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朧火の意志  作者: 布都御魂
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寒冷地仕様


「エリア020にいる革命派の連中が動き出したようだ。」


いつものリビングで始まった会議で、そうヘンリクが言い放った。


「彼等は本国を経由して軍備を整えていたが……エリア020の吹雪が収まった今、ようやっと侵攻を開始し始めたのだろう。」


俺達のいるエリア021の隣、ドンパチやってるエリア022とは真逆の方向に、ドイツ革命派が保有するエリア020がある。


エリア020は国境線付近を除いて氷雪地帯となっており、冬場には大雪が積もってしまい陸路はほぼ封鎖されてしまう形になる不便な土地であった。


革命派はこの土地との移動をより容易な物とする為、アメリカに対し宣戦布告をしたのだが……冬場に陸路使えなくなるなら、ゲート経由で良くないか?と最近思っている。まぁ彼等には彼等の考え方がある……どうせ言っても聞かないのだから、アホな事を言っている内に頭にマカロフ弾をプレゼントしてやるとしよう。


共産主義に共産主義国家で生まれた銃弾をプレゼントするのは、随分と皮肉がきいている気もするがまぁいいだろう…。


「それじゃあなんだ、次の戦場は雪原か?」


モーリスが腕を組んだまま呟く。


「残念ながらそうなるな。兵器の塗装や寒冷地仕様化、補給線の構築等…やる事は山積みだ。」


雪国での戦闘は、思った以上にキツい事が多い。まず問題なのはシンプルに寒さだ。寒けりゃ動きが鈍るし、車両だって満足に動かなくなる。おまけに低体温になれば、かのナポレオンのように部隊が壊滅する事になりかねない。


問題は他にもある。雪原において、金属製の物は非常に目立つ。一面が白に染まった雪景色の中に灰色の金属色があれば、それはもう目立つし格好の標的となる。


だからこそ兵器や車両を白く塗装したり、兵士の服を寒冷地仕様の白い服へと変える必要があるのだ。


「既に陸軍の第2、第3戦車中隊と第7歩兵中隊、第3アナライザー小隊を国境線付近に配備している。現在は国境警備隊と共に革命派の散発的な襲撃に対処しているとの事だ。」


たしか第7歩兵中隊は200人で、第3アナライザー小隊は40機だったか…?ひとまずは大丈夫だろうが、本格的な侵攻が始まったら、流石に戦力が足らないな…。


「先んじて配備している彼等に合流する形で、エリア020の革命派連中を迎撃及び排除する。しかしながらエリア022の戦線がある以上、全員でエリア020に向かうという訳にはいかんのだ。」


そりゃそうだな。エリア022での戦争が終わっていない以上、アナライザー運用の主力部隊である俺達が全員行ってしまえば、エリア022からすればクソでかい隙でしかないのだから。


「よって部隊を2つに分ける。ヴィンセント、アンジェ、ジャック、メルト君の4人はエリア020へ、ヴァネッサ、モーリス、トリシャ、そして私は此処に残りエリア022戦線を維持する事とする。」


俺はエリア020か。機体を塗装をとしなければ……と思ったが、そういえば俺の機体ぶっ壊れてるんだった。


「俺のアナライザーまだ修理終わってないんだけど……どうするんだ?」


「あぁ、その事なんだけどよ。」


俺の疑問に返答してくれたのはモーリスだった。修理や改修を担当してくれているのも彼なので、進捗を知っているのだろう。


「メルトの機体、システムが無事復旧できたんだ。つーわけで後は改修部分とシステムの調整をすれば、また『デュランダル』を使えるようになるぜ!」


「おぉ、そりゃ良かった……つっても今はまだ使え無いんだろ?」


さっき改修と調整があるって言ってたしな。


「そうなんだよ……もう少し待ってくれ、その間は他の機体使ってていいからよ。」


「他のっていうと…『SA-36』だな。」


『SA-36』は、今や戦団でも同じみの量産型アナライザーである。バイザーのついた特徴的な頭部に角ばったボディ、そして全体的に機体をモスグリーンで塗装されたサクセス・コーポレーション製の量産アナライザーだ。


俺が使ってきた『デュランダル』やその前身の『SB-1』と比べると性能は劣るが、未だにヴィンセント達が運用している程には、各国のアナライザーと比べると優秀な機体となっている。


とはいえそのまま使うのもアレなので、出撃までに少し改造しておけば、少しはマシな動きが出来る筈だ。


「エリア020戦線には、陸軍の第4〜第14戦車中隊、第1、第2砲兵隊、第4、第5、第6歩兵中隊、第4、第5、第6アナライザー小隊、空軍の第1空挺部隊を派遣する予定だ。君達4人には彼等と協力し、革命派の襲撃を迎え撃って欲しい。」


戦車中隊や砲兵隊はともかく、空軍の空挺部隊も来るのか。前に彼等の降下訓練を見学させてもらったが、迅速かつ静かに目標地点に降下し、訓練相手である陸軍の第36歩兵小隊を全滅させていた。正直相手取るにはかなり厄介な部隊だったのを記憶している…。


「本作戦は普段とは違う気候条件である以上、普段以上に気を配る必要性がある。君達であれば大丈夫だろうが、気をつけて向かって欲しい。」


「「「「了解。」」」」


出撃前に、アナライザーの調整でもしてくるとしよう……寒冷地仕様化も忘れずにな。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


