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朧火の意志  作者: 布都御魂
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戦端は砲声と共に


2051年9月24日。


エリア022ゲート近郊の革命派本部拠点にて。



志を同じとする多くの兵士達が、革命の象徴として創り上げた革命広場に集まっていた。



司令官の号令で、一斉に持ち場へと散らばる兵士達。



ある者は戦車に乗って。



ある者は戦闘機に乗って。



ある者は艦艇に乗って。



あるいは、自らの足で大地を踏みしめて。



彼らの思いはただ一つ。



革命と繁栄を邪魔するエリア021とそこを保有するアメリカを排除する事。



エリア022とエリア020の通行を容易なものとし、更なる発展を遂げる事。



その為に、彼らは血を流す事を選んだ。



流れる血はもちろん、反共産主義の邪魔者共だ。



彼らは進む。



───自らの一歩が、革命の礎となる事を信じて。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「諜報軍からの緊急通達だ、よく聞きな。」


いつものブリーフィングルームへの緊急招集され、ヴァネッサからの情報を待つ。


「革命派が本拠地を置くゲート付近への潜入に成功した諜報軍の潜入員が、連中の侵攻開始を報告してきた。……奴さんの規模は相当なモノみたいだよ。」


遂に始まったか…。


「既に陸軍・海軍・空軍の出撃準備は完了している。また海軍に関しては空母『トパーズ・ミネラル』率いる機動艦隊が既に軍港を出て沖合を航行中だ。」


ヴィンセントが端末を見つつ報告を告げる。艦隊は他の軍と比べると出撃に時間が掛かるからな……アンデルセン大将の判断は正しいものだ。


「陸軍の戦車部隊及び樹脂人形の乗るアナライザー部隊も既に移動を開始している。空軍も順次、滑走路から航空隊を出撃させているところだ。」


「よし……諸君、いよいよだ。時間の都合上、一言だけ言わせて貰おう──」



「──必ず、生きて帰れ。この命令を厳守せよ。」



「「「「「「「了解!!!」」」」」」」




後に、『第一次エリア022攻防戦』と呼ばれる戦いが、始まった瞬間であった。




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「オラオラ急げ急げ!!連中は待っちゃくんねぇぞ!!!」


国境線付近に展開する戦車部隊の全てに通る程の大声で、戦団陸軍の陸軍長"ハインケル・コルネット"大将は革命派勢力を迎え撃つ手筈を整えていた。


ヘンリクの旧友であり、学生時代共にやんちゃしまくった彼にとって、階級なぞどうでも良いものであった。


本来、大将クラスの将官は戦場に出る事は無い。作戦司令部から指示を出すか、出たとしても後方で指揮を取るのみなのが普通である。にも関わらず、ハインケルは常に前線へ立ち続けてきた。理由は単純明快、戦場に出る為に兵士になったからである。


彼は後方で指示を出しつつ書類仕事をするのがこの世で一番嫌いであり、逆に戦場で命のやり取りをしている時間が最も好きだった。それは死にたがりな訳でも、手柄が欲しいからでもなく、純粋に戦いそのものを楽しむ人間であったからである。


前線で戦友と共に駆け、血で血を洗うような凄惨な戦場を潜り抜け、その果に待つ勝利の余韻を友と共に味わう。その為には自分が前線で部隊を引っ張り、友を庇い、敵を薙ぎ払い、味方を勝利へと導くのが手っ取り早かった。


その身を戦場に置き続けた彼にとって、戦場は家であり仕事場であり、そしていつか迎える死地であった。それが彼の人生であり、生き様なのだから。


「奴らがこの国境に辿り着く前に、奴らをギタギタに薙ぎ倒す!それが我々の使命であり責務である!!自らの護りたいものを思いだせ!!無いやつは隣の友を護っちまえ!!横にいる人形共だって戦友だ!生きてなきゃ友じゃねぇ?そんな考え、肥溜めにでも投げ捨てろ!!隣に並ぶのは戦場に立つ友である!!友を守れ!友を助けろ!友を死なせるな!それが巡り巡ってお前達を生き残らせる"意志"になる!!!!」


自らの乗る『NT-12』の上で、陸軍に在籍する兵士達を奮い立たせるハインケル。これが彼なりの激昂であり、彼なりの愛であった。


「お前ぇら全員俺の友だ!!出身、身分、人種、その他全て関係ねぇ!!俺がお前らを守ってやる!!守られるだけのビビったヒヨコになりたくなきゃあ、死ぬ気で生きて、俺の横に立ってみやがれぇぇぇ!!!」


「「「「「うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」」」」」


陸軍の兵士全てが沸き立ち、声を上げて奮い立つ。守られるだけの立場でなく、前に立つハインケル大将を守れる友でありたいと願う彼らに恐れるものはなかった。


確かな覚悟と、そして"意志"が宿った事を理解したハインケルは静かに古めかしくも雄々しい大型の拳銃を引き抜いた。それは彼がアメリカ軍時代から使い続けてきた号令用の回転拳銃であり、小さく貧弱なホイッスルの代わりに部下へ号令と戦意を与え続けた相棒であった。


アメリカで製造された『コルト・アナコンダ』と呼ばれる.44マグナム弾を使用するリボルバーには、号令用に特注で生産された号令用の轟音空砲弾が収まっている。これを放つ時が、戦いの合図となるのだ。


