物量の猛威
敵のアナライザーが随分と多い。
後からワラワラと湧いてくるその姿は、どこぞの台所の悪魔のようであり、そう言いたくなる程に革命派アナライザーの数は多かった。
1機1機は大した性能ではないのだが、戦争というのは基本的に物量が物を言うのだ。少数精鋭が光るのはあくまで、突破口を開く時か同じく少数精鋭と対峙する時くらいである。
既にデグチャレフの弾薬の殆どを使いきっている……今装填しているクリップで、狙撃に使用している対戦車ライフルの弾薬が尽きてしまう。
既に迎撃態勢に移行している遠征軍は、向かってくる革命派の戦車やアナライザーを迎撃しているとの事だ……戦車はともかく、アナライザーが向かってしまっているのはあまりよろしくないな…。
ヴィンセントやアンジェも奮戦しているが、如何せん数が多い……今まで溜め込んでいた戦力を放出しているに違いない。
デグチャレフで敵アナライザーのコックピットをブチ抜き、斜面を滑り降りて別のアナライザーを物言わぬ鉄屑に変える。まだ戦闘は続行できるとはいえ、長期戦は物量の少ない特殊部隊には厳しいものがある。どうにかして数を減らさなければ……。
木々の間を通り抜けた敵のアナライザーに14.5mm弾をパイロット直送でプレゼントする。機体の顔面からぶっ倒れるように静止したアナライザーを一瞥した後、使用しているデグチャレフを見る。残念な事に今の1発が最後の銃弾であったらしく、コイツを使用するには弾薬を補給する必要が出てきてしまった。
仕方なくデグチャレフをウェポンハンガーに預け、白塗り塗装されたAKMを引っ張りだしてセーフティを解除する。セレクターバーをセミオートに切り替え、敵に肉薄しつつ7.62✕39mm弾を敵のコックピット付近に叩き込む。デグチャレフとはまた違ったストッピングパワーを持つ7.62mm弾が気休め程度に厚くされた装甲を貫通、中にいるパイロットをグッチャグチャのミンチへと変える。
すぐ様次の目標へと照準を移動、パイロットの乗るコックピットへと銃弾を叩き込みつつ肉薄して行く。にしてもなんだが、『アルゲマインB3』の胸部装甲はもう少しどうにかならないのだろうか……最低限7.62mm弾クラスを防げない様じゃ、ただの動く棺桶にしかならんぞ…?
ちなみに戦団のアナライザーはきちんとコックピットを保護出来るように装甲厚と素材を工夫している。7.62mm弾クラスなら難なく弾けるし、対戦車ライフルクラスでもコックピットにだけは到達しないように設計されている。とはいえ前に俺が喰らったクソデカ円錐槍によるランスチャージは貫通するので、そこは注意が必要である。……まぁ普通ランスチャージなんざ正面から受け止めるもんじゃないのだが。
AKMでひたすら敵をスクラップに変えている内に、装填していたマガジン内の弾薬が枯渇する。リロードしようとマガジンを引っこ抜いてダンプポーチに放り込み、新しいマガジンを取り出して装填する。あとはコッキングすれば射撃準備完了という所で、目の前に敵のアナライザーが迫っている事に気付いた。
咄嗟にAKMを左手で保持し、腰からハンドアックスを引き抜いて敵アナライザーの脳天に兜割りをブチかます。メインカメラごと砕かれた敵のアナライザーがよろめいた隙にハンドアックスを引き抜き、コックピットのある胸部装甲へとハンドアックスのフルスイングをお見舞いする。
メキャッという何とも嫌な音を立てて、装甲は破断される。ヘンリクの刀剣による切断の様な優雅さのある攻撃でなく、力任せに思いっきり振るった力押しの一撃。装甲をかち割られたアナライザーからスパークが飛び散り、機体の動きが一層鈍くなる。
ハンドアックスが抜けにくかったので敵のアナライザーを思いっきり蹴り飛ばして引っこ抜き、もう一度思いっきり振りかぶって装甲の亀裂に向かってハンドアックスの一撃をお見舞いする。
コックピットまで完全に破断された機体が沈黙し、雪上に横たわる鉄屑と化す。ハンドアックスを引き抜いて腰に収納し、AKMをコッキングして再び射撃を再開する。まだまだAKMの弾薬は残っているが、この調子だと敵を全て撃破する前に弾薬が尽きる。そうなりゃ残るはハンドガンとミサイル、そしてハンドアックスのみだ……やれない事はないが、なるべく避けたいところである。
『こちらアンジェ!そろそろ弾薬が底を尽きそう!』
『こちらヴィンセント、私も同様だ……一度撤退し、補給を済ませた方が良いかもしれん。』
他の皆も同様に、残弾がかなり少なくなっているようだ……撤退もやむ無しだな…。
『ハッ、流石にこの量はキツいゼ……。』
『やむを得ん……総員撤退、国境線にて補給を行い、その後再び出撃する。現在残っている主武装の弾薬は惜しまず使って戻るぞ。』
『『「了解!」』』
目の前にいる複数の敵アナライザーをロックオンし、両肩部に搭載されたミサイルを一斉掃射する。放たれたミサイルが噴煙をあげて革命派の連中に接近し、着弾と同時に爆発する。直撃を喰らったアナライザーはコックピット諸共粉砕され、運良く直撃を免れたアナライザーも機体の至る箇所に損傷を受け、動きが鈍る。
動きの鈍ったアナライザーに7.62mm弾を叩き込みつつ、ヴィンセント達のいる場所へと後退する。追ってくる奴を片っ端から鉄屑へと変え、なんとか他3人と合流する事に成功した。
『全員揃ったな………撤退開始だ。』
まだ残弾に少しだけ余裕のある俺が殿を務めつつ、エリア020から撤退して行く。道中奮戦している遠征軍の面々が見えたが、なんとか戦線を維持してくれているようだった。
国境線の防壁を越え、テント付近に機体を停める。任務中はあまり気にならなかったが、よく見ると機体が少しばかり悲鳴をあげていた。『デュランダル』でやる様な挙動を量産機でしてしまっている為か、腕部の負荷が思ったよりも大きかった。暫くは接近戦を控えるべきか…?
