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朧火の意志  作者: 布都御魂
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轟音狙撃


翌朝、特殊部隊チームのテントにて、いつもよりも少ない4人でのブリーフィングが行われた。普段はヘンリクやヴァネッサが取り仕切るのもあってか、ヴィンセントがブリーフィングを仕切っている事により新鮮さを感じていた。


端末に立体映像装置を有線で接続し、簡易テーブルの上で立体映像を映し出しながらブリーフィングを始める。映し出されたのは国境線を越えた先、エリア020の立体地図だった。


「遠征軍との打ち合わせの結果、我が軍は一部の部隊を残してエリア020へ方向へ前進し、今なお侵攻してきているであろうエリア020の革命派連中を迎撃する事となった。」


あえて前に出て国境線から離れた所で迎え撃つのか……まぁ防衛ライン付近で戦闘するよりは、幾分かやりやすいのだろう。実際どれだけ火力をだしても、周りにあるのは雪と針葉樹だけになるからな。


「そこでだ、私達は彼等の迎撃予定ポイントとは別の場所から狙撃及び遊撃戦を行い、侵攻中の敵戦力を削いでいきたいと考えている。狙撃手はジャックとメルト君、護衛兼遊撃手は私とアンジェで担当する。」


狙撃戦か……なら、持ってきた対戦車ライフル(コイツ)の出番だな。


「狙撃ポイントは奴らの侵攻ポイントから少し離れた針葉樹林地帯だ。針葉樹林は身を隠し易い分、敵戦力の発見も遅れる可能性がある事を留意しろ。」


「敵サンのアナライザーが出てきたらどうするヨ?」


「その場合は私とアンジェが迎撃に当たるが、場合によっては2人にも迎撃に回って貰うかもしれない。」


アナライザー戦は基本的に俺達特殊部隊が担当してたからなぁ……新設されたアナライザー部隊があるとはいえ、彼等には敵アナライザーとの戦闘経験が殆ど無いのだ。操作の習熟度や兵士個人の練度で多少のカバーは効くと思うが、経験は時に最大の武器となり得る重要な要素だ……彼等に無茶をさせる訳にはいかない。


「エリア020北部方面へと前進する遠征軍、東側から浸透し側面部から敵部隊を叩く私達の二方面作戦だ……全員、覚悟はできてるな?」


「「「当然。」」」


「よし……ではこれより、エリア020東部エリアへと出撃する。兵装等の準備を入念に行い、不足がある場合は補給部隊が補える範囲内で補給しろ。」


「「「了解。」」」



……さぁて、準備に取り掛るとしますか。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


準備する、とは言ったものの、別に今の俺に準備する物は余り無い。精々兵装と弾薬を確認しておくだけだ。


点検を終えてからヘルメットをしっかりと被り、昇降用ワイヤーでコックピットまで登る。開かれたコックピットに入ってシートに座り、起動句を発してアナライザーのシステムを立ち上げる。


「コネクション」


【メインシステム─起動─接続開始─接続完了─ユーザー認証──メルト─認証完了──ビジョンシステム─起動─FCS─起動──全システム─オールグリーン】


機械音声が流れ、モニターや計器が一斉に光り始める。空調をつけて暖房をコックピット内に掛け、外の寒い空気から断絶されたこの空間を暖かな安寧の地へと変える。


システム類に異常が無いかを確認してから、アナライザーを動かして防壁の門をくぐり抜ける。既に3人共揃っていて、俺はどうやら最後だったようだ。


「悪い、待たせた。」


『問題ない、時間通りだ。』


返事を返してくれたヴィンセントの乗る『SA-36』は、普段のストーナー63とは違う別の兵器を持っていた。皆大好き、ソ連製汎用機関銃の『PKM』である。


7.62✕54mmR<B>弾を使用する汎用機関銃であり、信頼と実績のAKをベースとした機関部である事でその堅牢さを維持したまま機関銃として運用する事が可能となっている。多少給弾機構が複雑ではあるものの、西側の汎用機関銃と比べて軽量であるという機関銃と中でもかなり優秀な性能を誇っている。


普段とは違う汎用機関銃を持ち出す辺り、継戦能力を重視しているのだろう。アサルトライフルに比べると装填や取り回しに難があるものの、アサルトライフルよりも遥かに多い装弾数と大口径のフルサイズライフル弾を使用できるというメリットによってカバーされている。


移動前には持って居なかった事から察するに、補給部隊から貰ってきたのだろう。補給部隊は色々な武器や物資を取り扱っているらしいので、作戦後に覗いてみるのも良いかもしれない。


『現時刻よりエリア020東部エリアへと移動、敵部隊の側面部より奇襲を仕掛ける形で戦力を削ぐ事が任務となる。念の為確認しておくがジャックとメルト君が狙撃手、私とアンジェが遊撃手だ。それ以外の事前通達はしないから、各自必要に応じてスタンスを切り替えてくれ。』


ヴィンセントがPKMのキャリングハンドルを掴みつつアナライザーを東部方面へと向ける。


『では出発だ……道中、敵部隊と遭遇する可能性がある事を念頭に入れておけ。』


アナライザーのブースターを小規模に噴かせ、降り積もった雪をしっかりと踏みしめて雪道を歩く。幸いにも雪が深すぎる場所は無いようだが、油断していると足を取られて盛大にすっ転ぶ羽目になる……移動中はともかく、敵前ですっ転んだら大事だ。


