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朧火の意志  作者: 布都御魂
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守護の銃弾


"フォートレス"の拠点を取り囲む防壁の上を、長大なライフルを持って歩く。


やる事はただ一つ、この拠点を襲撃しようとする革命派の空挺部隊を殲滅する事。


狙撃ポイントとして決めておいた、防壁のほんの少しで突き出た部分で立ち止まる。使用するライフルの確認をして、キチンと銃弾が撃てるようにチェックを万全にしておけば……準備完了です。


腰のポーチから双眼鏡を取り出し、輸送機が飛来するであろう遥か上空を見つめる。双眼鏡越しですら豆粒に見える程遠い場所に、輸送機らしき影が確認できた。


「よいしょ。」


輸送機がいる方向に、愛用の『OSV-96』を向ける。防衛部隊へ入隊し手に入れた、初めてのお給料で買ったのがこの子だ。大型だけどその分破壊力があって、狙ったものを一撃で粉砕してくれる……そんな部分に、私は虜になった。


対人であろうと、私はこの銃を使う。人体にはオーバーキルでしかない12.7✕108mm弾を使用するこの銃は、強烈な反動の代わりに対象を確実に殺す事ができる。下手な苦しみを与えず、一撃で葬り去るこの銃の性質が、私は好きだった。


私は別に、戦争は好きじゃない。人として当然の思考だとは思うし、戦闘が好きな人はいても戦争が好きな人はいない。いたとしても、それは他の生き方を知らないか──殺す事に楽しさを覚えている人だ。


姉であるヴァネッサ姉さんと一緒に防衛部隊に入った時、レイダーへの対処だけでなく人への対処も学んだ。初めての実戦で異空間で犯罪行為をする武装組織の鎮圧した時、誘拐した人を痛めつけて楽しんでいた人を見て「あぁ、こういう人もいるんだ。」と、「この狂気が、私の大切な人達に向けられたら」と……そう考えているうちに、私の中で覚悟は決まっていた。


私は、私の大切な人達を傷つけようとする人を許さない。でも同時に、傷つけるというあり方しかできない人達を哀れんでいる。


だからこそ、一撃で。


苦しみはなく、されど無残に。


痛みはなく、されど残虐に。


恐怖はなく、されど冷酷に。


必ず、息の根を止める。


大切な人を守る為に、殺す。




───それが私の、あり方だから。




肉眼でも見える距離まで輸送機が接近してきている。少しばかり上空で静止したかと思うと、豆粒程の何かが降りて来ているのが見え始める。あれが革命派の空挺部隊……私の、標的。


スコープを覗き込み、パラシュートを開き始めた空挺部隊の兵士に狙いを定める。風で標的が左右に揺れるが、その程度の障害は今更気にするまでも無い。兵士の頭部に狙いを定め、立射の姿勢で引き金を引く。


轟音と共に銃弾が放たれ、狙い通りに兵士の頭を穿ち吹き飛ばす。人体に使用するには余りにも大口径な12.7✕108mm弾は容赦なく兵士の命を刈り取り、そのまま突き抜けて後続の兵士の横腹を抉った。


後ろで苦悶の表情を浮かべる兵士を狙い、再び引き金を引く。轟音と共に銃弾が放たれ、またも一人の兵士をあの世へと導く。


本来であれば強烈な反動で立射は困難となるけれど、ジャックさんが作ってくれた衝撃吸収パットのお陰で、肩への反動による負担は殆どありません。彼も対物ライフルを使う人ですから、私が衝撃で射撃困難になる事を予測してくれていたのでしょう。


防衛部隊時代から、どうしようか悩んでいた私にとって、正に救いの手でした。


この衝撃吸収パットがあるお陰で、こうして皆さんを守れるのですから。


5発の銃弾を撃ち切り、マガジンを外して新しいマガジンに交換、コッキングして再び狙撃を再開する。そろそろ此方に気づいても良い筈なのだけれど、全然反撃の気配がない。


そうこうしている内に、輸送機が反転して来た道を引き返して行く。恐らく空挺部隊を全て投下しきったのでしょう。……あ、アナライザーが飛び去って行きましたね。あの機体は……姉さんとモーリスさんでしょうか。


お二人に輸送機はお任せして、空挺部隊の迎撃に専念する。一発、また一発と銃弾を撃ち込んで、兵士達をあの世へと送る。


今使っているマガジンの最後の銃弾を使ったと同時に、空にはパラシュートにぶら下がり急降下していく死体のみが残っていた。目の前に広がる広大な荒野に落ちていく兵士達を眺めながらほっと一息つく。


「さてと……帰りましょう♪」


足取り軽く、先程までいた狙撃ポイントを後にする。敵兵を殺めた後であったとしても、私はいつも通りだ。




だって自分の放った銃弾は、この拠点に住む皆を守る為の、守護の銃弾なのだから。





〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


一方その頃、モーリスとヴァネッサはアナライザーに搭乗し、革命派の拠点へと帰投する輸送機を追撃していた。輸送機の横には護衛のヘリが2機程随伴しており、このヘリもまた排除の対象であった。


