生産ライン
製造ラインに連なった戦車達が、次々と砲塔を設置され組み上がっていく。世界各国の主力戦車を参考に新素材と新技術をこれでもかと活用した戦団謹製の新型主力戦車が、続々と工場の生産ラインによって組み上がっていた。
度重なる拡張工事により超大型工場と化した戦団直轄軍需工場は、今や戦団で使用する兵器の大半を製造する一大工場と化していた。
そんな大工場で製造されているこの新型主力戦車『NT-12』は、12回の試作改良の末に誕生した新型主力戦車であり、外見はアメリカのM1エイブラムスの車体にイギリスのチャレンジャー2の砲塔、ロシアのT-90のような爆発反応装甲と、各国の主力戦車をいいとこ取りしたような夢の戦車となっている。
主砲は戦団規格の『GC3A 125mm滑空砲』を採用している。主砲としての威力もさることながら東側戦車のように砲身からミサイルを発射する事もでき、尚且つ装填は自動装填装置によって自動化されているという近代化まっしぐらな戦車砲が誕生した。
主砲から放たれるミサイルも進化しており、操縦室兼砲室に搭載された端末を操作する事で、車外のカメラを元にミサイルを自動追尾させる事ができるようになっている。これによりミサイル本体に対するジャミングが一切通用しなくなっており、より高精度にミサイルを直撃させる事ができるようになった。
使用するミサイルはNT-12の製造に合わせて新設計された『ANTM-75 オウル』という対戦車ミサイルで、80mmクラスの装甲を破壊する事のできる極めて高い威力を持つミサイルとなっている。欠点としてはミサイル本体が重い為に積載量に限りがある事くらいだが、ほぼ確実に命中するという強みによってこの欠点はほぼ問題視されないという試験データが出ている事もあり、非常に優秀なミサイルである事が見て取れる。
また砲塔上部には車内から操作・射撃が可能な戦団製RWSシステムを組み込んだM2重機関銃を搭載しており、戦車に接近する歩兵の迎撃や上空から接近する航空機やドローンへの限定的な対空戦闘手段として機能する。またM2重機関銃の左右に戦団製アクティブ防御システムである『スマッシュ』が搭載されている為、敵の対戦車ミサイルを未然に防御する手段も整えられている。
そして装甲にはアナライザーにも使用されるタザナイト複合装甲が使用されており、車内のタザナイト板を消費する事で砲弾やミサイルの貫通速度を再生速度が上回る事による疑似的な無限装甲を実現している。とはいえ車内のタザナイト板を全て消費してしまえば普通の複合装甲でしかない為、タザナイト板の残量を見極めてタザナイト板を補給する事が推奨されている。
これ以上は長くなる為割愛するが、現代の主力戦車を時代遅れにする可能性がある本戦車は、一定のデータと試験期間を経てアメリカ軍へと販売される事が決定している。これにより同盟関係をより強固なものとする狙いがあるとの事だったが、詳しい事はよく分からない。
俺はあくまでも戦団所属の兵士であり、政治家ではないのだ。同盟関係の構築はヘンリクに任せるとしよう。
3Dモデルで『ヤタガラス』の造形と素材を弄りつつ、製造レーンの戦車を眺める。現時点における最大限の自動化と効率化による量産態勢によって、NT-12を含む主力兵器群は大量生産されている。異空間で採掘される金属やタザナイトを活用し製造されたこの戦車達は、製造されてすぐにドイツ革命派との戦争に駆り出される事になるだろう。
搭乗するのは樹脂人形であり、人間の兵士は一部の部隊を除いてこの戦車には搭乗しない。人的資源を可能な限り保護する為の方針にも聞こえるが、実際は歩兵志願の兵士が戦団に多い為に樹脂人形達を戦車兵に回す必要があるというのが実情である。
皆血の気が多いんだよなぁ……。
戦団にはアメリカ本国から志願兵として戦団に加入した人間の兵士が多くを占めている。その為士気そのものが高い兵士が多く練度も高水準なものである。しかしながら前述の通り戦闘面での血の気が多く、身一つで戦う歩兵に志願する兵士が圧倒的に多かった為に、結果的に現在のような状況になってしまっているのである。
側から見ればただの狂戦士集団だが、実際その通りではあるので一概に否定し切れないのが悲しいところだ。……どうしてこうなった。
そんな事を考えているうちに、『ヤタガラス』の最終設計がついに完成した。ドローン本体の素材をより軽量な素材に変更し、フレームをより洗練された形状に再設計する事で積載時の飛行速度向上とバッテリー消費の削減に成功している。
