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朧火の意志  作者: 布都御魂
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革命の足元で


エリア022の国境線付近に広がる荒野にて、ドイツ革命派の第8遠征軍工作部隊に所属する兵士達が、重たい装備を身に纏いながら、徒歩で国境線へと近づいていた。


20人程度の小隊と輸送用のロボットを引き連れた彼らは、革命以前のドイツ陸軍にて工作部隊に所属していたメンバーであり、その築き上げた連携力は革命という大義を得ることにより更なる向上を見せていた。


そんな彼らは偉大なる総統閣下の命令により、国境線付近の荒野から続く地下通路を掘り、地上からの侵攻と同時に地下通路から浸透していた兵士達が側面より奇襲を仕掛ける為の土台作りを任されている。


昔と比べ今は便利な掘削道具が幾つもあり、旧式の道具が多い革命派であったとしても、地下通路を掘り進める事自体への負担はかなり軽減されている。


電動の掘削用ドリルやボタン一つで自動的に展開する土砂止め板、土砂を吸引し外へ放出するバキュームホースなど、過去の大戦に存在すれば戦況が一新されるような道具が、今は溢れんばかりに存在する。


時代と共に技術は進歩するものだと、工作部隊の隊長はこの道具を見たときに思ったものであった。


「……此処だな。アルファチーム、作戦を開始するぞ。」


隊長の号令を受け、隊員達がドリルとスコップを駆使して地面を掘り進めていく。荒野に突き出た大岩の影に隠れる形で穴を広げ、下へ下へと掘り進めていく。


部下に指示を出し、自動追従機能がある民製品の小型輸送ロボットから資材を搬出し、地下通路の中へと次々運んで行く。大量に積載できる訳ではないが、シングルベッドくらいの大きさがある荷台に重量限界ギリギリまで積載できるこの輸送ロボットは、革命派だけでなく諸外国でも重宝されているらしい。


──しかしながら兵士の彼らにとっては、諸外国の事など至極如何でもいいようであった。


この任務を終え、エリア022に待機している浸透部隊を国境線の内側に浸透させてしまえば、この国境線を落とすのがより容易になる。と、彼らは上官に説明を受けている。だからこそ必死に、黙々と地下通路を掘り進めていた。


自分たちの仕事が、革命派を勝利の栄光へと導くと確信して。







…………1機のドローンが、上空から目を光らせているとも知らずに。






〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「……見つけた。」


ドローンで索敵をする最中、小型の輸送ロボットと20人程度の小隊が岩陰に隠れながら必死に穴を掘り進めていた。


その遥か上空にドローンをホバリングさせつつ、標準装備のカメラアイのズーム機能を用いて、画像を幾つか端末へと出力していく。後程会議資料として持っていくとしよう。


彼らの狙いは恐らく国境線の秘密裏な通過……それもその後の侵攻作戦を見越してのものの筈…。


俺は別に戦術や戦場指揮に詳しい訳ではないが、素人目に見ても、ありゃあ侵攻を見越してるのは一目瞭然だ。……明らかに穴を掘る方向が国境線だしな。


「……さて、どうするかね。」


このまま見ている、という、訳にもいかないのが現状だが……どうしたものか。俺が出撃して地下通路諸共殲滅するという手も考えたが、『デュランダル』は大破してとてもじゃないが使い物にならないし、そもそも俺は安静命令が出てる。このまま出撃しちまったら確実に罰を受ける羽目になるだろう。


──具体的には夕食のデザートが抜きになる。甘いもの好きの俺にとって、デザート抜きは中世の拷問にも等しい罰になる。


ここは大人しく、トリシャあたりに報告しておく事にしよう。うん、今日の俺は冴えてるな。


無線機のスイッチを押し、リビングルームにいるトリシャに報告をする。


「トリシャ、革命派の工作部隊らしき小隊を発見した。画像送るから確認頼む。」


「──はーい、これですね〜………バッチリ写っちゃってますね。」


「全くだ。……空への警戒が足りてない証拠だな。」


今の時代、空を輸送用のドローンが飛び交う事に関しては誰も違和感を抱かない。陸路での輸送便が限られる異空間では尚更だ。まぁ普通国境線付近を飛ぶ事なんて滅多にないんだが。


