降り注ぐ鮮血
ブースターを噴かせて宙を舞い、国境線へと接近してくる革命派の輸送ヘリを見据える。輸送ヘリの数は計4機で、その周囲には護衛の戦闘ヘリが8機程、輸送ヘリの周囲を囲む様に展開していた。
俺達の前方には既に国境線警備隊が出撃させた攻撃ヘリの『AH-64D』2機が迎撃を開始している様だったが、数が少ない為か劣勢に立たされていた。
「こちらエリア020遠征軍特殊部隊チームだ!加勢するが宜しいか?」
『──ぞ、増援か!頼む、俺達だけじゃ力不足なんだ!』
「了解、これより迎撃を開始する──行くぞ、二人とも。」
『『了解。』』
MG42で弾幕を張り、警備隊の『AH-64D』が後退するのを支援する。味方が十分な距離を取れた事を確認してから、弾幕を攻撃ヘリの方へとしっかり向けていく。
サイズアップされた事により機関砲の如きサイズへと変化したMG42が猛烈な勢いで銃弾をばら撒き、戦闘ヘリの貧弱な装甲へ次々と風穴を開けていく。重量の関係で厚みのある装甲を搭載できない戦闘ヘリにとって、アナライザーの装甲すら貫通するサイズアップ版の7.92mm弾はオーバーキルでしかなかった。
コックピットに直撃した銃弾がパイロットをミンチへと変え、貫通した銃弾が機関部やスタブウィングに直撃して大爆発を引き起こす。上空で爆発したヘリが火達磨になりながら空中分解し、重量に導かれるように雪の降り積もるエリア020の大地へと落下していった。
僚機を撃墜された戦闘ヘリが負けじとミサイルや機関砲で反撃してくるが、その程度で撃墜される程俺達は弱くない。既に幾つもの戦場を乗り越えてきているのだから、こんな所で無様な姿を晒す訳にはいかない。
ミサイルを撃ち落としつつ機関砲を回避し、戦闘ヘリに接近しながら7.92mm弾を叩きこんでいく。正直このクラスの銃弾を使う必要があるのかというと別に無いのだが、急遽出撃となった為に弾幕運用に向く銃がコイツしか無かったのだ。
火達磨となって落ちて行くヘリを素通りしつつ、輸送ヘリへと近づいて行く。コイツさえ落としてしまえば任務完了なのだから、さっさと落としてしまうに限るのだ。
輸送ヘリのすぐ近くへと接近したその時、輸送ヘリの異変気が付く。ヘリの兵員室がある部分の扉が開かれているのだ。違和感に眉を顰めていると、開かれた兵員室からパラシュートを背負った兵士達が次々と飛び降り始めた。
「オイオイ……正気かよ…。」
敵のアナライザーが間近にいる状態で、降下の安全が全くといっていい程に確保されていない状態で降下を始めるなど、前代未聞と言っても過言では無い。普通は隠密行動によって秘密裏に降下するか、最低限の安全を確保した上での降下がセオリーとなるのだが、彼等がやっているのはそのどちらもを否定した完全に正気ではない行動であった。
「くそっ──アンジェ、輸送ヘリの撃墜を頼む!俺は降下を開始した空挺部隊を叩く!」
『り、了解!』
MG42のキャリングハンドルをしっかりと掴み、普段よりも正確に狙いを定めた状態で降下する兵士達に向けて引き金を引く。アナライザーや戦闘ヘリと比べて遥かに貧弱かつ脆い人間が、装甲すら貫通するサイズアップされたライフル弾の直撃を受ければどうなるかは火を見るよりも明らかであった。
直撃と同時に肉体が弾け飛び、エリア020の大地に雪ではなく血の雨が混じり始める。消し飛ばされずに残った腕が宙を舞い、鮮血を撒き散らしながら地上へと落下していった。
消し飛ばされた仲間を見上げる兵士達の目は、既に怯えが宿ってしまっていた。まぁ目の前で先程まで話していた仲間が銃弾で木っ端微塵となり、肉片を散らしながらその命を散らしたとなれば、次にその運命を辿るのが誰なのかは分かりきった事であった。
『クソッタレが!!』『人の命を何だと思ってやがる!!』『この、野蛮人がぁ!!!』『仲間を、撃ち殺しやがって…こんな事して許されると思うなよ!』
コックピットのスピーカー越しに、実に心の篭った罵詈雑言が聞こえてくるが別に何とも思わない。というか自分達にとって特大のブーメランである事を、彼等は理解しているのだろうか?
