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朧火の意志  作者: 布都御魂
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崩落の音


上空で革命派の工作部隊を監視しつつ、ジャック達を待つ事数十分。


俺は念の為ドローンの高度を少し上げ、発見されにくいように上空で待機しながらマップ上の光点と工作部隊の動向に目を光らせていた。しばらく待っているとマップ上の光点が国境線を超え、俺がドローンをホバリングさせている地点にまで差し掛かっていた。出発すると言ってからまだあまり時間が経ってない筈なんだが、どれだけ飛ばして来たんだろうか…。


カメラ映像に一台のバイクが映り始める。マルチカムアライドで迷彩塗装された大型のバイクは、エンジン音を響かせる事なく静かに、それでいて大胆に工作部隊の元へと接近していた。ハーレーにも似た、いかにも爆音を鳴り響かせそうなバイクは、一切のエンジン音とモーター音を鳴らさないまま、着々と距離を詰めて行く。


運転しているのはジャックで、後ろで悲しきタンデムをしているのはヴィンセントのようだ。二人ともタクティカルスーツにボディアーマー、チェストリグにヘルメットと割と重装備である。


ジャックが少し離れた場所にバイクを停め、預けていた銃をヴィンセントから受け取りつつ建設中の地下通路の入り口へと接近する。


『こちらジャック、これより突っ込むゼ。』


「了解、気をつけてな。」


通信を終え、カメラアイでジャック達を注視する。映像から見るに、ジャックが持っている銃はロシア製アサルトライフルの『OᎢs-14グローザ』のようだ。AKシリーズには珍しいブルパップ式を採用したAKで、グリップの後部にマガジンが位置する特徴的な配置を持つライフルであり、閉所での取り回しの良さが優秀な特殊部隊向けのアサルトライフルとなっている。


今回ジャックが所持しているのは、グレネードランチャーを取り外す代わりにフォアグリップ付きのマズルを装着した4A-01と呼ばれるアサルトモデルのようだ。


そしてジャックの後ろを追従するヴィンセントは、アサルトモデルのグローザを持つジャックよりも遥かに攻撃的な代物を所持していた。他の銃火器と比べてシンプルなフレームを持つアメリカ製ショットガンである『AA-12』、そのドラムマガジン仕様である。


本銃の最大限の特徴はショットガンであるにも関わらずフルオート射撃ができる事にある。至近距離においては他の追従を許さない大火力を示す散弾を、あろう事か連続でぶっ放す事ができるのである。


にも関わらず、この銃が生み出す反動は比較的小さいものであり、攻撃的なフルオート仕様の銃の中ではかなり扱いやすい部類となっている。


ヴィンセントはそんな『AA-12』にドラムマガジンを装着し、地下通路内でショットガンパーティーを行うようである。いつもは小口径の弾薬を用いるヴィンセントにしては、少し珍しいチョイスだ。


後ろを追従していたヴィンセントがジャックに合図し、ヴィンセントのみが先行して入り口付近を警備している兵士の1人へと忍び寄る。AA-12を背負い、肩に取り付けた鞘からコンバットナイフを引き抜きつつ背後へと近づき、そのまま口を塞ぎつつ洗練された動作で首をナイフで掻き切る。


そのまま岩陰まで引きずって死体を転がしておき、ジャックと合流しつつ地下通路入り口まで接近するヴィンセント。仲間だからいいものの、敵として相対した時には音もなく狩られる事になると思うとゾッとする。……味方で良かったよ、ホント。


ジャックが手榴弾を取り出し、ヴィンセントに目配せしつつピンを抜く。奥へと転がるように手榴弾を投げ込んだジャックはすぐさま入り口から離れ、岩陰側にいるヴィンセントの元へと合流する。


カツーンという落下時の音が反響するのも束の間、地下通路の入り口から爆音と黒煙が吹き荒れる。地下通路を支えていた土砂止めが壊れたのか、谷底へ落ちるかのように天井部分の土砂が崩れ落ちて行く。


運用爆発に巻き込まれ無かった奴も、結果的に生き埋めとなった事だろう。可哀想な話だが、戦場に地下通路を掘るという事はそのリスクも当然付きまとうのだ。……恨むなら、空への警戒を怠った自分たちを恨むといい。


『こちらジャック、地下通路の爆破及び敵部隊の殲滅を完了しタ。……すんなり終わっちまったナ。』


「こちらメルト、了解。すんなり終わるに越した事はないだろ?」


『ハハッ、違ぇねぇな。さてと、ほんじゃあ帰投す───』


「──っ!まだだジャック!!」


ジャックが帰投しようと踵を返す直前、俺は咄嗟に叫ぶ。俺が確認の為に見たマップ画面には、()()()が接近しているのが映しだされていた。


「ジャック、ヴィンセント!マップ上きら敵の増援を確認した!警戒態勢に移行してくれ!」


『増援か…地下通路の掘削が妨害されるのは予測済みという事だな……。』


『ハッ、だったら崩される前に来いってんだ。部隊潰されてちゃ意味ねぇだろうヨ。』


二人の元を離れドローンでの先行偵察を開始する。光点の数を見るに、部隊は3個小隊程の筈……ジャックとヴィンセントだけで対象仕切れるのか…?


