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朧火の意志  作者: 布都御魂
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第一機動艦隊


エリア021と他のエリアを繋ぐ海。


海中のプランクトンが比較的少なく透き通った青色をしたこの海に、灰色の無機質な軍艦が浮かんでいた。


戦団で新たに発足した海軍に所属する第一機動艦隊の艦艇達が、旗艦である空母『トパーズ・ミネラル』を囲む形で航行を続けていた。


第一機動艦隊には計26隻の艦艇が所属しており、旗艦である『トパーズ・ミネラル』を始め、アノマロ級航空母艦やボリッシュ級駆逐艦、ベークライト級ミサイル駆逐艦といった海上部隊時代の艦艇達に加え、クリムゾン級ミサイル駆逐艦やストーム級ミサイル駆逐艦といった新造艦艇が所属している。戦団における最も規模の大きい艦隊がこの第一機動艦隊であり、異空間における海上戦闘の中核となるのがこの機動艦隊となるのだ。


ちなみに海上部隊時代に所属していたAZL級フリゲートは第一機動艦隊所属ではなく、軍港付近の近海を警備する防衛艦隊への配属となっている。旧式の艦艇だからというのもあるが、単純に艦艇の所属数が多くなる事で艦隊の運用がし難くなるのを防ぎ、艦隊派遣をより容易にするという狙いがあるのだそうだ。


空母『トパーズ・ミネラル』のCICを兼ねた艦橋で艦隊の指揮を取るアンデルセン提督は、まだ見ぬドイツ革命派艦隊との海戦に向けて闘志を募らせていた。


というのも革命派が他国からの供与だけでなく、自国生産の新型艦を建造しているという情報が諜報軍から寄せられていたからであった。新造艦艇の種別は分からないとの事だったが、十中八九空母か駆逐艦のどちらかだと提督は考えていた。例えば今更戦艦を建造したとしても、海上戦における出番は殆ど無いからだ。


アンデルセン提督は戦艦を旧式の艦艇であるとは捉えているが時代遅れの艦艇とは捉えておらず、むしろ海兵隊での運用には最適な艦艇てあると考えていた。


強固な装甲と大型の船体は上陸用の車両を運用するのに最適であり、大口径の主砲は上陸時の支援砲撃に使用する事ができる。装備次第ではミサイルや航空戦力といった多岐にわたる兵器を使用できる点も、まだまだ戦艦が運用の余地があると判断する要素であった。


とはいえ新造してまで運用する必要性があるかどうかは微妙な所ではある為、戦艦不要論が出てくるのも理解は出来るアンデルセン提督であった。


付近の様子を示すレーダーを眺めつつコーヒーを飲んでいると、乗組員の一人がアンデルセンの元へと駆け寄ってくる。


「提督、エリア022海域付近を偵察していた艦載機からの報告です。」


「おう、読んでくれ。」


「はっ。『こちら空母ピカイア所属第3艦載機部隊、エリア022との国境線付近の海域にて、革命派の艦艇と思しき軍艦を発見。編成は正規空母1、駆逐艦8。艦載機を飛行甲板に視認、発艦の予兆あり。』……とのことです。」


正規空母1隻と駆逐艦8隻……こちらの艦隊と比べると小規模だが、歴とした機動艦隊である事には変わりない。


「……エリック、新造艦の試運転はありだと思うか?」


隣に座るトパーズ・ミネラルの艦長"エリック・バルバロイ"に問い掛けるアンデルセン。その顔は非常に悪い笑みを浮かべていた。


「……ありだな。大型の空母に駆逐艦、的にするにはもってこいの代物じゃないか。」


「はっ、ちげぇねぇな。」


相変わらず闇取引みたいな雰囲気で作戦を練る2人に、乗組員は誰も突っ込まない。彼等にとってはこの光景こそが日常であり、むしろ普通に話している方が違和感を抱くのだそうだ。


「アノマロ級の艦載機部隊に通達しろ……敵航空機の迎撃に注力し、敵艦の撃破は二の次にせよ、と。そんでもってクリムゾン級とストーム級には、お前達が主役になると伝えておけ。デカイ的で練習しておけ、とな。」


「はっ!」


伝令に来ていた乗組員が指示を受けて席に戻る。元より戦闘態勢は整えてあるのだ……アンデルセン提督の指揮一つで、この艦隊は一斉に動きだす。


「さぁて、お手並み拝見といこうじゃねぇか。」


ニヤリと笑いながらそう呟くアンデルセンであった。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


空母アノマロの飛行甲板にて、戦団海軍で正式採用されている艦載機『PWS-32』と『PWS-32-OTM』が次々と飛行甲板から発艦して行く。


有人機仕様の『PWS-32』には海軍仕様にアップデートが行われた樹脂人形が搭乗しており、補助システムのサポートを受けつつ人間の兵士と同程度の操縦を行う事ができる様になっている。現状、海軍で最も樹脂人形の所属が多いのが航空科であり、アノマロ級で運用する『PWS-32』の殆どが樹脂人形によって運用されている。


