進捗会議・後半
ほんのり長めです(*´▽`*)
「それじゃ、確保した物資を説明してくよ。」
ヴァネッサが端末で資料を見ながら説明を始める。
「まず食料だが…これに関してはアタシが担当した。"フォートレス"の地下プラントで生産された穀物・野菜・果物に関しては長期間の戦争に耐え得る程の物量とその間住民が贅沢に使用できる程度の物量を確保出来ているそうだ。現在も生産を続けている上に地下プラントによる完全管理栽培なのもあって、気候変動等による不作も心配は要らないそうだよ。」
ぶっちゃけもう、勝ったも同然なのでは?と思ってしまった。そりゃあ兵器の質や物量は戦争において大切な要素ではあるが、何よりも大切なのは兵士達と住民を支える食料だ。食料がない状態で、人は戦えないのだから。
「畜産類に関しては、アメリカにある幾つかの畜産家に戦時供給契約を結んである。そのうちの1つに、いつもお世話になってるマッスル牧場も入ってるよ。」
「──ブフォッ!」
あ、ジャックが珈琲吹いた。
マッスル牧場とは、アメリカのケンタッキー州にある戦団がいつもお世話になっている大規模牧場である。そこで牛や鶏の世話をしているオバちゃん"ミゼット"婦人が家族で牧場を経営しており、ケンタッキー州でも有数の大規模牧場となっている。
広大な土地でのびのびと放牧されている牛や鶏から取れる肉は非常に美味かつ大きいのだが、一番の驚きポイントはその放牧管理を、ミゼット氏が1人で行っている事である。
ミゼット氏は御年70歳で、足腰が弱くなっていてもおかしくない年齢である。にもかかわらず放牧場の端から端までをマラソンランナーのような姿勢で走り抜け、夫や息子達に指示を出しつつ身の丈程もある巻藁を肩に担いで運ぶ超人なのである。
そんな超人オバちゃんのミゼット氏は若い頃から牧場を経営する傍ら身体を鍛え続けており、その当時に通っていたジムで出会ったのが今の旦那さんなのだそうだ。なんだそのムキムキ家族。
ちなみに"フォートレス"にある小規模な牧場の管理者は、ミゼット氏の三男である。"フォートレス"の最強すぎる住民の発端を知った気がするが、これ以上知るのは怖かったのでやめておいた。
だってこの拠点と防壁を建造したのは最強な彼らなのだから。見たことあるか?3mある太い鉄骨を片手で抱えて走る爺さんとか、クッソ重いジャガイモが入った箱を何箱も積み上げて走り抜けるオバちゃんとか、普通いるか…?
………話が逸れたな。
「既に相当量は確保してあるし、継続的な入荷も確約して貰ってる……いつか恩返しをしなくちゃだね…。」
本当に、ありがたい話である。俺達に関わる沢山の人達が、こうして俺達に協力してくれているのだから。
「さてと、アタシの報告はこれで終わりだよ。次は……鉱物担当のアンジェ、頼めるかい?」
「はいはーい!まっかせてー!」
元気よく返事をしたアンジェが、資料を片手に報告を始める。というか鉱物担当だったのな、アンジェ。
「アメリカの鉱物卸売業者に、格安で金属を卸して貰えるようにして貰えたよ!ヴァネッサの名前出したら只でさえ安かった金属が更に安くなったんだけどなんでだろ…?」
……ヴァネッサ、まさかアンタもか?
ヴァネッサを見ると珍しく目を逸しながら、
「若気の至りさね…。」
との事だった。ヘンリクの周りは全員こうなのだろうか…。
「まぁそんな感じで、鉄やアルミといった主要なものから、タングステンみたいな貴重なものまでしっかりと確保しといたよ!…えへん!」
アンジェが両腰に手を当ててドヤる。実際やってる事はかなり重要な事なのでドヤっててもおかしくない仕事である。
「それとー、アザーライトやタザナイトはこれまで通りの産出量になるって、ゴルドーが言ってたよ!」
ゴルドー……エリア021にある採掘場でアザーライトなどの異空間鉱物を採掘している工作員であり、俺の恩人だ。あの時彼が俺を助けてくれなかったら、俺は今ここに居なかった筈だ。
……本当に、感謝してもしきれないな。
「うーん、私からはそれくらいかなー?うん、じゃあ次はジャックね!」
アンジェにバトンタッチされ、ジャックが説明に移る。
「おうヨ。俺が担当したのは布や糸、プラスチックや木材といった所謂素材類だ。こういった素材がなけりゃあ、必要なモンも作れないからナ……アメリカやカナダ、東中国からロシアまで手広く取引きしてきたゼ。」
この短期間で凄い走り回ってんな…アグレッシブにも程がある。まぁ確かに、そういった素材がなければ装備品から日用品までが供給できなくなってしまうからな。
「既に輸送は開始してるから、近日中には山程素材が届くだろうぜ?ホント、資金を出してくれた大統領には頭が上がんねぇな。」
そう、この数々の物資を入手する為に使った資金は、殆どがブラウン大統領による資金援助によるものである。アメリカ軍の所属ではなくとも、アメリカが所有する異空間を守り、そこに住む住民達を護る為であるならば援助は惜しまないと言って下さったのだ。
だからこそ、負けられないのだ。この戦争には俺達だけでなく、アメリカという国そのものが関わっているのだから。
「俺からの報告は以上だゼ。」
「うっし、それじゃあ今度は俺達だな。」
ヴァネッサ達と入れ替わる形で、俺とモーリスが立ち上がる。俺達は技術部門担当であり、兵器やそれに関わる物資を担当している。
