表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
朧火の意志  作者: 布都御魂
56/59

リターン・ファイア


PP-2000の上部に搭載したレッドドットサイトを除きこみ、先頭を歩く兵士の鼻っ面目掛けて引き金を引く。


ヘルメットに保護されていない無防備な顔面が9mm弾に穿たれ、グッチャグチャのミンチへと変貌する。威力の低い9mm弾であっても、人間の頭部では拳銃弾を耐える事など不可能に近い。生存できるとすれば、顔の表皮付近を掠った時くらいである。


先頭を歩いていた兵士が崩れ落ちたのを見て後続の兵士達がすぐさま戦闘態勢に移行する。各々がもつ兵器を構え仲間を殺した敵を必死に探し始める。


しかし此処は戦場である荒野のど真ん中。付近に障害物の少ない開けた土地に於いて、煙幕も張らずに同一箇所に留まって索敵を開始するのは自殺行為にも等しい。


もっとも通常の兵士であれば撃たれた仲間を確認して、すぐにある程度の射撃位置を割り出すことができる。銃の撃ち方と多少の規則のみを教えこまれた民兵の弱点が、戦場のど真ん中で露呈した瞬間であった。


横でOTs-14を構えるジャックが、此方に気付きそうであったUMPを持つ兵士の頭部を撃ち抜く。先程まで必死に敵兵を探していた若い兵士は、1発の銃弾によって物言わぬ骸へと姿を変えていった。


そんな仲間を見てようやく此方の潜伏場所を悟ったのか、G3を持っていた兵士が仲間に指示を出しつつ攻撃を開始し始める。7.62✕51mmNATO弾と9mm弾、そして7.5✕54mm弾が、自分たちが身を隠す岩陰の付近を穿っていく。流石にこの状況で身を晒すほど愚かではないが、反撃も厳しいな…。


……此処は、彼に頼るとしよう。


「ヴィンセントよりメルト君、支援を頼みたいのだが………いけるかね?」


『──こちらメルト、了解。機関銃による弾幕支援を開始する。』


耳につけているイヤーマフからメルト君の返答が聞こえてくる。彼の操縦するドローンが機関銃の銃口を増援部隊へとむけ、弾幕射撃を開始する。


『さぁぁぁぁあ熱々のポップコーンだぞぉぉぉ?』


ドローンの下部に搭載されたブローニングᎷ1919XQが火を吹き、.30-60スプリングフィールド弾をこれでもかとばら撒いていく。私のPP-2000が放つ9mm弾とは比べ物にならないフルサイズのライフル弾が、民兵達の装備するヘルメットやボディアーマーを穿ちながらその命を刈り取っていく。運良く防具を貫通せず生き延びた兵士達も、防具で覆われていない大腿部や腕部を撃ち抜かれて悶え苦しんでいた。


機関銃の弾幕とは凄まじいものだと、何度も見てきた私でもその火力に圧倒されてしまう。流石にぼーっと見ているなんて事はないが、多少なりともその凄さに感心するくらいは人間として普通の感情である筈だ。


唐突に、先程まで銃弾をばら撒いていた機関銃がなんの前触れもなく沈黙する。恐らく弾切れだろうが、彼の操るドローンはリロード機構など搭載していないシンプルなものだ。彼による弾幕支援は、これで打ち止めと見るべきだろう。


『メルトよりヴィンセント、ジャック。悪いが弾切れだ、弾幕支援を終了する。』


案の定弾薬が尽きた事を、メルト君が此方へと告げる。今の弾幕だけで此方に対する弾幕が沈黙したのだから、十分な戦果である事は違いない。


「助かったぜメルトぉ、こっからは俺達に任せな!」


「あぁ、十分な支援だったとも……支援、感謝する。」


『……役に立てて良かったよ。』


さて、此処からは私達の仕事だ。彼が生み出したチャンスを無駄にしない為にも、精一杯仕事するとしよう。


PP-2000を構えつつセレクターバーをフルオートに弾き、小刻みに引き金を引いて擬似的なバースト射撃を開始する。9mm弾は反動が小さい分、威力が低いのが欠点だ。だからこそ複数回撃ち込んで確実に対象を殺傷する必要性がある。