「さぁいくぞお前ら!!共産だ平等だとぬかす腑抜けたクソッタレ共に、身の程というものを教えてやれ!!!!」


リボルバーの銃口を天に掲げ、遥か遠くにいるであろう革命派の連中を睨みつける。


「総員っ、進撃開始ぃぃい!!!!!!!!」


「「「「「ウラァァァァァァァア!!!!」」」」」


ズダァン!!という轟音と共に、今か今かと待ち構えていた戦車達が一斉に動き出す。『NT-12』の履帯が大地を踏みしめ、乾いた荒野を我が物顔で走り抜けて行く。時速50km/hで荒地を突き進むその姿はまさに、見るもの全てを圧倒する威容を誇っていた。


『──スレッジ1よりハインケル大将に伝達!先行した偵察ドローンが敵戦車群を発見!距離2000m!』


先んじて偵察用のドローンを飛ばしていた兵士から連絡が入る。その連絡を聞いたハインケルはニヤッと笑いつつ行動を開始する。


「俺の戦車砲(コイツ)が先陣を切ってやる!お前ぇらはその後に続けぇ!!」


ハインケルの乗るNT-12が少しばかり速度を上げ、他の戦車より少し先を先行する。


「砲撃準備!目標、敵新型戦車!距離は1500まで近づけろ!」


「はっ!弾種はどうなさいますか!?」


APFSDS(装弾筒付翼安定徹甲弾)だ!奴らの鼻っ面をぶち抜いてやれ!!!」


「了解!弾種、APFSDS!装填完了!何時でもいけます!!」


敵戦車との距離がどんどんと狭まっていく。NT-12の最大砲撃距離はかなり長いが、確実性を期す為にハインケルはあえて距離を近づけていた。豪快な気風とは対象的に、必要な場面で慎重に物事を捉える思考能力こそが、彼を陸軍の大将へと押し上げる要因の一つであった。


「よし、秒読みを始めろっ!!」


「はっ!現在距離1740!…1700、1690、1680…」


少しづつ…少しづつ…といった具合に、砲撃開始距離が近づいていく。そしてついに───



「1650…1640…1630…1620…1610…1500!」




Fire(撃てぇ)!!!!!」




──戦いの火蓋が、切って落とされた。





轟音と共に放たれる一発の砲弾が空へと放たれ、そして圧倒的な運動エネルギーを保持したまま──敵戦車の装甲に喰らいついた。


構造上、爆発反応装甲が搭載出来なかったであろう砲身の付け根に喰らいついた侵徹体が装甲を貫通し、敵戦車の砲塔内にいた戦車兵をミンチにしながら、砲塔後部にまで到達し弾薬庫をぶち抜いて誘爆する。


爆炎が戦車内で荒れ狂い、その衝撃で乗組員達が砲塔諸共宙を舞った。爆炎で火達磨になった操縦士が車体から這い出て来るも、燃え尽きながらその命を落としていった。


「スレッジ1よりハインケル大将に伝達!敵戦車の撃破を確認!砲撃の効果絶大!」


「おうおう見えてんぜぇ!!よぉしお前ら!砲撃開始ぃい!!砲身イカれるまでブチかませぇぇえ!!!」


ハインケルの号令と共に、その左右に展開していた『NT-12』とロシア製の改修型『T-64』が一斉に砲撃を開始する。完全に出鼻を挫かれた先頭の敵戦車が大破し、後続の戦車の進行を妨げてしまっているのを見た戦団兵は勢いを増し、次々と砲弾を足止めされてしまっている敵戦車へと撃ち放っていく。


そんな敵戦車も多少落ち着きを取り戻したのか、大破した仲間の戦車を盾にしつつ反撃を開始する。敵戦車の主砲から放たれた砲弾が自陣へと飛来し、味方の戦車がいる付近へと着弾する。


榴弾だったのか着弾位置が大きく抉れており、土煙が立ち昇る。周囲の味方も負けじと反撃しつつ被弾した味方を庇う立ち回りを見せる。


「被害状況!!報告しろ!!」


「はっ!左翼展開の第7戦車中隊にて小破2!同じく左翼展開の第8戦車中隊にて中破1、小破3!」


「継戦可能な奴以外は下がれ!!第8中隊!中破した奴をカバーしろ!」


爆発反応装甲がもぎ取られ、砲塔の左前が吹き飛ばされたNT-12が同じ中隊のNT-12と入れ替わる形で後退する。タザナイト板がある限り装甲は修復するが、爆発反応装甲は使い捨てだ……無い場所に徹甲弾が直撃すればタザナイト複合装甲でも貫通の恐れがある。頑丈な戦車ではあるが、無敵ではない。再生が間に合わなければ、普通の装甲に過ぎないのだから。


創設されて日が浅い彼等だが、それに反して連携は正確なものだった。兵の半数が樹脂人形なのもあるが、それ以上にハインケルを尊敬する兵士達の結束は非常に高いものであり、それが連携を高める要因の一つとなっていた。


「第19戦車中隊!前に出過ぎだ!!樹脂人形の癖にバトルジャンキーとは良いセンスだがそれ以上は危険だ!各個撃破される前に一度下がれ!!」


<──了解。一度後退シマス。>


忠告を聞いた第19戦車中隊が少しペースを落とし、付近の部隊と足並みを揃える。AIの割に人間臭い動きをする彼等だが、どうやったら戦闘狂じみた性格になるのかは気になる所である。


しかし、今はそんな事を考えている場合ではない。


──今は居るのは戦場の只中なのだから。


「AIに勢いで負けてちゃあ、話になんねぇよなぁ!?砲手!次段砲撃用意!!」


「何時でもいけます!大将!!」


「よぉおし、目標、正面の敵戦車!!一番突出してる奴だ!!身の程を教えてやれ!!」


「了解!──Fire(撃てぇ)!!」




彼等は突き進む。




此処が、この戦場こそが、




彼等が最も輝ける、ステージなのだから。










お読み頂き、ありがとうございますm(_ _)m

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