先日使用した『ヤタガラス』は俺が趣味で作成したプロトタイプであり見た目もシンプルなものであったが、再設計により流線状のボディとなった事もあり、非常に良い仕上がりとなっている。
プロトタイプとの区別をつける為に名称を『ヤタガラス』から『ヤタガラスⅡ』に変更し、設計データを技術部のデータベースに送信する。あとは技術部長の承認の元、製造が開始される手筈である。
ちなみに技術部長は整備スタッフのリーダー、ランドルフ氏である。見知った人が上司だとやりやすいね、ホント。
3Dモデルキット端末の電源を切り、工場の中を少しぶらつく。自動化によってロボットアームのみが製造に携わるこの工場は、整形から組み上げに至るまで全てロボットが作業を行っている。その為製造過程での事故は発生し辛くなったし、何より大量生産という大作業を少人数で行う必要性が無くなったのもあり、工場に勤務する従業員からはかなりの好評を貰っている状態だ。
では人間は何をするのかというと、製造後の戦車の最終確認や組み上げ後の細かな調整等である。機械という同じ物を作り続けるモノを使っているとしても、その確認一つ一つが戦場での安心感を兵士達に与える重要な要素となり得るのだ。
なんの点検もされていない兵器なんざ、いつ誤作動するか分かったもんじゃないからな。最後の点検というのは下手すると製造よりも重要な工程となり得るのである。
グリップの効く床を歩いて戦車製造エリアを抜けると、今度は装甲車の製造エリアに突入した。戦団ではアメリカ製装甲戦闘車両の『クーガー装甲車』を製造元の認可の元改修を施し、より高性能な物へと改造したタイプを生産している。その為名称を『クーガー』から『ジャッカル装甲車』に変更し、共同作戦時に混同しないようにしてある。
兵装は戦団製RWS(M2機関銃仕様)で統一してある為、人間の兵士であろうと樹脂人形であろうと車外に身を晒して操作をする必要がなくなっている他、車体の重要区間をタザナイト複合装甲で覆う事により地雷等によって行動不能になる確率が大きく減少している。
細かい事は省くが、優秀な装甲車である事は確かである。
他にも戦団謹製の装甲ミサイル車両である『フラッグ』や日本企業からライセンスを取得して生産している装甲兵員輸送車である『42式装甲兵員輸送車』が、『ジャッカル』と平行して正式採用の装甲車として大量生産されている。
「…っと、そういや午後から会議だった。」
今は11:30……会議は12:00丁度からだし、あまりゆっくり飯食ってる暇はないな…。
少しばかり駆け足で工場の休憩室に入り、大きめの冷凍庫から冷凍規格食Eを取り出して電子レンジにぶち込む。この規格食はメニューが固定されている代わりに栄養バランスと味が保証されたいわゆる完全栄養食であり、冷凍タイプと常温タイプの2種類が存在している。俺が選んだのはブロック型のパン、7角切り野菜、合挽き肉のデミグラスハンバーグ、ベジミンチボール、ポタージュが入った洋食セットだ。
冷凍規格Eは量が控えめで、小食の人や急いで食事する必要がある人が良く食べているのを見掛ける。俺も偶に食べるが、量が物足りなく感じてしまうのでいつもは他の規格食かジャックに作って貰っている。
ちなみに冷凍規格食Eに入ってるこのベジミンチボール、これがマジで美味い……すり潰された多種多様な野菜とひき肉を混ぜ、小さなボール状に整形し焼き上げたもので、ぶっちゃけハンバーグよりも美味い。
好きすぎてコレを作ってるメーカーにベジミンチボールの単品を製造してくれと直談判しに行った程である。「コレの単品を作ってくれ!」って言ったら二つ返事で「いいよ!」って言って貰えたのは流石にびっくりしたが……優しい企業さんで良かった。
尚、この規格食を製造しているのは日本企業だったりする。正確な軽量と適切な栄養バランスで整えられた美味な食品達は、日本国外の同盟国で今まさに注目の的となっている。既に何ヶ国かの軍隊が契約を結んでいるらしい……凄いな。まぁこの美味さなら納得だが。
気持ち急ぎ目に咀嚼しつつしっかりと完食して規格食を食べ終える。非常に美味しかったし、近々新商品が出るそうなので発売が待ち遠しい限りである。
トレーをゴミ箱に捨て、歯磨きを済ませてから休憩室を後にする。後10分で会議が始まるし、急ぐとしよう。
工場から宿舎までそう遠くないが、やはり5分前行動は守っていきたいものである。心にゆとりも持てるからな…。
そんな事を考えつつ、宿舎に向かって走るのだった。
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