先程は対象が比較的静止していたのもありヘッドショットを撃ち込めたが、今は痛みに耐えつつ銃を構えようとする兵士ばかりだ。迂闊に短機関銃で精密射撃をしていては、仕留め切れない可能性が高くなる。


携行性を優先してサプレッサーを搭載していないPP-2000が、短機関銃特有の慎ましくも騒がしい銃声を上げながら銃弾を吐き出していく。必死に起き上がろうとする兵士の顔面3ヶ所に着弾した9mm弾が、いとも簡単にその命を刈り取っていった。


しかしながら疑似バースト射撃を続けていくのは弾薬の消費が激しい……現に使用しているマガジンの弾薬が食いつくされ射撃がストップしてしまった。


「リロード。」


「オーケイ!!」


横にいるジャックに弾切れを伝えつつ岩陰に身を隠す。44発マガジンを抜き取ってダンプポーチに放り込み、代わりに新しいマガジンを取り出してPP-2000に差し込んでコッキングする。弾薬という餌を与えられたPP-2000が息を吹き返し、再び銃口から弾薬を吐き出し始める。


チュン、と1発の銃弾が頬掠め右頬から血が流れ出す。掠めた頬がズキリと痛むが、それを意志で捻じ伏せて銃弾を放ちやがったクソ野郎に5発の9mm弾をお見舞する。撃つならせめて眉間を狙うんだな、間抜け。


右頬を拭いつつ他の兵士達を撃ち抜いていく。3個小隊というのもあって、やたらと数が多い。メルト君の弾幕支援で数は減っているものの、総数は此方よりも遥かに多い……長期戦ではジリ貧になるかもしれん。


そんな事を考えているうちに、後ろの方から甲高い音が響き始める。それも……空からだ。


『こちらメルト、これより無人ドローンによる爆撃支援を開始する。敵部隊後方に着弾させるが、爆風には注意されたし。繰り返す、爆風には注意されたし。』


爆撃……!自身の支援が短時間になる事を見越しての増援要請とは……見せつけてくれるじゃないか。


「頼んだぞメルト君…彼らを盛大にもてなしてやってくれ。」


『了解だ、今夜は揚げ物パーティーといこうじゃないか。』


揚げ物……メルト君の煽り文句もだいぶキレが増してきたようだ。チラッと隣のジャックを見ると目を逸らして口笛を吹き始めたので、十中八九彼が原因だろう。まぁ兵士は口が悪いくらいが丁度いいがね……ジャックは後で説教だが。


後方から飛来したドローン達を見つめつつ、そんな事を考えるのだった。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


5機のドローンで構成された編隊が、甲高い音を立てつつエリア021方面から高速飛行で飛んでくる。


中央のドローンを中核とした5機でワンセットの爆撃編隊が、機体下部に爆弾を懸架した状態で敵部隊の上空へと急行していく。


このドローンは休日に俺がモーリスと作り上げた試作品であり、世界に1セットしかない出来たてホヤホヤのドローンである大型無人戦術ドローン『ヤタガラス』である。


大型の爆弾を懸架し、敵陣に投下する事のみに特化した戦術ドローンであり、戦団の航空機やヘリに搭載される『GEB-25 無誘導爆弾』を懸架できるという破格の積載性能を持つドローンである。


全長180cmのGEB-25を懸架できるというのもあり、ドローン本体はかなり大型になっている。全長1mのボディに8つのローターが搭載され、胴体下部にハードポイントが一つだけ取り付けてあるシンプルにデカいドローンとなっている。


大きさと積載重量も相まってバッテリーの消費が異様に激しく、GEB-25を懸架しての連続稼働時間はたったの1時間という戦術ドローンとしては微妙な性能となってしまっている。


まぁ本来であれば航空機やヘリに搭載するような爆弾を懸架できるのだから、十分な性能である事は確かなのだが……製作者としてはやはり納得がいかないのが正直なところだ。


またこのドローンには爆弾を懸架する以外の機能は搭載されておらず、反撃用の火器に関しては一切搭載されていない。せいぜい編隊飛行を維持するシステムが搭載されている程度である。