寒冷地仕様というもさのもあって、アナライザー脚部の底面には展開式のスパイクが取り付けられている。これにより雪上で滑ることを防止し、移動を容易な物にする事ができるのだ。……要はタイヤチェーンみたいなものである。


傾斜がある上り坂であっても、ブースターによって軽々と越えて行く事ができる為か、雪道自体はそこまで苦ではなかった。多少足を取られそうになる時もあったものの、無事に作戦エリアへと到達する事ができた。


小高い山のようになっている針葉樹に囲まれた山が、今回の作戦ポイントであり俺とジャックの狙撃ポイントだ。何発も撃っていればいずれは勘付かれるだろうが、居場所が発覚するのは折り込み済みなので特に問題はない。


道中の護身用に持っていたAKMをウェポンハンガーに預け、代わりに対戦車ライフルである『デグチャレフPTRD1941』を取り出す。少しばかり改造して装弾数を5発まで増やした改造品だが、今回の作戦では猛威を奮ってくれる事だろう。


なんせ戦車をブチ抜く事を想定した14.5✕114mm<B>弾を使用する対戦車ライフルだ……7.62✕39mm<B>弾で貫通できる装甲なんぞ、このライフルの前では紙切れにも等しい。


精々苦しまない様にコックピット事ブチ抜いてやるよ。


バイポッドを展開し、雪上にライフルを置いて照準器を覗き込む。アナライザーの特性上、ライフルそのものにスコープを搭載するメリットは余り無い。よほどの長距離戦ならばともかく、普通の狙撃程度であればコックピットのスコープを使用するだけで十分なのだ。


暫くそのまま待機していると、レーダー上に北側からやってくる赤い光点が映し出される──革命派連中だ。


スコープを覗き込み、敵戦力を把握する。雪道を侵攻してきているのは革命派で主力として使用される寒冷地仕様のアナライザー『アルゲマインB3』だった。


「メルトよりヴィンセント、敵部隊を発見……アナライザー多数である模様。」


『了解、迎撃に出る。……行くぞアンジェ。』


『りょーかい!』


近くで待機していたヴィンセントとアンジェが雪道を滑り降りて行く。2人を見送ってからライフルを構え直し、スコープを覗き込んで狙撃準備を整える。


狙うは先頭を進むアナライザー、そのコックピット付近だ。


照準を合わせ、ライフルの引き金を引く。アサルトライフルとは比べ物にならない程の轟音と共に、銃口から14.5mm弾が敵アナライザーに向かって解き放たれる。


銃弾は木々の隙間を抜け、真っ直ぐに先頭を歩む『アルゲマインB3』の胸部装甲へと吸い込まれる様に着弾する。サイズアップされより凶悪な火力へと変貌した銃弾は装甲をいとも簡単に貫通、コックピットのパイロット諸共アナライザーに風穴を開ける。


コックピットから飛び散ったであろうパイロットの血が辺りに飛び散り、白く積もった雪に赤い斑点を生み出す。ブチ抜かれた衝撃に耐え切れなかったのか敵のアナライザーはフラッと後ろへとよろめき、そのまま血に染まった雪上へと倒れ伏していった。


すぐさま次の標的を狙い、呼吸を整えてから引き金を引く。狙うのは先程撃ったアナライザーの後ろにいる奴だ。コイツが一番付近を警戒してるし、早めに処理しておくに越した事はない。


再び轟音をあげたデグチャレフが銃弾を放ち、木々の間をくぐり抜けて敵アナライザーの左脚部を粉砕する。どうやら吹き降ろす風で少しばかり軌道がズレた様だ。


風向きと風速を確認し、照準を調整し直してから片足を失い地面に倒れ伏したアナライザーにトドメをさす。雪の積もった地面に倒れ伏していたせいか、装甲を貫通した銃弾が積もった雪を高く巻き上げる。


一度ライフルを回収し、移動して狙撃ポイントを変える。同じ所で狙撃し続けるのは自分が此処にいると大声で叫びまくっているのと同義なのだ。2発毎に狙撃ポイントを変え、敵に現在位置を悟られない事が狙撃の基本なのである。ちなみにこれは生身の人間であろうとアナライザーであろうと同じなので、今後狙撃をする予定がある人は覚えておくと良いだろう。


別の狙撃ポイントに到着してから敵部隊の方を見てみると、既にヴィンセントとアンジェが戦闘を開始している様子が見て取れた。PKMで弾幕を張り面で制圧するヴィンセントと短機関銃で至近距離から強襲するアンジェ。どちらかに意識を割けばどちらかに殺られるという、敵からすれば最悪な状態を維持しつつ立ち回る2人を一瞥してから、次の標的に銃口を向ける。


正面はヴィンセント達がやってくれるし、俺は部隊の中央を狙うとしよう。バイポッドで銃身を雪に預け、引き金を引いてコックピット付近を正確に狙撃していく。少し離れた場所からも単発の轟音が響いている事から、ジャックも相棒の『ヴィーゲンリート』で狙撃しているのだろう……負けてられないな。


5発全部撃ちきってから一度針葉樹に身を隠し、ボルトハンドルを引いてからクリップで14.5mm弾を装填し、ボルトを閉鎖してから再び狙撃を再開する。





……さぁ、次の獲物は誰になるかな?






お読み頂き、ありがとうございますm(_ _)m

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