表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
朧火の意志  作者: 布都御魂
78/94

雪上舞う黒き竜


久しぶりの愛機のコックピットは、修理以前と殆ど変わらない、いつものコックピットであった。


細かな変更点や計器の状態を確認してから、シートに座った状態で起動句を唱える。


「コネクション」


【メインシステム─起動─接続開始─接続完了─ユーザー認証──メルト─認証完了──ビジョンシステム─起動─FCS─起動──全システム─オールグリーン】


前よりもクリアになった機械音声がスピーカーから流れ、モニターや計器、各種ランプに光が灯る。モニターはUIが更新されており、より見やすいものへと換装されていた。


ヘルメットを介した意識操縦を駆使して、機体を動かしてみる。直前まで『SA-36』を使用していたのもあるんだろうが、前よりも動作が軽やかな気がする……これなら幾らでも戦場を駆け回れそうだ。


兵装管理システムにアクセスして、この機体に搭載されている現在の武装を確認する。改修前と同様に右腕には展開式破砕槌『オリオン』が、左腕には拡張式複合装甲盾『アテナ』が搭載されており、特に際立った変更点は無いようだった…まぁ改修前から十分すぎる性能だったしな。


腰部に搭載されているコンバットナイフには変更が加えられているようで、より頑丈な素材へと更新されているらしい……詳細情報によると鉄骨くらいであれば強引に切断できるらしい。なんだそのナイフ…。


この感じだと、改修を加えられているのは兵装面じゃないらしい……となると機体性能面か?


機体ステータス画面にアクセスすると、想定以上に色々と改修されていた。タザナイト複合装甲の採用部分拡大、アザーライト燃料効率の上昇、ブースター出力の上昇、ブースター耐久性能の上昇、積載性能の上昇、メインカメラ性能の上昇、etc……と、機体の至る所がより高性能となるように仕上げられていた。


にも関わらず機体の使用感が前と殆ど差異が無いのは、運用する上での誤差によるパフォーマンス低下を防ぐ為なのだろう……改修に携わった技術部の面々には頭が上がらないな…。


それによく見ると機体の各所に何かしらのユニットを搭載する箇所が設けられている……特に追記が無いという事は、まだまだ伸び代があるという事か。


それに何時でも戦場で使用できるようにと、搭載されている兵装は俺がよく使っている兵装達であった。メインアームは何時ものAKMで、改修前から俺が使用している物をそのまま装備させてくれているようだ。コイツさえあれば最悪他は要らない程度にはコイツを信頼しているので、手元にこのAKMがあるのは非常に安心感がある。


もう一つのメインアームには、ドイツ製汎用機関銃である『MG42』が搭載されていた。コイツは今まで様々な戦場で使用してきた俺のお気に入りの一つであり、機関銃屈指の連射性能を誇る優秀な兵器である。伊達に『ヒトラーの電動ノコギリ』と言われてはいないのだが、コイツを革命派とはいえドイツの連中に向かって使用するのは如何なものなのだろうか……まぁいいか。


サイドアームはいつものロシア製ハンドガンの『MP-443』で、近接武器は専用武器の『エターナル』だった。特に変更点は無いらしいが、いつも通り運用できる様なので特に不満はない……というか変更要素がない。


より洗練された機体として生まれ変わった愛機は、より敵を破壊し尽くすのに適した改修が為されている……これなら迫りくるエリア020の革命派連中も薙ぎ払える筈だ。


ちなみにこの機体は寒冷地塗装はされていない。雪の積もるエリア020では物凄く目立つ事にはなるが……まぁ『エターナル』とAKMを持って戦場を駆け巡る新型機なんざどう偽装しても目立つので、もう偽装しなくても良いだろう。むしろ俺が目立つ事で、ヴィンセント達にヘイトが向きづらくなる可能性が高い。


さてと……機体のチェックも終わった事だし、そろそろ出撃するとしようか。


マイクをオンにして、外にいるモーリスへと話しかける。


「モーリス、ありがとな!行ってくる!」


『おうよ!試運転ついでに暴れてこい!!』


モーリスに礼を言ってから、防壁の門をくぐり抜けてエリア020へと足を踏み入れる。外では補給を終えたヴィンセント達が兵装の最終チェックをしている所だった。


『あー!メルト新しい機体乗ってるー!!』


『ほぉ〜随分とイカした機体じゃねぇカ!』


機体を見てはしゃぐアンジェとジャックを他所に、ヴィンセントはいつも通り冷静だった。


『修理と改修は終わったようだな……期待させて貰うとしようか、メルト君?』


……前言撤回、ヴィンセントも内心はしゃいでやがった。声色がいつもより明るくなってんぞ…。


「ははっ、任せてくれ。そんでヴィンセント、ちょっと相談なんだが……」


俺はヴィンセントに、機体が目立つ事を逆手に取った戦術プランを提示する。俺が前線に出て敵を薙ぎ払い、遠距離からその支援をお願いするという内容だ。


『なるほど、確かに合理的だが……メルト君の負担が大きすぎやしないかね?』


「確かに大きいがこの機体で暴れる以上、付近に味方がいない方がやりやすいんだよ。それにこの機体の試運転も兼ねてるしな。」


『君がそれで良いならそうするが……無理はするんじゃないぞ?必要な時は無理せず応援を要請しろ。』


「了解だ。」


無理したばかりに舞い戻った愛機を壊すなんて事になったら目も当てられないからな…。


『あ、私遠距離の武器持ってないや……どうしよ?』


そう言えばそうだった。アンジェは軽量機を運用するが故に使用する武装の殆どが近距離型の武器となっている……ヴィンセントのように中距離でも安定した性能を持つ アサルトライフルならともかく、拳銃弾を使用する短機関銃では遠距離での戦闘には適さないのだ。