アナライザーから降り、水筒の水を飲んで喉を潤す。前線整備士が弾薬の補給をしてくれている中、次の作戦を練っていたその時だった。
上空から、プロペラの回る音が響き渡って来たのは。
ギョッとして空を見上げる。敵の戦闘ヘリかと思われたその音は、エリア021方面から発せられていた。
飛来してくるのは、1機の輸送機。
重量のあるアナライザーを輸送する事が可能な戦団製の大型輸送機『WEC-1-B』が、国境線にいる俺達の元へと降り立った。
格納庫から降りて来たのは、まさかの見知った顔であった───モーリスだ。
「よぉメルト!やってるか!?」
大声で挨拶をかますモーリス。「やってるか?」って言ってるけど、いやここ飯屋じゃないのよ…。そんな冷やし中華やってる?みたいなノリで戦場に降り立つなよ…。
「何とかやってるが……モーリスはどうして此処に?」
「へっ、お前宛の荷物を届けに来たんだぜ?」
荷物……?それも俺宛の…?
「ま、見りゃ分かるさ!ほら、こっち来いよ!」
そう言うなり腕を引っ張って輸送機の元へと連れていくモーリス。……力強っ。
しかし、一体何が────
───オイオイ、まじかよ。
「な?最高の荷物だろ?」
目を疑った。
「あぁ……最高だよモーリス。」
輸送機の格納庫に格納されていたのは1機のアナライザー。
黒ベースのフレームにピーコックグリーンのラインが入った力強くも凛々しい風貌。追加装甲により特徴的な顔立ちとなった頭部パーツは、もはや馴染み深い物になっていたいつもの頭部パーツだった。少しばかり改修が加えられているものの、顔立ちはほぼ同様であり、もはや一抹の懐かしさを覚える程である。
そう、帰ってきたのだ。
───俺の愛機、『デュランダル』が……!
「随分と待たせちまったけどよ、ようやくお前に引き渡せる様になってなぁ……そしたらエリア020戦線が割とキツそうって話じゃねぇか……だったら持ってくしかねぇと思ってな!」
巨大榴弾砲『ポンマー』の砲弾を身を呈して"フォートレス"から逸した『デュランダル』は、機体の殆どを破損するという大ダメージを受けていた。その為技術部に預けて修理を依頼し、ついでに改修も行って貰っていたのだ。
そんな不屈の愛機が、今目の前にある。
嬉しくて堪らなかった。他の人の目が無ければ舞い上がって踊り狂っていたかもしれない。
「……またお前と戦えるんだな、相棒。」
タイミング良く『デュランダル』の排気部から空気が音を立てて吐き出される。アナライザーに意思がある筈無いのだが、今だけは俺の言葉に相槌を打ってくれたように感じた。
コイツがいれば、俺は自由に戦える。
例え荒野だろうと雪上だろうと、お構いなしに暴れる事ができる。専用武器の大剣『エターナル』を振り回しつつ、AKぶっ放して敵を屠る事ができる…!
俺という人間が、大切なモノの為に思う存分戦う事ができるのだ…!
「ありがとう、モーリス……お陰で戦える…!」
ここまで機体を運んで来てくれたモーリスに礼を言う。彼のお陰で、俺の愛機はこの戦場に降り立つ事が出来ているのだから。
「ガッハッハッ、そいつは良かったぜ!そんじゃあ早速乗りな!出撃の準備といこうぜ!!」
「あぁ…!」
昇降用ワイヤーを握りしめ、コックピットまで上昇していく。
再び戦場へと舞い戻った愛機に賞賛の念を抱きつつ、俺は『デュランダル』へと乗り込むのだった。
お読み頂き、ありがとうございますm(_ _)m
『デュランダル』、復活です(*´▽`*)




