エリア020遠征軍
【メインシステム─起動─接続開始─接続完了─ユーザー認証──メルト─認証完了──ビジョンシステム─起動─FCS─起動──全システム─オールグリーン】
アナライザーのシステムを立ち上げ、機体の発進準備を整える。いつもの『デュランダル』と比べると反応速度や関節部の動きに若干の差が見られるが、ある程度調整はしているので十分動ける筈だ。
とはいえ機体が違い本調子ではない以上、あまり無茶をする訳にはいかない。堅実に、味方の援護をしつつ立ち回るとしよう。
『SA-36』を動かし、格納庫から外に出る。そのまま防壁の外へと出て、戦車中隊や歩兵中隊の輸送車が待つ集合場所へと向かう。
既に殆どの兵器やアナライザーが集まっており、俺もヴィンセント達の待つ端の列に機体を並べた。後ろからアンジェの機体である『ジョワユーズ』が走ってきて、俺の機体の後ろへと並ぶ。ヴィンセントとジャックは既にいるし、特殊部隊メンバーは全員揃ってるな。
暫く待っていると、待機している戦車達の前に1台の輸送車両『42式装甲兵員輸送車』が走ってきて停車する。兵員室から降り立ったのが恐らく、今回の大移動を指揮する指揮官なのだろう。コックピットのスピーカー越しに、指揮官の男性が発する声が聞こえてきた。
『総員傾注!これより、我が軍はエリア020戦線へと向かう!私は本隊、エリア020遠征軍の道中指揮を担当する"マキシモフ"である!諸君等が無事にエリア020戦線まで辿り着ける用、精一杯尽力させてもらう!道中のみの間ではあるが、どうぞ宜しく頼む!』
部隊全体が一斉に敬礼を行う。俺もコックピット越しではあるが、きちんと敬礼をしておく。こういうのは習慣付けが大事だからな……やっておくに越した事はない。
『これより移動を開始する!戦車中隊、歩兵中隊の輸送車、砲兵隊、アナライザー小隊、特殊部隊アナライザー分隊の順で列を形成し、移動を開始せよ!行動開始!!』
戦車や輸送車が動き出し、列を作ってエリア020国境線に向かって移動を開始する。俺達特殊部隊アナライザー分隊は最後尾だ。
陸軍のアナライザー小隊が動き出したのを確認してから、ヴィンセントの乗る『SA-36』が動き始めた。ジャックやアンジェもそれに追従し、俺は最後尾を追従する。この並びは事前に決めておいたもので、分隊長であるヴィンセントが先頭、柔軟に対応できるジャックが2番目、速度で対応できるアンジェが3番目、耐久性と即応力のある俺が4番目という順になっている。
実際ヴィンセントは中距離戦闘を主軸とするバランス型、ジャックは愛銃『ヴィーゲンリート』による中距離狙撃型、アンジェは短機関銃による近距離戦型、俺は機体の都合上ヴィンセントと同じバランス型に分類される。道中の安全を確保するにはこの並びが一番確実なのである。
とはいえ国境線まではエリア021なので、あまり心配する必要性はない。あくまでも万が一の備えである。
先頭を走る戦車中隊に合わせる形で、車両やアナライザーが一斉に移動していく様子は中々に壮観だ。これで全軍で無いのだから、戦団の規模も随分大きくなったものである。
切り立った岩山の間を通り、荒野の地面を踏みしめながら、国境線に向かってどんどん歩みを進めて行く。アナライザーや車両を使用しているのもあってあまり時間は掛からないのだが、普段ブースターを思いっきり噴かせて移動しているのもあって、こうした移動方法はむしろ新鮮であった。
荒れた土で覆われた小さな丘を越え、岩山の間を流れる川に沿うようにエリア020国境線へと近づいて行く。今目の前に見えている岩山の間を抜けて、開けた荒野を進んでいけば国境線である。……もう少しだ。
岩山の付近は小高い丘になっているのもあってか、上空にいる空挺部隊の戦闘ヘリ『HH-7』が少しばかり視認出来る。普段であれば一定の高度を維持して隠密性を向上させた上で飛行しているが、今はエリア021の領空内というのもあってかいつもよりも低い所を飛行しているようだった。
岩山を抜け、荒野の真っ只中にあるほんの少しばかり整地された道を進んで行く。この道を暫く進んでいけば、国境線は目の前だ。
目の前に城壁のような国境線の防壁が見えてくる。壁上には"フォートレス"にも設置されている地対空ミサイル発射器の『メドゥーサ』に加え、『SA-36』の採用に合わせて退役した旧型アナライザーである『Q-65』の上半身部分のみを流用した迎撃装置など、国境線を防衛する為の兵器が所狭しと並んでいた。
よく見ると多くの『Q-65』の手にはアメリカ製の『M60汎用機関銃』や対戦車ミサイルの『FGM-148ジャベリン』が装備されており、対空戦闘だけでなく対地戦闘も想定されているのが見て取れる。正直、エリア022国境線よりも迎撃性能が高い気がする……いや、迎撃性能というよりは破壊力の方が正しいのかもしれない。
国境線の前に車両やアナライザー達が整列し、エリア020遠征軍の到着を国境線警備隊に示す。輸送車からマキシモフ少佐が降車し、警備隊の隊長と握手を交わしているのがアナライザーのカメラ越しに見て取れた。