若干の焦りを覚えつつ、高度を維持しながら敵部隊の侵攻方向へとドローンを飛ばす。少し離れた位置に武装した歩兵の姿が徐々に見え始め、明らかに戦闘を想定した装備である事が伺える。


先頭を歩く兵士の持つライフルは恐らく、ドイツ革命派で主力採用されている『G3』。7.62✕51mmNATO弾を使用する、所謂バトルライフルと呼ばれる代物だ。


アサルトライフルにしては年代物ではあるものの、大口径弾薬を運用できるという火力的アドバンテージは馬鹿にできない。とはいえリロードは面倒な代物ではあるし、反動がデカすぎるせいでまともなフルオート射撃ができない等の欠点もある……なんでこの銃採用したんだ?


まぁG3の運用についてはともかく、他の兵士達の装備も確認しておくとしよう。ある程度距離が近くなった為ドローンの高度を上げ、視認性を悪くしつつズームで装備を盗み見る。


さっきのG3を持った兵士の後ろにいる兵士が持っているのは……恐らく『MAS-49』だな。フランス製の半自動小銃で、既に生産も終わってる半ばアンティークと化しているライフルだが……多分軍の倉庫に余ってたのを革命派に供与したんだろうな。


まぁ『MAS-49』は殆ど整備を必要としないほど信頼性が高いのが特徴の半自動小銃だ。軍人だけでなく蜂起した民兵も多い革命派の連中にとって、多少雑に扱っても壊れない頑丈な銃は重宝される事だろう。


そしてそんな時代にそぐわない古めかしい銃を持つ兵士の後ろには、短機関銃の『UMP』を持つ兵士もちらほら確認できる。確か前に前線司令部を強襲した時も、警備中の兵士がこれを持っていたのを覚えている。


お高い『MP5』よりも安価な『UMP』だが、MP5が優秀すぎた為に高価であろうとも採用されたのがMP5であった為に、結局採用を見送られた悲しい経歴が存在する。まぁ短機関銃の癖に精密射撃ができるMP5がおかしいのでUMPは悪くない。


見た感じ、大体の兵士がG3かUMPを持っており、少数の兵士がMAS-49を装備している感じだな。ひとまず、ヴィンセントに報告しておこう。


「メルトよりジャック及びヴィンセント、敵方の装備を確認した。歩兵小隊が3個小隊、運用兵器はG3、UMP、MAS-49の模様。」


『こちらヴィンセント、了解した。この装備の種類……恐らくドイツ革命派の民兵部隊だな。』


民兵部隊。革命に乗じて武装蜂起を起こした民衆が革命派兵士として叩き上げの訓練を受け、民兵として戦力に加わった者達で構成された即席部隊。本来であれば民兵というのは運用するコストと戦果が釣り合わないのが定石であり、民兵を運用するくらいなら練度の高い兵士を送って任務を遂行する方が結果的には作戦の成功率が高くなるものである。


しかしながら民兵というのは即席て容易できる戦力であり、これまで数多くの国々で民兵は戦場に駆り出されている。まぁその大半は死ぬ羽目になるのだが……それも仕方のない事だろう。なんせつい先日までは畑を耕し家族と共に日々を過ごすだけの一般市民だったのだから。


常に訓練と出撃を繰り返してきた軍人に、民兵が太刀打ちできないのも無理はないのである。


とはいえ、民兵であっても脅威は脅威だ。銃を持つ人間は当てられさえすれば簡単に人を殺める事ができるのだから。


『岩陰に身を隠しつつ、確実に仕留めていくとしよう。メルト君、支援を頼めるかね。』


「了解、機関銃で支援する。支援開始のタイミングは任せる。」


『了解した……では作戦開始だ。』


ヴィンセントがAA-12を背中に背負い、腰に下げていた『PP-2000』を取り出す。『PP-2000』はロシア製の短機関銃もといマシンピストルであり、9mm弾を使用するよくある短機関銃なのだが、なんと言ってもこの短機関銃は『軽い』為、メインアームとしてもサイドアームとしても優秀な短機関銃となっている。


日本の自衛隊が運用している『9mm機関拳銃』が2.8kgであるのに対し、PP-2000は1.5kgという圧倒的な軽量さを誇っており、装備重量を圧迫しないという大きな利点を持っている。


ヴィンセントが扱うPP-2000には、レッドドットサイトのみが装備されているようだ。


『さっきは撃てなかったからよぉ……腕がなるナァ?』


ジャックは先程同様、グローザを使用するようだ。まぁ手榴弾で地下通路崩落しちまったしな……今考えると脆すぎる気もするが……多分崩落防止措置の施工前だったのだろう。


ジャック達が増援部隊を睨みつけているうちに、端末を操作して無人機の増援を要請しておく。申請なしで俺が運用できる無人機戦力は限られるが……無いよりはマシの筈だ。


無人ドローンを幾つか要請しておき、改めて機関銃のロックを解除しつつ増援部隊を睨みつける。









───さぁ来い……全員血祭りにあげてやる。















お読み頂き、ありがとうございますm(_ _)m

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