つまりは新兵器、というよりは専ら趣味の領域を出ない代物なのだ。


とはいえ今回のような作戦にはもってこいのドローンなので、遠慮なく試運転させて貰うとしよう。データも取れて一石二鳥である。


手元にある端末を操作し、爆弾を投下する角度を調整しつつ最終段階に入る。ドローンの接近に気付いた革命派の兵士達が手に持った銃で迎撃を試みるが、彼らの練度で的の小さいドローンを撃墜するのはどだい無理な話であった。


彼らの必死の対空射撃をあざ笑うかのように、5機のドローンが懸架していた爆弾を投下する。部隊後方に投下するから大丈夫だとは思うが、ヴィンセント達に被害が無いことを祈るばかりである。


「さぁ────ふっとべ。」


ヒュルルルと嫌な音を響かせながらGBE-25が落下していき、地面へと着弾すると共に──爆ぜた。


一面に広がる爆炎と轟音。周囲の土を巻き上げ、着弾地点に盛大なクレーターを生じさせる。ピンポイント爆撃用のGBE-25とはいえ、大火力の爆弾であることには変わりなく一瞬で革命派の兵士達を地獄へと叩き落としていく。


空には砂埃が舞い、よく見ると爆風で飛ばされたと思しき腕や足が空から落下しているのが確認できる。パッと見地獄絵図だが、敵兵なので別に心は痛まない。


戦場で敵兵に心を痛めてたらキリがないからな……弔いの気持ちは全部終わってからで十分だ。


さて……ヴィンセント達は無事だろうか…?ヴィンセント達のところに爆炎は届いてない筈だが……爆風で飛ばされてないといいが。


「メルトよりヴィンセント、ジャック。応答せよ。繰り返す、応答せよ。」


『──こちらヴィンセント。』


ヴィンセントから返答があった。どうやら無事なようだ。


「無事か?」


『無事だとも。……砂埃は凄いがね。』


『全くだゼ……まぁ見てて清々したけどナ。』


どうやら舞い上がった砂埃をモロに受けたようだ。爆炎の被害がないのはホッとしたが、流石に少し申し訳ないな…。


「……すまん、火力が高すぎた。」


『いや、支援としてはこれ以上ない程だとも。感謝するよ、メルト君。』


どうやら怒ってはないようだ…………一安心である。


『私達はこれより残敵の掃討に入る。ドローンによる索敵を頼めるかね?』


「了解だ。生体反応が幾つか残ってる……識別マーカーを送るから、それを元に掃討してくれ。」


ヴィンセント達のヘルメットには、防弾フェイスガードに簡易的なデジタル表示機能が搭載されている。友軍識別とマーカー表示がある程度の簡素なデジタル表示だが、スイッチ一つでON/OFFができる上にバッテリー消費が微弱なので長時間使用し続けられる利点を持っている。


今頃彼らの視界には、赤いマーカーで輪郭を彩られた残存兵が写し出されている筈だ。シンプルが故に便利な代物である。


ヴィンセントとジャックが各々の銃で掃討を開始する。ヴィンセントはAA-12に持ち替えて至近距離でミンチを製造してるし、ジャックはOTs-14を使ってヴィンセントの死角にいる残存兵を処理している。実にスムーズだ。


ものの数分の内に、掃討は終了した。工作部隊を含む敵4個小隊を兵士2人+ドローンで殲滅する大戦果である。


『ヴィンセントよりメルト君、これより拠点へと帰投する。………撤収だ。』


「了解。また悲しいタンデムが拝めるんだな。」


『………言うな、悲しくなる。』


『ツレない事言うなよヴィンセントぉ?諦めて後ろに乗りナ?』


ジャックからグローザを受け取りつつヴィンセントがバイクに跨る。ジャックの後ろにヴィンセントが乗る絵面は何度見てもシュールである。



そんな二人をドローンで追従しつつ、拠点への帰路を辿るのであった。












お読み頂き、ありがとうございますm(_ _)m

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