『モーリス!アンタは護衛のヘリをやんな!アタシはあの輸送機を堕とす!!』


「へいへい……。」


横を飛んでいたヴァネッサのアナライザー『SA-36』が加速して前に出て行く。俺も加速しつつヴァネッサの機体から離れ、手に持った機関銃を構える。


見てのとおり俺もヴァネッサも、まだ専用機を持っていない。現在専用機を持っていないのはヴィンセント、ヴァネッサ、トリシャ、そして俺の4人だ。製造が後回しなのは単純に、この四人が拠点に残る事が多いからである。


まぁヴィンセントは割と前線に出る方だが、他のメンバーを優先させているのもあって後回しになっている。一応副隊長なのだから、いい機体に乗ってもいいと思うんだけどなぁ…。


現在、俺やヴァネッサが乗っている機体は戦団で最もポピュラーなアナライザー『SA-36』であり、樹脂人形部隊もこのアナライザーを使用している。


別に性能が低い訳ではないが、専用機と比べると性能がかなり低い為、俺を含むメンバーはこの機体を大なり小なり改造して運用している。俺の場合積載量を増やし、腕部の出力を強化したモノを使用している感じだ。


この機体の良いところは、癖が無く扱いやすい事だ。だからこそ必要な要素だけ改良する事で使用者の思い通りに性能を変化させる事ができる。


つまりはこうして『M240』を安定して使用できるのも、腕部出力の改造の賜物であると言う事だ。アメリカ製の汎用機関銃である『M240』は7.62✕51mmNATO<B>弾を使用する為、フルオートで射撃するとかなりの反動が襲ってくる代物である。そんな汎用機関銃を両手で安定して使用できるのだから、こうした改造は捨てたものじゃないのだ。


此方に気付いて反転しようとしていた戦闘ヘリに、M240で銃弾の雨を浴びせる。キャリングハンドルを掴みながらコックピットとスタブウィング付近に満遍なく銃弾をばら撒いていく。ベルト給弾式の特徴を利用して背面部に弾薬タンクを装備し、継戦能力を強化してある為、こうして弾薬をばら撒いても弾切れにならずに済むのである。


1機目のヘリを撃墜すると同時に、反対側にいたもう1機が反転してこちらに空対空ミサイルを放ってくる。さすがにこの機体でミサイルの直撃を受ければ只では済まない為、M240で弾幕を張り迎撃する。


弾幕に突っ込んだミサイルが空中で爆発し、空に黒い煙を撒き散らす。念の為少し位置を変え、先程ミサイルが飛んできた方向に向かってM240で弾幕を張る。


幾度か甲高い音が鳴りヘリに着弾した事を悟るが、残念ながらまだヘリは落ちておらず、此方に向かってミサイルを放ち始めていた。


迎撃しようとM240を構えたその時、モニターの残弾数を示す部分の上に<OVERHEAT>の文字が表示される───撃ちすぎたか。


連続で銃弾を放ち続けた銃身が熱を持ち、射撃不可能になってしまっている。しかし眼前にはミサイルが迫ってきており、迎撃しなければ此方が落とされる羽目になる。


「しゃあねぇなぁ…。」


キャリングハンドルのみでM240を保持し、空いた右手で『MAC-10』を引き抜く。改造により100発ドラムマガジンを取り付けられたMAC-10をミサイルに向け、引き金を引いて弾幕を張る。


使用弾薬は9mm弾とはいえ、この銃の弾薬はアナライザー用にサイズアップされた9mm<B>弾である。その為最新型のアナライザーには威力不足でも、装甲の薄いヘリや爆発間近のミサイルにとって、この弾薬の火力は十分すぎるものであった。


案の定弾幕に突っ込んでいったミサイルが爆発し、目標を破壊するという仕事を果たせないまま役目を終える。アナライザーにも有効な攻撃手段を使い切ったヘリが苦し紛れの機銃掃射を開始する。


しかしながらその程度の火力で、アナライザーを落とす事はできず、せいぜい表面に傷をつける程度であった。戦闘ヘリにしては小口径の機銃弾だなと思いつつ、装甲で弾きながら強引に肉薄する。


「──せめてもう少し大口径の機関銃でも持ってくるんだな!」


アナライザーで急速接近し、MAC-10でコックピットを照準に収め、ズタズタに撃ち抜く。操縦者の鮮血が撒き散らされたコックピットからスパークが飛び散り、モーリスが離れると同時に爆発する。


2機のヘリを撃墜し終わり、一息ついて輸送機の方を見ると、ミサイルランチャーを2丁持ちしたヴァネッサが輸送機を見るも無惨な残骸へと変えている所だった。


機体越しではあるが……実に楽しそうである。


ヴァネッサと合流し、念の為付近を哨戒しつつ拠点へと帰還する。


「まったく、美味しいところ持っていきやがって。」


「まぁまぁ良いじゃないか!装備的にも、適材適所だろう?」


「ま、それもそうだな。……んじゃ、帰るか。」


2機のアナライザーが、"フォートレス"へと戻って行く。





広大な荒野に残されたのは、撃墜され物言わぬ鉄屑へと変貌した輸送機とヘリの残骸のみであった。






お読み頂き、ありがとうございますm(_ _)m

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