「あ、だったら俺のデグチャレフ使うか?」


『いいの!?使う使う!』


俺は近距離で暴れるから、『SA-36』で使っていたデグチャレフはもう使わない。だったら遠距離攻撃手段のないアンジェが使用する方が、兵器も腐らずに運用できるだろう。


「機体の所に弾薬と一緒に置いてある筈だから取っておいで。」


『うん!取ってくる〜!』


アンジェが駆け足でライフルを取りに行った……アナライザーの状態で。……凄い雪が舞い上がってしまっているが、まぁ気にしない方向でいこう。


アナライザー越しに若干ピリッとした雰囲気を醸し出しているヴィンセントも、気にしない方向でいく事にする………アンジェ、はしゃぎ過ぎだ。


少しして、デグチャレフを抱えたアンジェが戻ってきた。ヴィンセントは小言を飲み込んだのか、少し間を置いてから出撃の号令を始めた。


『………では再出撃を開始する。メルト君は上空ろり革命派のど真ん中に降り立っての奇襲からの近距離戦闘、ジャック及びアンジェは遠距離から狙撃にて敵の数を確実に減らす遠距離戦闘、私は中距離にて2人のカバーとメルト君の支援に当たる。異論ないな?』


『『「異論なし。」』』


『では出発だ……メルト君、気をつけて。』


「了解、行ってくる。」


ブースターを起動し、上空へと高く飛び上がる。より高出力となったブースターが機体を空へと押し上げ、モニター越しに白く染まった雪原と針葉樹林を遥か下の存在へと変える。


AKMをウェポンハンガーに預けて『エターナル』を引き抜きつつ、機体を操作して革命派の集まっている場所である開けた雪原へと勢い良く舞い降りる。


重量とブースターにより加速した機体が、ソニックブームを纏いつつ地面へと降り立つ。衝撃波が雪を舞い上げる中、エターナルを横薙ぎして周囲の敵アナライザーを一閃して屠る。


大質量かつ鋭い切れ味を持った大剣が敵アナライザーの装甲を意図も簡単に切り裂き、機体を上下に2分割された鉄屑へと変貌させる。横薙ぎした遠心力を利用して先程斬った敵の後ろにいるアナライザーを袈裟斬りにし、さらに刀身を跳ね上げる様にしてその横にいるアナライザーを縦にぶった斬る。


ブースターを小刻みに使い擬似的な高速移動を実現しながら、敵アナライザーのひしめく戦場を縦横無尽に駆け巡る。横薙ぎ、振り下ろし、袈裟斬り、回転斬り、かち上げ等々……ひたすらに敵を斬り裂く事に専念し続ける。中世ヨーロッパの様な戦い方な気もするが、至近距離で効率的に敵を屠るには大剣を振り回す方が適しているのだから仕方ない。


ちゃんとAKも使用しているので大目に見て欲しい……まぁ誰にも文句言われてないんだけど。


正面のアナライザーに大剣を突き立て、パイロットごとコックピットを刺し貫いてから敵アナライザーを蹴っ飛ばす。強引に引っこ抜いた大剣をそのままの勢いで後方のアナライザーに叩きつけ、頭部フレームを重量に任せて叩き斬る。


強引にぶった斬ったせいで大剣にアナライザーが刺さったままとなってしまったが、関係なしにそのまま大剣を振り回す。遠心力によって勢いのついた『アルゲマインB3』が他のアナライザーと衝突し、ゴシャッという音と共に潰れたスクラップへと形を変える。まだ抜けないのでそのまま振り回し続けていると、刺さったアナライザーがどんどん潰れていき原型を留めない程に崩壊していく。


既に中のパイロットは死亡しているだろうが、特に気にせず大剣を振り回す。左にいたUMPを持つ敵アナライザーに上段から振り下ろして叩きつけると同時に刺さっていたアナライザーが完全に砕け散り、直撃を受けたアナライザーと共に無残な鉄屑へと姿を変えた。


暴れすぎたせいか、近くに敵のアナライザーがいなくなってしまった……少し離れた位置から俺を囲む様に、革命派のアナライザー達は銃器を構えている。


囲いの中央で大剣を肩に担ぎ、一呼吸置いてから再び攻撃を再開する。大剣を雪上に滑らせ、突撃の勢いのまま遠心力をフルに使って大剣を横に薙ぐ。恐ろしい速度で大気を切り裂いた大剣が轟音を立て、剣線の内にいるアナライザー達を纏めて一閃する。後方では巻き上げられた雪が機体の後ろへと舞い上がり、巨大な竜の爪の様に形作られて見るもの全てを威圧する。


貧弱な装甲と古めかしい兵器しか持ちえない革命派の彼等に、雪上を駆ける黒き竜の猛威を止める術は無く、蹂躙される以外の道は残されていなかった。











……この大暴れが理由となり、後に『白雪の暴竜』という異名を付けられるという事を、この時のメルトは知る由もなかった。





お読み頂き、ありがとうございますm(_ _)m

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