人の命云々言っているが、侵略行為によって人々を危険に晒し続けているのはコイツ等だし、野蛮人も何も「そこにいると邪魔だから」という野蛮な理由で攻めてきたお前達の方がよっぽど野蛮だと思う。
あと許されるも何も、ジュネーヴ諸条約の第1追加議定書にある第42条において、空挺部隊は降下中においてもこの条における保護を受けないとなっている為、別段降下中に撃ち抜かれても文句は言えないのである。というか自分達が侵略の為に降下してる癖に撃墜されたら文句言うのは、はっきり言ってナンセンスにも程がある。
革命派の連中の程度が知れるな、ホント…。
引き金を短く引き、擬似的なバースト射撃で的確に兵士達を撃ち落としていく。撃墜された兵士のパラシュートが他の兵士に絡みつき、空中で身動きが取れなくなっていたのでライフル弾で救ってやる。どうせこのまま放置しても重力によって落下死するだけなのだから、ここで死なせてやるのが慈悲というものだろう。
……まぁ運良く生き残ってても狩るんだが。
しかしまぁ、空が随分と凄惨な光景になってきた。血塗れのパラシュートにぶら下がった肉片、降り注ぐ血の雨と宙を舞う血塗れのコートがエリア020の上空を地獄絵図へと変える。咄嗟の判断であったとはいえ、アンジェに行かせなくて正解だったかもしれない…。
普段明るく元気な彼女であっても、この光景はキツいものがあるだろう……いくら同じ軍人と言えど、そういったモノへの耐性は人それぞれなのだから。
こういうのは、容赦なく殺れる奴がやればいい……彼女も覚悟は決めているだろうが、態々その光景を見せてやる必要も無いのだ。
ちなみに俺は特に問題無くこの光景を見ることができる。グロい光景に対する不快感は抱くが、自分の手でこの光景を作りだした事に対する嫌悪感や罪悪感は特にない。これが一般市民や大切な人達であればともかく、その大切な人達の命を危険に晒す奴らなんぞ至極どうでもいいのだから。
精々勝手に野垂れ死んで欲しいものである……可能なら盛大に苦しみ、自らの行いを後悔しながら…だ。
とはいえ投降した兵士を態々殺す様な事はしないので安心して欲しい……俺が殺すのはあくまでも大切な人達を危険に晒すクソ野郎共であり、決して無差別に命を刈り取りたい訳ではないのだから。
輸送ヘリから飛び降りた兵士を全て撃ち落としたのを確認してから、付近の攻撃ヘリの掃討に取り掛かる。ヘリのコックピット越しに何かを叫びつつ機関砲を乱射しているが、残念ながら何も聞こえないので気にせずに撃ち落とす。
大方「よくも仲間を」とか「地獄に落ちろ」的なニュアンスの事を叫んでいるのだろうが、そう思うのなら端から侵攻してくるんじゃねぇよ、マヌケ。
付近を見回し、敵影が残っていないかどうかを確認する。少し離れた位置にいるジャックや輸送ヘリを撃墜してくれていたアンジェも、無事に任務を終えているようだった。
「こちらメルト、空挺部隊及び付近の攻撃ヘリの撃墜を確認……作戦終了だ。」
『こっちも終わったよー!輸送ヘリ、全機撃墜だよー!』
『他の攻撃ヘリも全部落としてあるゼ……帰るとしようヤ。』
レーダーにも敵影は無し……任務完了だ。
「総員反転、帰投しよう。」
機体を反転させて、ブースターを噴かせて国境線の方へと帰投して行く。よく見ると先程後退して行ったAH-64D達が、コックピット越しに手を振りながら俺達を出迎えてくれていた。
アナライザーで手を振りつつ、出迎えてくれたヘリ達と共にエリア020を後にする。
さて……無事に終わった事だし、さっさと帰って飯の続きといくとしよう…。
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前方から飛来してくる3機のアナライザー達。
彼等はエリア020遠征軍の特殊部隊チームであり、戦団が設立された当初から数々の戦線で輝かしい戦績を残してきた戦団のエース達である。
そんな彼等の中央を飛ぶ新型機のパイロットが、一番日の浅いパイロットであるなんて、誰が想像できるだろうか…。
彼の戦いは凄まじく、俺達が苦戦していた革命派の攻撃ヘリ達をいとも簡単に撃墜し、空挺降下を強行した兵士達を情け容赦なく撃ち落としていた。戦場に身をおいてから日が浅い新兵程、そういった状況下では引き金を引く事に躊躇するものなのだが、彼にはそういった躊躇が一切見られなかった。
歴戦の兵士でも乗っているのではと錯覚してしまうが、乗り込んでいるのはまだ20代の若い兵士なのだとか……息子と同じくらいの歳で、あれ程の熟練度と覚悟を備えているとは……。
敵にすれば恐ろしい事この上ないが、味方であるならば頼もしい事この上ない。
このような人材を見つけたヘンリク氏は、余程の慧眼をお持ちなのだろう…。
何はともあれ、彼等を出迎えるとしよう……国境線が戦火に晒されていないのは、此処にいる彼等のお陰なのだから。
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