人的資源の損失を可能な限り抑える為に運用されている樹脂人形だが、陸軍と違い機械的な運用に重きを置く海軍の航空科にとっては正に喉から手が出る程欲しい戦力であった事は言うまでもない。とはいえ航空科が樹脂人形を軽視しているのかと言われるとそう言う訳でもなく、整備と調整、運用における損失の削減等かなりのリソースを割いている為、樹脂人形側からの反乱等が起こった事は無いのだ。


航空科のスタンスとしては戦闘時において人間の兵士を守る為の樹脂人形を人間扱いをするのでは無く、あくまでも"機械"であるという関係性を維持する事が、海軍における運用において双方に混乱を与えない状態を維持するポイントであるとしている。


それはつまり戦闘時における運用で樹脂人形の人工知能の思考が混乱しないようにあえて機械として接するというやり方であり、普段関わる分には普通に人間同様の接し方をする事をむしろ推奨するやり方であった。


合理性と冷徹を極めるかの様に見える海軍だが、その実情は何よりも仲間を思いやる者達の集まりであり、その思いやりは樹脂人形達にもしっかりと向けられているのである。


そんな樹脂人形達が操る『PWS-32』の後に続く形で、コックピットの部分が無人化された『PWS-32-OTM』が次々とアノマロ級の飛行甲板から発艦して行く。樹脂人形の『PWS-32』1機と無人機の『PWS-32-OTM』3機で1編隊となり、リーダーとなる『PWS-32』に従う形で無人機は運用されているのである。


ちなみにこの運用の仕方は空軍でも採用されており、編隊同士の事故が少なく、尚且つ航空隊運用の自由度向上に繋がる手法として戦団では積極的に採用されている運用法となっている。


またそんなアノマロ級の周囲に展開し、ミサイルの発射命令を待ち続けているのが、今回の主役である『クリムゾン級ミサイル駆逐艦』と『ストーム級ミサイル駆逐艦』である。


戦団製の新造艦であるこの駆逐艦達は、根本的に運用する兵器の種類が違っている。クリムゾン級は戦団製対艦ミサイルの『M256バイパー』や複合対艦兵装の『ネオボックス』、短魚雷発射管の『DW-3』といった戦団海軍で運用されている通常兵器を多く搭載している。同タイプのベークライト級との差異はミサイルの運用を起立式の『8連装垂直ミサイル発射器』でなく『連装ミサイル発射器』をロシアのスラヴァ級の様に並べ、より多くの『M256バイパー』を運用するという点と、タザナイト複合装甲や最新技術を組み込んで設計されているという点である。


要点を纏めるならば新素材と新設計を盛り込み、ミサイル運用性能と対艦・対空性能を強化した、所謂ベークライト級の"次級"とも言える駆逐艦という事になるのである。


また飛行甲板も広く設けられている為、小型無人ヘリの『ZQ-4』や中型無人対潜ヘリの『DS-1』を複数運用する事も可能となっている。


一方のストーム級は、完全に新設計されたミサイル駆逐艦であり、同様に新設計された大型対艦ミサイルの『M337オルカ』を運用する為の専用ミサイル駆逐艦となっている。


空母や強襲揚陸艦の様に艦橋と煙突を右側に配置し、左側の部分を大型対艦ミサイル発射器の設置場所として割り当てる形で設計されている為、駆逐艦というよりは日本の護衛艦の様な外観となっている。とはいえ護衛艦のように飛行甲板は無く、ミサイル運用の為の設備のみが設置されている為、より攻撃的な外見となってしまっている。


運用する『M337オルカ』もまたかなりの攻撃性をもった対艦ミサイルであり、アメリカ製のハープーン対艦ミサイルの約5倍、脅威の23mという破格の大きさを誇るミサイルは発射後に遥か上空へと飛翔、そのまま対象に向かって勢いよく突き進み、その大火力をもって対象の敵艦を海の藻屑にするという凶悪なミサイルとなっている。


そんな凶悪ミサイルを運用する以上、ミサイルの積載数や兵装の搭載数も限られており、『M337オルカ』は計4発しか搭載できず、その他の兵装は『ネオボックス』とM2重機関銃のみとなっている。


護衛が必要となる以上、運用には艦隊での運用が必須となってしまうが、戦団海軍においてこの艦を単体で使用する事は現状想定されていない為、特に問題視はされていない。


ストーム級の後部甲板に設置されたミサイル発射器が起立し始め、ミサイルの発射に必要な角度で静止する。この発射器は2列で船体の前後に2基ずつ設置されており、発射の際は他のミサイルの誘爆を防ぐ為に隔壁が厚く展開される仕組みとなっている。これによりミサイルの墳炎を防ぎ、艦が誘爆で沈むという最悪の事態を防ぐ事が可能となっている。


発射器先端の蓋が開かれ、ミサイルの発射準備が完了する。


『──オルカ発射まで残り10秒…9…8…7……』


ビーッというブザーと共に、ストーム級の艦内にアナウンスが流れ始める。


『……4…3…2…1……発射!』


次の瞬間、猛烈な光と墳炎、そして轟音が異空間の海を支配する。


通常の対艦ミサイルとは比べものにならない程の轟音と共に、『M337オルカ』が大空へと放たれる。大量の炸薬と濃密な殺意を携えて。




放たれたミサイルは……止まらない。






鋼鉄の殺意は、既に解き放たれたのだから。







お読み頂き、ありがとうございますm(_ _)m

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