。


──ズガァァァァァァァァァァァァン!!!!


物凄い音が、革命派の兵舎の方向から響き渡る。爆弾が起爆した時とはまた違う、建前が何かに()()()()()()()様な音。


「な、なんだ!?」


「──2人とも!」


唐突な轟音に驚きを隠せないでいると、もう一つの倉庫の方からヴィンセントとアンジェが走ってきた。


「ゴースト1、何があったんダ!?」


「分からん!至急現状を確認しに行くぞ!」


ヴィンセントに追従する形で、音の発生源へと向かって駆け出す。前線基地全域に響き渡る程の音だ、一体何が───


「………は?」


目を疑う光景が、そこにあった。


上から押しつぶされる様な形で完全に倒壊している兵舎に、()()()()()()が佇んでいた。


装甲に包まれた外見はアナライザーに酷似しているが、あれは人間の操る機械などではない。


白と黒、そして黄色で塗装された禍々しくも神々しい異質な機体。


一般的なアナライザーと比較すると少しばかり生物的な外殻装甲を持つ、人間のアナライザーではないナニカ。


俺は……いや…此処にいる4人全員が、その正体を知っていた。


遥か宇宙から襲来した、()()()()()()




───侵略者(レイダー)




俺が防衛部隊に入る前にエリア021の採掘場を襲撃し、その後も迎撃戦を繰り広げる事となった異空からの侵略者。最近は珍しく長期間目撃されていなかったため正直忘れかけていた存在であったレイダーが、革命派の兵舎を押し潰す形で襲来していたのだ。


「れ、レイダーだと!?何故このような場所に……」


「お、オイ…こっち見てんゾ…!」


倒壊した兵舎に佇むレイダーはゆっくりと此方へ視線を向け、こちらへと向き直る。今まで戦ってきた雑兵のレイダーとは違う、異質な雰囲気を漂わせていた。


『───見つけたぞ、"特異点"。』


唐突に喋り始めるレイダーに驚きを隠せないまま、呆然と立ち尽くしてしまう。


『お前が、"イヴォア"を退けた人間だな。』


イヴォア……聞き覚えがある。


戦団が設立される前、レイダーの掃討を行っていた際に出会った大剣を振り回す不明機体を操るレイダーの名前だ……まさかコイツ───


『我はガリアル、第4の始まりの使徒(アポストル)にして『深淵(アビス)』に名を連ねる者。貴様等を殺し、終焉を与える者だ。』


……始まりの使徒(アポストル)。レイダーの上位個体である特殊個体(ユニーク)に属し、強力かつ異質な力を持って生命を蹂躙する侵略者達の名…。目の前のコイツは、かつて戦った始まりの使徒(アポストル)の末席であるイヴォアよりも上の、深淵(アビス)に名を連ねる第4の使徒。


『名乗りは終えた……では───死ね。』


ガリアルと名乗った始まりの使徒(アポストル)が背負っていた巨大な斧を掴み、こちらへと振り下ろす。


咄嗟に後ろへと飛び退き直撃を免れたものの、先程までいた箇所は地面が大きく砕け散っていた。ヴィンセント達もなんとか回避していたのか、起き上がりつつ体制を整えている所だった。


『外したか……ならばもう一度だ。』


「っ、走れ!!総員撤退だ!!」


ヴィンセントの焦りが混じった指示に従い、急いてその場を離れる。必死に走りながらも、次のプランをなんとか練っていく……でなければ死ぬ羽目になるからだ。


このまま走っていてもいつかは追いつかれるし、此処には俺達のアナライザーは無い。対アナライザー用の兵器も無ければ、対戦車用の兵器すら無いのだ。かつてない程危機的な状況に、焦りと混乱が思考の邪魔をし続けてしまう。


何か手立ては───


「っ、そうだ!少将の戦闘ヘリ!」


マーカス少将が自費で購入し配備した戦闘ヘリを、支援に回して貰える事を思い出す。


「確かに、要請はすべきだろうな……だが、ヘリであのレイダーを食い止められるカ…?」


「いや無理でしょ!兵舎ぺちゃんこだったんだよ?ヘリなんて一撃でやられちゃうって!」


思考を巡らせ、何か良案がないか模索する。レイダーと戦う以上、アナライザーは必須となるがそのアナライザーは今手元に無い…。あるとすれば革命派の保有するアナライザーくらいだが………いや待て。


……格納庫に幾つか、C4を仕掛けていない機体があった筈だ。他の機体の爆発に巻き込む事を想定して、中央付近のいくつかにはC4を設置していない機体が存在している……その機体ならば…!


「革命派のアナライザーを拝借するのはどうだ!?」


「た、確かに!まだ爆発はさせてないもんね!」


「いや、認証が通らないだろう……動かせない可能性が高い…。」


しまった、認証があるのか。アナライザーに搭乗する上で、必ずパイロットの認証をしなければならないのが現代のアナライザーだ。昔はシステム的に不可能だったらしいが、今ではどの国においてもシステムによる認証が採用されている。敵の鹵獲を防ぐ為の認証だが、今まさに俺達に牙を剥いてしまっていた。


「──いや、コイツがある。メルト、これ使エ!」


そう言ってジャックが放り投げてきたのは、厚みのある鍵の形をした端末であった。


「そいつはオーバーライドキー……システムの認証を上書きして、アナライザーを動かせる代物だ。そいつを使えば革命派のアナライザーが使える筈だゼ。」


「こんなモン、いつ作ったんだよ?」


「珍しい機体がありゃ鹵獲してやろうと思って作っておいたんだよ……持ってきておいて正解だったナ。」


しれっと鹵獲しようとしていたジャックはさておき、これを使えばアナライザーを使用できる…!


「3人とも、時間稼ぎを頼む!俺がアナライザーを確保して来る!」


「よし、君に任せよう……ここは私達が引き受ける。」


「そんじゃコイツで目隠しダ!!」


『む……目くらましか…?』


ジャックが投擲したスモークグレネードが白い煙を吐き出し、俺達の姿を視認できないように覆い隠す。


「今だ、行け!」


「あぁ!」


全速力で煙の中を突っ切り、先程出てきた格納庫へと再び侵入する。窓に飛び込む形で滑り込み、すぐ様起き上がって目当てのアナライザーを探し始める。ライトを付け、限られた視界の中でなんとか目的のアナライザーを探し出す。隠密行動にライトの光なんざご法度だが、今はそんな事を言っている場合ではないのだ。


「………見つけた!」


C4の取り付けられていない、西華製の『氷羅Ⅱ』をよじ登りコックピットを開けて中へと滑り込む。旧型の『アルゲマインA6』やその寒冷地仕様機である『アルゲマインB3』に比べれば、この『氷羅Ⅱ』の方が幾分かマシな筈だ。


オーバーライドキーの下半分を取り外し、被っているヘルメットの窪みに装着する。この窪みは元々、戦闘用ヘルメットを簡易的なアナライザー用ヘルメットへと変えるコネクターユニットを装着する場所であり、専用のヘルメットには劣るものの戦場でそのまま乗り込む事を想定した機能を持つヘルメットなのである。


このオーバーライドキーもその規格に合うように作られているのか、すんなりヘルメットの窪みにキーを取り付ける事が出来た。あとはキーの上半分をガイドクリップで端末に固定すれば……準備完了だ。


シートに深く座り、起動句を唱える。



「コネクション!」




さぁ……頼むから動いてくれよ…!




お読み頂き、ありがとうございますm(_ _)m

レイダー、始まりの使徒、久々の登場です……笑


お忘れの方はep.13〜16を参考までに……(*'ω'*)

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