『無防備ですねぇ……C4でもお届けします?時限装置付きで。』


普段通りのトーンで恐ろしい事を言うトリシャ。前はそのギャップに驚いていたが、さすがにもう慣れた。


──トリシャは案外過激なのだ。


「送るなら着払いにしよう。もちろん、手数料マシマシでな。」


宛先はドイツ革命派様、だ。下手な懸賞よりも悪質なお荷物をお届けしてやるよ。


「ともかく、どうするんだ?俺は今回出撃できないぞ?」


敵国の工作部隊である以上、さすがに見逃すなんて事にはならないだろうが……下手に動いて勘付かれるのも面倒な場所ではあるんだよなぁ……。


『そうですねぇ、出るなら他の『メルト、俺が出るゼ。』……ジャックさんが出るそうです。』


トリシャの通信に割り込んで、ジャックが発言する。出るといっても、アナライザーで出るのだろうか…?


「出るって……アナライザーでか?」


『いんヤ、生身。』


「は?」


生身って……工作部隊とはいえ、小隊規模だぞ?いくらジャックとはいえ、1人じゃさすがに危険なんじゃ……


「その、大丈夫なのか?」


『あン?大丈夫大丈夫、ヴィンセントもいっからヨ。』


『あぁ、二人いれば十分だ。安心するといい。』


え、ヴィンセントも出るの?


「……移動手段はどうすんだ?」


流石にエンジン音やヘリのローター音は勘付かれると思うのだが……まさか徒歩で行く気か?


『今回はバイクで行くゼ。安心しな、ちゃんと静音性抜群の電気自動二輪だ。コイツで男二人の悲しいタンデムしてくるゼ。』


そういやジャックが休日に弄ってたバイクがあったような……十中八九その事だろう。ハーレー風の大型バイクだった気がするが……ほんとに静かなのかソレ?


『という訳だ、メルト君には引き続き監視を頼みたい。』


「了解だ……いざとなったら機関銃で支援する。」


このドローンには『ブローニングM1919XQ』が一丁程搭載されている。限られた支援ではあるが、場合によってはコイツで機銃掃射を行う事になるだろう。


『それは助かる……では、出発する。』


通信が切れ、モニター上のマップに友軍を示す青い点が表示される。まだ拠点の付近にいるが、少し待てば国境付近まで到達するだろう。光点の移動速度を見るに、かなり飛ばしているようだ。


マップから視線をカメラ映像に戻す。便利な機械があるとはいえ、穴を掘り進めるというのは中々の重労働だ。国境線にある要塞やその他の部分を埋める有刺鉄線と鉄柵を通過して、さらに地上へと出ていくルートを掘り進めるというのは、そう短時間で出来るものではない。


とはいえ掘削自体は機械でガンガン掘り進められる以上、あまり悠長にしている訳にもいかない。ジャック達の到着が待ち遠しいものである。


待ち時間ができたのでポッド内に持ち込んだ小包を開いて、中からパウチ状の飲料を取り出す。退院時にノーザック氏に持たされた『第2種造血飲料』だ。


これは摂取する事で造血に必要な成分を一定量補給し、失った血液を補う手助けをする造血補助ドリンクであり、医療機関でのみ販売されている代物である。


第1種ではかなり強めの成分補給をする事ができるが、その分クソ不味いので入院中にしか出る事はない。第2種は基本退院後の予後安定を目的とするものだ。


……まぁ結局不味いんだけどな。青魚に生卵をかけたような味の後に、猛烈な草の香りが押し寄せてくる不快ドリンクとなっている。薬の香りではなく『草』の香りな辺りが更に不快感を募らせている。まじなんなんだコレ。


正直言って飲みたくはないが、退院後1週間は飲めと念を押されているので飲まざるを得ない。飲ませるならせめて味と匂いどうにかしろよ。


脳内でノーザック氏に文句を垂れつつ、パウチの蓋を開けて不快ドリンクを摂取する。案の定クソ不味い……今度改良の打診しに行くか。


……あ、草の香り来た。……くっせぇ…。


というか口の中が不快感で満たされているのに、よりによって口直しの飲み物を忘れた……最悪だ。






結局なんとも言えないしかめっ面をしつつ、ジャック達の到着を待つ羽目になるのだった。












お読み頂き、ありがとうございますm(_ _)m


評価、感想等いつでもお待ちしております(*´▽`*)

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