「まずは俺からいくぜ。まず陸軍正式採用の項目からだが……主力戦車『NT-12』が280両、装甲戦闘車両『ジャッカル』が340両、装甲ミサイル車両『フラッグ』が80両、装甲兵員輸送車『42式装甲兵員輸送車』が240両って感じだな。今後も増産を継続する予定だが、その辺は新規採用の兵器との兼ね合いだな。」
結構な数になったな……まぁまだ他の国の陸軍と比べると少ない数ではあるのだが…。
「そんでまぁ、処分前の旧式兵器を買い取って近代化した非正式採用の兵器群に関しては……ロシアから買い取った旧式の『T-64』の改修型が120両、アメリカ軍でM777と入れ替わる形で退役する事で余剰在庫となった『M198 155mm榴弾砲』が20基だな。」
『T-64』に関しては後でどう改修されたのか見てみるとしよう…東側の兵器は好きだから少し楽しみだ。
「次に空軍だが……正式採用するのは従来通り『PWS-37』で決定し、現時点で『PWS-37』が300機程配備完了しているぜ。戦闘ヘリに関しては新型機の『EH-5』を120機程製造、配備している状態だ。」
空軍用の滑走路も"フォートレス"の城壁外に設置され、地下の格納庫から搬出して滑走路までタキシングし、その後出撃する形を取るそうだ。
「最後に海軍だが……新たに建造された艦艇は『クリムゾン級ミサイル駆逐艦』6隻、『ストーム級ミサイル駆逐艦』4隻、『NSM級アザーライト式潜水艦』8隻、『CHE級哨戒艦』6隻、『ライド級強襲揚陸艦』1隻だな。他にも増産枠として『アノマロ級航空母艦』のの5番艦『オパビニア』が進水式を終えたところだな。」
…戦団所属の艦艇も随分と増えたな。戦団にようやく潜水艦が導入された上、1隻のみではあるが強襲揚陸艦も導入されている……これまで以上に戦略の幅が広がる事は間違いない筈だ。
「…俺からの報告は以上だぜ。次はメルトだな!」
「オーケー。それじゃあ、俺からの報告だ。」
用意しておいた資料を端末に表示しつつ、立体映像にも新型兵器の3Dモデルを投影する。
「俺からの報告は新規採用となる兵器と、試作段階の兵器についてだ。まず新規採用の兵器だが、前回使用した『ヤタガラス』を試作品から採用版に改良した『ヤタガラスⅡ』の製造を開始した。これに関しては試作品と極端な性能差はないが、軽量化と飛行速度の向上、バッテリー消費の削減、そしてフレームへの流線形状採用が主な変化点だ。他の兵器と比べると武装の取り付けが無いのもあって、製造はかなり短時間で終わる見込みだ。」
こうして会議している今も、『ヤタガラスⅡ』がどんどん製造されている。航空機と役割が被る上に速度的には劣る為生産量はそこまで多くないだろうが、それでも爆撃に用いるには十分な量を確保できる筈だ。
「それからアナライザー用の外部接続式陸上走行器『アクセラー』の製造が始まったぞ。舗装路のような平坦な場所を走る用途のA型と、足場の悪い荒野や砂地を走行する用途で用いるB型の2種類を製造している。」
「ほう……気になるな。」
「私もやりたーーい!」
ヘンリクとアンジェが目を輝かせる。アンジェはともかく、アンタはそれでいいのかヘンリク。
「量産機にも配備する予定だから好きに使ってくれて構わないぞ。特にアンジェは軽量機だからアナライザーでの走破にはうってつけだろうし、ヘンリクも陸上を走行しながらの剣舞がやりやすくなる筈だ。」
傍から見れば怖いけどな、タイヤで爆走しながら両手で剣振り回すアナライザーとか。敵からしたらたまったもんじゃ無いだろうし。
「次に試作兵器に関する報告だが、自爆特攻ドローンの『バンカー』と地雷探知ドローンの『ディテクト』が、試作品として幾つか製造されて改良が始まってる。『バンカー』に関しては上空から対象に超高速接近して先端部の近接信管パイルでぶち抜く使い捨てドローン、『ディテクト』に関しては遠隔操作で高性能地上・地中レーダーを使用して地雷を探知し、地上なら9mm弾発射器、地中なら地雷除去用衝撃手榴弾で地雷を除去するものだ。ちなみに除去不可能の場合はその場所に留まりつつ情報を共有する様に設定する予定だ。」
正直地雷除去用のドローンはかなりの良案だと思う。万が一の人的被害が発生せず、遠隔操作という安心感もあって操作員への負担も軽減できる筈だ。
「地雷除去をドローンでねぇ…メルト、コイツの最終設計を優先してやってくれないかい?上手くいけば、アンタは世界に名を残す程の功績を世に出せるかもしれないよ。」
そう真剣な面持ちで促すヴァネッサ。名を残すのは割とどうでもいいが、地雷で死ぬ人が減るなら…やる価値はあるな。
「分かった、『ディテクト』の調整を最優先で進めるよ。」
「そうかい…ありがとさん。よし、全員、報告は以上だね?トリシャ、アンタは後で軍部会合の議事録を提出しておくれ。」
「はいっ、了解です。」
トリシャはヘンリクの補佐だったからな。あの会合の議事録か……ちょっとばかし気になるとこだ。
「兵器の納品が始まっている以上、近日中に連中は動き出すはずさ。此処からは全員、緊急出撃できるように準備しておきな!」
緊急出撃か…既に俺の安静期間は終わっているから、出撃自体はできる。しかしながら『デュランダル』は損壊が酷いのもあってか修復が難しく、改良の件もあってか未だ出撃できる様な状態ではないのである。
もし必要ならば量産機での出撃も、視野に入れる必要があるだろうな…。
…………………。
西中国が介入した事によって、関係する国が更に増えてしまった。
………近づいている。
───世界大戦の足音が、確実に。
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