『総員傾注!ここまでの道中、ご苦労だった!現時刻をもって私の道中指揮を終了とし、各自、各部隊長の指示の元、行動を開始して頂きたい!……以上、解散!!』
戦車中隊やアナライザー小隊、歩兵中隊が各自テントの設営や車両の点検をし始める。……ここからは各隊別々に動くみたいだ。
『私達もテントの設営をしておくとしよう……設営が終わり次第、国境線付近の哨戒を開始する。』
『『「了解。」』』
昇降用ワイヤーで機体から降り、雪の混じった地面へと降り立つ。アナライザーに乗っていた為分からなかったが、国境線付近はかなり気温が低い。吐く息は白くなっており、少し外に出ただけで指先がかじかみ始めている。
早くテントを設営して、アナライザーに戻るとしよう……寒いのは苦手じゃないが、寒くない訳ではないのだから。
簡単に展開できる大型テントを開き、四隅をロープと杭で地面に固定する。接地している部分も杭で固定し、風で吹き飛ばないようにしっかりと杭を打ち付けておく。テント内にストーブと煙突を取り付け、床の部分に防水シートとマットレスを敷き詰める。大きめの部屋と小さな小部屋に別れたこのテントで、男性陣が大部屋、アンジェが小部屋を個室として利用する形で就寝する。アンジェ自身は同室でも大丈夫とは言っていたが、アンジェは特別に個室だぞと言ってみたらあっさり個室に入っていった。……流石に同室はまずいからな…。
見ろよヴィンセントの顔……兄として妹の無防備さに呆れてしまってるぞ……まぁ、頑張れヴィンセント。
テントから出て入り口を閉め、施錠してからアナライザーへと戻る。先程まで付けていた空調が効いたコックピットでホッとしつつ、ヘルメットを被り直してシステムを再度立ち上げる。
計器やシステムに異常が無いかを確認して、機体を動かして防壁を通過し、エリア020へと足を踏み入れる。
『よし、揃ったな。これより国境線付近の哨戒を行う。現時点ではレーダー上に反応がない為、少し離れた針葉樹林まで足を伸ばす予定だ。この辺りはともかく、針葉樹林地帯は革命派の戦力が偵察に来ている可能性も高い……十分に気をつけて哨戒に当たってくれ。』
『「了解。」』
『オッケー!』
機体を動かし、雪の混じった地面を踏みしめながら哨戒を始める。AKMを落とさないようにしっかりと保持し、周辺に敵影が無いか目視とシステムで確認していく。雪によって一面が銀世界となってしまっている為か敵の姿が視認し辛く、木々から雪が落下する音が敵の発した音であると勘違いしそうになる。
ほんと、やり辛いな……。
暫く歩いていると、付近に針葉樹が密集したエリアへと突入し始めた。この針葉樹林地帯に、敵が潜んでいる可能性があるのだ……気を引き締めなければ。
レーダーとカメラをフル活用して、針葉樹林を掻い潜りながら哨戒を進める。途中積雪が深い所に足を取られそうにもなったが、なんとか脱出して事無きを得た……歩き辛いなぁ、ホント。
『……全員止まれ。』
唐突に、先頭を進んでいたヴィンセントが通信で止まるように指示を出す。哨戒中で、敵の偵察兵がいる可能性のある場所での停止指示となれば……敵がいるという可能性が高いという事だ。
AKMのセーフティを解除しつつ、付近の索敵を念入りに行う。ヴィンセントが共有してきた座標を調べて見ると、そびえ立つ太い針葉樹の影に、数機のアナライザーが潜んでいるようだった。……どうやらまだ此方には気付いていないらしい。
白く塗装されたあのアナライザーは恐らく、ドイツで製造された旧型アナライザー『アルゲマインA6』の寒冷地仕様機であり後継機の『アルゲマインB3』だろう。『アルゲマインA6』と比較すると装甲や発動機の性能が改善されており、アナライザーの放つ小口径の弾薬であれば装甲で跳弾させる事ができる様になっているらしい。ぶっちゃけAKMを使用する俺にはあまり大差無いように見えてしまうのだが、大口径の7.62✕39mm<B>弾であっても角度によっては弾かれる可能性もあるのだ……気を付けておくに越した事はない。
『初撃は俺が貰うゼ………食らいナ!!』
ジャックが愛用の14.5mm対物ライフルである『ヴィーゲンリート』を構え、狙いを定めて引き金を引く。盛大なマズルフラッシュと共に轟音が鳴り響き、銃口からサイズアップされた14.5mm弾が解き放たれ、見通しの悪い針葉樹林の中で偵察に勤しんでいた革命派の『アルゲマインB3』を、肩部に取り付けられた追加装甲ごと容赦なく吹き飛ばした。
肩口からコックピット付近をまとめて吹き飛ばされた『アルゲマインB3』は、断面からスパークを散らしながら膝から崩れ落ちる様に機能を停止した。
『ヒュウ〜♪今日も相棒が冴えてるゼ♪』
『とはいえ今の一撃で此方に気付いたようだな……総員、戦闘開始。敵偵察部隊を撃滅せよ。』
『『「了解!」』』
さぁ来い侵略者共、その機体をお前等の棺桶にしてやる…!
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