格納庫にて、いつも使っている機体ハンガーとは違うハンガーで今回使用する『SA-36』の改造を行う。


運用する場所が寒冷地であるエリア020なので、改造する『SA-36』は最初から寒冷地仕様で改造する事にした。まず装甲にタザナイトメッシュとタザナイト複合装甲の外部装甲を取り付ける。ほぼ全面がタザナイト複合装甲の『デュランダル』と比べると耐久性は劣るが、重要箇所の補強は出来ているし十分だろう。


次にブースターを弄って出力を少しばかり上昇させておく。あまりやり過ぎると出力に耐え切れなくなりブースターそのものが崩壊してしまうが、少しくらいの出力調整であれば大丈夫なのである……使うの俺だし。


モーリス同様に機体の積載上限を上げておき、両肩部に並列4連装のミサイルポッドを取り付けておく。いつもみたいに機体の性能でゴリ押すような戦術が使えない以上、こうして堅実な戦術を用いるしかない。


メインアームは安定のAKM。コイツさえあれば大抵なんとかなるのでアナライザー運用における大事な相棒となっている。いつものAKMは『デュランダル』と一緒に俺のハンガーに置いてあるので、新しいAKMを用意して白く塗装してつや消しをしておく。これで雪原の中でも視認されにくい筈だ。


とはいえいつもとは違う戦場なので、念の為メインアームをもう一つ持って行くとしよう。


端末で武器庫にアクセスし、今回の作戦に合う兵器を選択する。今回俺が選択したのは、『デグチャレフPTRD1941』というソビエト連邦で開発された単発式の対戦車ライフルである。正直なんでこんな古めかしい対戦車ライフルがリストに存在するのかが不思議なくらいなのだが、この大型化された銃器達は過去に開発された銃器を大型化するという構想で作成されている為、年式の古い製品であっても運用する価値があったり銃そのものが価値のある代物だったりすると、こうして大型化仕様が製造されるのだとか。


そういった背景もあってか、偶にリストに無い銃器が存在する事があり、どうしても必要な時は技術部に頼むしか無いなんて事もわりかしあるのだ。


この対戦車ライフルも操作の簡便さと製造コストの安価さから割と生産されていたそうだ。まぁ見た目シンプルだもんな、コレ。


とはいえこの対戦車ライフルは単発式の対戦車ライフルであり、敵前で呑気に装填するのは非常に不味い。普通に狙い撃ちされて死ぬ羽目になるのが目に見えているので、仕方なく改造する事にした。


格納庫の工房にあるロボットアームと簡易成形装置、そして金属加工装置を用いて機関部の下部に穴を開けて箱型マガジンを溶接、装填用のガイドを箱型マガジンの内部に取り付けスプリングと底面部を取り付けて固定、そして機関部の横にフォアグリップを取り付けておく。


最後に白く塗装した後につや消し加工を施し、改造を終了する。……あぁ、装填用の弾薬クリップも作成しとかないとな。


色々加工してから再び端末に戻り、武器庫にアクセスしてサイドアームを選んでいく。選ぶといっても持って行くのはいつも使ってる『MP-443』なので大した時間は掛からなかった。新しく容易した『MP-443』に白塗り塗装とつや消しをしておいてからハンガーへと送っておく。あとは……近接武器か。


普段のように専用大剣の『エターナル』を使用できない以上、使うのも普通の近接武器になる。まぁこの際新規開拓をするというのもありか………何にしよう。


悩んだ挙句俺が選んだのは、軽量かつ破壊力のあるハンドアックスだ。持ち手部分がラバーでそれ以外が金属製の現代的なハンドアックスで、刃の反対側にはピッケルスパイクが取り付けてある。今まで運用してきたマチェットと比べると一撃の破壊力が高く、また刃の耐久性が高い為少々荒っぽく使用しても壊れる事はないのである。


あとは万能かつ必需品なコンバットナイフだな。普段使わない武器を使う以上、慣れ親しんだナイフはきちんと持っておくべきだろう。


端末の電源を落とし、ハンガーの方へと向き直る。ちなみに近接武器の塗装は基本的にしない。大型の大剣やスレッジハンマーなんかはともかく、小型のハンドアックスやナイフは投擲して短時間放置する可能性が高い。その為寒冷地塗装をしてしまうとかえって見つけ辛くなってしまい、前線で貴重な近接武器を紛失する事になりかねないのである。


ちなみにライフルやハンドガンを投擲したり放棄する事は基本無いので、寒冷地塗装に関しては問題ない。むしろ奇襲や狙撃の際には思いっきり目立ってしまうので、しっかりと塗装しておくのをオススメする。


機体の準備を終え、簡単な私物をサプライボックスに詰め込んで準備を整える。歩兵戦闘用の装備は専属の輸送車があるのでそちらに預けてある……ここに入っているのは自衛用のPP-2000と愛用のマカロフのみだ。


「………よし、準備完了。」


サプライボックスを閉め、部屋に戻ってパイロットスーツに着替える。


そういえばパイロットスーツが新しくなったんだっけな……見た目が少しオシャレになってやがる。


相変わらず白基調なパイロットスーツだが、耐久性が非常に高い上に防刃であり、さらには通気性・伸縮性が抜群の優れものとなっている。とはいえ銃弾は普通に貫通するし、質量のある刃は当然の如く貫通するので、お守り程度に考えておくのが良さそうだ。


思考伝達機能が搭載されたヘルメットを被り、ボタンを押してバイザーを閉めておく。昇降用ワイヤーでコックピットまで移動し、シートに座ってアナライザーを起動する。


準備は終わった……後は出撃するのみだ。





さあて、集合場所へ向かうとしようか。








お読み頂き、ありがとうございますm(_ _)m

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